アングル:止まらない原油高、OPEC内「100ドル突破も」の声
ロイター / 2022年1月19日 16時37分
[ロンドン 18日 ロイター] - 原油価格は向こう数カ月上昇を続け、1バレル=100ドルを突破する可能性がある――。複数の石油輸出国機構(OPEC)高官がロイターにこうした見方を示した。需要回復と、主要産油国の増産能力が限定的なことなどが理由だ。
原油が直近で100ドル台に乗せたのは2014年。その前の2年間の平均価格は110ドルだった。そして米シェール業界の生産が急増し、主要産油国の生産競争が激しくなった14年を境に始まった長期低落局面が、新型コロナウイルスのパンデミックから世界経済が立ち直るとともに、終幕を迎えようとしているようだ。
ごく最近まで、原油が100ドル台に達する公算は非常に小さいと思われていた。ところが20年のパンデミックに伴う未曽有の規模での需要減少から市場は急速に持ち直しつつある。
需要が戻り、OPECと非加盟産油国でつくる「OPECプラス」の減産縮小は極めて慎重に行われている。このため昨年50%跳ね上がった北海ブレント価格は、足元で1バレル=87ドル近辺で推移。今年に入ってリビアなど幾つかの国で生産が滞り、オミクロン株が需要に及ぼす影響が限られていることも、今年に入って原油高が一層進んだ要因だ。
OPECは原油価格の予想や、公式に目標とする水準を公表していない。OPECプラスの閣僚や当局者も、価格が上がるか下がるか、あるいは好ましい水準についての議論にはこれまで消極的な姿勢を示してきた。
ただロイターが5人のOPEC高官に非公式な形で価格が100ドルをつけるかどうか聞いた結果、4人はその可能性を否定しなかった。残る1人はありそうにないと答えた。取材した高官の何人かは、OPECとOPECプラスの委員会に所属している。
高官の1人は「少なくとも今後2カ月間は、原油価格への圧力が増すだろう。こうした環境で、価格は100ドルに迫るかもしれないが、値動きが安定しないのは間違いない」と述べた。
OPECプラスは20年に合意した世界の全需要の10%に当たる日量1000万バレルの減産規模を、今は徐々に縮小している段階。需要の回復を受け、月間で日量40万バレルの増産を目指しているところだ。しかし多くの産油国は増産余力がなく、余力がある産油国は割り当てられた生産枠を堅持したままなので、実際の増産規模は目標より少ない。
この高官は「OPECプラスは目標水準の生産が難しい。なぜなら過去2年間で必要な投資をしてこなかった上に、オミクロン株の短期的な原油需要に対する影響が小さかったからだ」と語り、これらが原油価格を押し上げている2つの大きな材料だと付け加えた。
国際エネルギー機関(IEA)の統計によると、昨年11月のOPECプラスの生産量は目標を日量65万バレル下回った。
ロシアのプーチン大統領は昨年10月、原油が100ドルに達してもおかしくないと発言。OPECプラスの指導者の1人として異例の具体的な価格予想を示した。
ゴールドマン・サックスは18日、北海ブレントが年内に100ドルを超える態勢にあるとの見方を明らかにした。
<高まる熱気>
OPECプラスの生産能力の制約は、石油生産業界全体が抱える問題の一角にすぎない。業界はコロナ禍による投資不足に苦しめられている。また欧州の石油大手企業は、クリーンエネルギーに軸足を移すよう迫られ、石油開発プロジェクトの投資を減らしつつある。
その結果、大幅な増産余力を持つのはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラクといったごく少数の有力産油国だけになった。イランは日量100万バレル分の増産が可能とはいえ、米国の制裁発動のため少なくとも当面は市場から閉め出されている。
別のOPEC高官は、幾つかの供給面の支障としっかりした需要が原油高を引っ張っていると指摘。「市場の熱気が高まっている」と述べ、100ドル台に乗せるかどうかは分からないものの「供給不足が続けば、数カ月内に新型コロナウイルスが再び需要に打撃を与えない限り、価格は上昇していく」と言い切った。
<需要打撃懸念も>
OPECとOPECプラスは、価格上昇のおかげで20年に急減した石油収入を取り戻すことができる。それでも一部の関係者は、あまりの高値には不安をのぞかせている。
あるOPECプラスの高官は「この水準では需要にリスクをもたらす。個人的な見方では、1バレル=85ドルを長期間上回るのは好ましくない。持続的な需要が伸びるにはいささか高い」と話した。同高官は、ジェット燃料の需要がパンデミック前の水準を下回っている間は、原油が100ドルになることはないと見込んだ。
(Alex Lawler記者)
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