岡田光世 「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 女性議員への「出ていけ」発言を支持する米国民の本音

J-CASTニュース / 2019年7月21日 17時30分

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波紋を呼んだトランプ氏のツイート

2019年7月14日、トランプ大統領はツイッターで、祖先が米国外出身の民主党の女性議員らを激しく攻撃。人種差別非難が巻き起こった。

ここでは、日本ではあまり報道されていない、トランプ氏を支持する米世論を紹介したい。

「マスコミは社会主義を伏せ、人種差別にすり替え」

トランプ大統領のツイートだが、正確に言えば同氏は、「米国から出ていけ」と書いたわけではない。長くなるが、これがことの発端となった主な文面だ。

So interesting to see "Progressive" Democrat Congresswomen, who originally came from countries whose governments are a complete and total catastrophe, the worst, most corrupt and inept anywhere in the world, now loudly and viciously telling the people of the United States, the greatest and most powerful Nation on earth, how our government is to be run. Why don't they go back and help fix the totally broken and crime infested places from which they came. Then come back and show us how it is done.
元々、政府が完全に崩壊し、世界のどこよりも腐敗した無能な国の出身である「革新系」民主党女性議員たちが今や、地球上最も偉大で力強い国家である米国の人々に、いかに政府を運営すべきか声高に悪辣に叫んでいるのは、とても興味深いことだ。出身国に戻り、完全に崩壊し、犯罪のはびこる場所を立て直す手助けをしたらどうか。そして、戻ってきて、われわれにやり方を教えてくれ。

さらに15日にもトランプ氏はツイートし、「われわれは、社会主義の国にも共産主義の国にも絶対にならない」、「IF YOU ARE NOT HAPPY HERE, YOU CAN LEAVE! It is your choice, and your choice alone.(ここで幸せでないなら、出ていってもいい!。それは自分の選択、自分の選択以外にない」と4人を批判した。

米市民であり、国民の手で選ばれた議員らに対する一連の発言は、「人種差別以外の何物でもなく、米大統領としてあるまじき発言だ」と、強い非難を浴びた。

これに対し、ニューヨーク市に住むアンソニー(40代)は、「彼女たちの出身地や人種、宗教が気に入らないんじゃない。問題は、彼女たちの言動だ」と言い切る。「トランプの弾劾を呼びかけ、やることなすこと反対する。国民皆保険や大学無償化を押し付け、社会主義や共産主義にこの国を変えようとしている。マスコミは社会主義ということは伏せ、人種差別問題にすり替えているんだ」

9.11テロを「誰かが何かをした」と表現

さらにアンソニーは、イスラム教徒のイルハン・オマール議員が2001年9月11日に起きた「ニューヨーク同時多発テロ事件」について、「some people did something(誰かが何かをした)」と軽んじた発言をしたと、批判する。

オマール氏はアフリカ東部ソマリア出身。あのテロ事件のためにイスラム教徒が言論や思想の自由を奪われ、それを擁護する団体について同氏が2019年3月に触れた時のことだった。

「ニューヨークポスト」紙は、炎に包まれる世界貿易センターの写真に、「Here's your something(これがあなたの言う何かだ)」と見出しを付け、一面で大きく報じた。

トランプ氏は、「WE WILL NEVER FORGET!(我々は決して忘れない!)」と添え、オマール氏の発言と同テロ事件を組み合わせた画像をツイートした。

これに対して共和党支持者を中心に、「オマール氏はアメリカを愛してなどいない」、「これでアメリカ人と言えるのか」と強い非難の声があがった。

オマール氏と、親がパレスチナ移民のラシダ・トレイブ氏は、イスラエル非難の発言が「反ユダヤ主義的だ」と批判されてきた。これに対し、「私たちはシオニズムに反対しているのであって、ユダヤ人に偏見を持っているわけではない」と反発している。

2019年7月、プエルトリコ出身の親を持つアレクサンドリア・オカシオコルテス氏は、他の女性議員らとメキシコとの国境近くの不法移民収容施設を訪れ、「米国旗のもと、移民たちが劣悪な扱いを受けている」と発言した。オカシオコルテス氏は、不法移民の取り締まりに当たる移民・税関捜査局(ICE)の廃止を訴えている。

ペンシルベニア州ピッツバーグに住むエレナ(30代)は、首を傾げる。

「アメリカは移民の国だから、来たい人は誰でも受け入れろと言うの? 彼女たちが唱えるのは、きれいごとよ。仮に収容施設の環境が劣悪というのなら、それはトランプ政権で始まったことではない。不法移民より、貧困にあえぐ市民を何とかすることが、最優先でしょう」

「移民国家だからこそ、忠誠を誓えない人間はいらない」

トランプ氏は人種差別主義者か。最新の米世論調査によると、57%が「はい」、40%が「いいえ」と答えている。人種差別主義者とみなす人は、共和党支持者では21%、民主党支持者では85%と大きく差が出る。

2019年7月17日、来年の大統領選に向けた支持者集会でトランプ氏が、「オマール氏は悪意ある反ユダヤ主義の発言をしてきた」と攻撃すると、会場から「Send her back.(送り返せ)」と大合唱がわき起こった。

「オマール氏はアメリカン・ドリームを手に入れた。それなのに、その国に対して文句を言い、自分の思うように変えようとするのか。気に入らないなら、帰れ」、「移民国家だからこそ、忠誠を誓えない人間はいらない」というのは、トランプ氏を支持する多くのアメリカ人の本音なのかもしれない。

オマール氏が議員になっても、ヒジャブを身につけていることに抵抗を感じる人も少なくない。彼女の忠誠心は、米国ではなくイスラム社会にある、と捉えるからだ。しかも下院の規定では、議場で頭を覆うことは許されていない。

オカシオコルテス氏は、「政策について反論や議論を避けるために、弱い指導者は国への忠誠を試そうとする」と話している。

オマール氏は堂々と言い切る。

「私が忠誠を誓い宣誓したのは、米国です。私はアメリカ人です。だからこそ、この国の理想である自由と正義のために、闘い続けなければならないのです」

18日には、地元ミネソタ州で支持者の歓迎を受け、新たな力強い「宣誓」をした。

「これからもトランプ大統領の悪夢となり続けます」

(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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