余命宣告の大林宣彦監督「未来を変えてみようよ、な。それが生きているということだ」

J-CASTテレビウォッチ / 2019年12月1日 12時0分

余命宣告を受けた人が残りの人生をどう生きるか。ステージ4の肺がんが見つかった映画監督、大林宣彦さん(81)の生き方から考えた。大林監督が「あと半年か1年」と宣告されたのは3年前だった。それ以来、「日常の風景が違って見える」という。散歩していても、「雑草もアリも、みんなが命に見えて、元気かと思っちゃう。前はアリを踏まないようにしたが、今は命を踏まないようにしています」

先月(2019年10月)完成させた新作映画「海辺の映画館―キネマの玉手箱」は、映画館にいた若者3人がタイムスリップして戦争を追体験するストーリーだ。3人は理不尽な戦争に巻き込まれ死んでいく人たちを助けようともがくが、広島に原爆が投下されてしまった。大林監督は「この映画を世に送り出すことが責務だった。ジジイの繰り言であっても温故知新の実感をフィルムに預けてみようかと作った」と話す。

広島・原爆ドームの前で、突然怒った。「俺は主役でも何でもないんだ」

そんな大林監督を取材したのは、網膜の視野が失われていく難病を患った川﨑敬也カメラマンだ。持病について打ち明けると、大林監督は「今の君にできることがあるはずだ」と助言した。「カメラマンとしては大きな恐怖、たいへんな苦労だと思う。自分らしく、一生懸命に、一緒に生きよう、頑張ってと拍手を送るしか、今はないわけだ」

川﨑カメラマンは映画祭が開かれた広島や、監督の故郷である尾道を回る旅に同行し、原爆ドームの慰霊碑に祈る姿を撮影した。ドームの前で大林監督は周囲の注目が自分に集まることにいらだち、「俺は主役でもなんでもない。うしろの人のじゃまだから早くどこう。映画の恥だぞ」と激しく怒った。川﨑カメラマンは「今回の映画にかける覚悟を見た」「監督はこの瞬間にも覚悟をもって生き続けている。人生の重みを感じました。自分も人と向き合う仕事を続けていきたいと思いました」と語った。

「戦争を楽しく見せちゃうと、反戦映画も好戦映画になってしまう」

大林監督には30年前、黒澤明監督と誓った約束がある。「あの戦争のいかがわしさを直接知った僕たちの世代が、ものを言わないといかんとクロさんも期待していたね」と振り返り、その約束をまだ果たしていないという思いを抱いていた。

「その後を戦争抜きで描いて、うかつな映画人生だった」「あの戦争と同じ気配が、いま世界をおおい始めた」と反省や危機感を大林監督は語る。「戦争を(映画が)楽しく見せちゃうと、反戦映画が好戦映画になってしまう」「観客も傍観者ではいられない」という思いを強く持つ。

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