「やらせ口コミ」業者の正体 事務所にスマホ60台...1件8000円~で虚偽レビュー

J-CASTニュース / 2020年7月16日 11時0分

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A社のオフィスに並ぶ「口コミ」用スマートフォン

「やらせ」口コミでPR――「Googleマイビジネス」「Amazon」「食べログ」を始めとする口コミサイトに、集客を目的に虚偽のレビューを書き込む「口コミ代行業者」の実態が、J-CASTニュースの取材で明らかになった。

福岡県内にあるIT企業(以下A社)は、企業からの依頼を受け、口コミサイトの投稿を水増しするサービスを販売し続けてきた。広告だと隠してPRする手法は「ステルスマーケティング」(ステマ)と呼ばれる。関係者によれば、投稿は実体験に基づかない虚偽の内容だったという。

専門家は、代行業者・依頼者ともに法的責任を問われる可能性を指摘する。

1000件の受注実績?

販売していたのは、ウェブマーケティングやエステ事業を手がけるA社。同社は「BazzCop」というサービス名で、口コミの代行業務を行っている。

BazzCopのウェブサイトでは、「悪いクチコミ対策できていますか?」「良いクチコミを増やしていくクチコミマーケティングで解決!」と喧伝(けんでん)し、受注実績は1000件以上だと誇る。

口コミを増やす具体的な手段は明記していないが、「独自のシステム」と「ライティングのプロ」により「ナチュラル」に増やすという。

運営会社は「BazzCop.LTD」となっているが、連絡先はフリーメールアドレスで、所在地は住宅街だった。登記も確認できない。

複数の関係者の証言や内部資料、公開情報を総合すると、「BazzCop」はA社が実質的に手がけていることが分かった。ほかにも、同じく福岡県内にあるIT企業B社が代理店となり、「口コミ大臣」というサービスで集客を担当している。

関係者によれば、A社の社員は20人ほどで、8年ほど前から口コミ代行業を行っているという。

口コミ1件8000円

問い合わせがあった客向けのページには、病院、飲食店、エステサロン、美容院、整骨院、ホテルなど幅広い業種に対応していると案内する。

対象サイトは、「Googleマイビジネス」「Amazon」「食べログ」「ホットペッパービューティー」「アットコスメ」「じゃらん」「みんなのウェディング」「マンションノート」「エン ライトハウス(旧:カイシャの評判)」「病院なび」「みんなの学校情報」――と多岐にわたる。

インスタグラムのいいね・フォロワー数、ユーチューブの再生回数・チャンネル登録者数も増加できるという。

料金は口コミ1件で8000円から。50件では32万円、200件では80万円。投稿期間は半年~1年に分散させるとする。

Q&A欄には、次の記述がある。

・クチコミ内容は、どのように作成するのですか?
「事前にヒアリングシートを共有していただきます。その内容を元に、文章作成していきます」
・媒体側にバレる心配はありますか
「IPアドレス・デバイス・検索エンジンの分散や、アカウントの信ぴょう性、文章内容も全てにおいて『ナチュラルさ』を徹底しております」

336万円支払った会社も

営業を受けた企業はJ-CASTニュースの取材に、口コミは実体験にもとづかず、ヒアリングシートの要望に沿って書き込むとの説明を受けたという。

関係者によれば、A社のオフィスには60台以上のスマートフォンが用意されており、それぞれで口コミサイト用のアカウントを作成して書き込んでいく。

J-CASTニュースでは、契約書の写しを数十社分入手した。申し込み送付先はいずれもBazzCop.LTDかA社で、振込先はA社または関連会社の社長の口座になっている。

太陽光発電の販売・施工などを手がける企業は19年8月に、口コミサイトの書き込みと「インスタ爆増」プランで計336万円支払う契約を結んだ。

福岡市にあるイタリアンレストランは20年1月に、39万6000円で契約した。確認事項には「投稿の際に使用する写真データ(ご提供いただくもの)は投稿媒体、公式SNSなどで使用しているものと同じものは使えません(中略)スマホ等で撮影をした、お客様目線での写真のご提供をお願い致します」との項目がある。

そのほか、宿泊業者、化粧品販売会社、クリニック、整骨院などと契約していた。

契約企業の後悔

そのうちの2社が重い口を開いた。

ある繊維メーカーは、A社からの営業電話がきっかけでサービスを知り、インターネット通販「楽天市場」で販売するTシャツの口コミを40件依頼した。「しっかり調べればステルスマーケティングだということがわかった。バズマーケティングの一環で、深い認識や精査を行わずにGOを出してしまった」

取材を受け、A社には新規投稿の停止と投稿削除を求めたとする。

約100万円で口コミを購入したブライダル会社の役員は、「私たちにとっての戒め」として、顧問弁護士と相談の上で取材に応じた。

明確な回答は避けたが、結婚式場口コミサイト「みんなのウエディング」「ウエディングパーク」と店舗情報サービス「Googleマイビジネス」への投稿を依頼したとみられる。動機については「一組でも多くのカップル様から口コミを集めたかった。食べログさんなどと一緒で、ランキングの上位に持っていけば注目を集められる」と話す。

口コミを増やす具体的な手段は知らなかったというが、「先方さんがされている内容はこうだろうなっていうのは理解していた」という。「書き込みは実体験にもとづかないということか」と質すと、「イエスかノーで言うとイエス」と答えた。「私たちとしてもどこまで継続するのか考えていた。今回の件を受けて本日付(7月10日)でサービスを停止した」

口コミ代行業者、広告主(依頼者)はいずれも法的責任を問われる可能性がある。消費者庁表示対策課にも勤務経験がある広告規制に詳しい染谷隆明弁護士が解説する。

「代行業者は不正競争防止法違反(誤認惹起行為)となる可能性があります。例えば、広告主と共同被告にして、競合事業者による差止請求や損害賠償請求が考えられます。口コミの商材が健康食品や化粧品などで、効果効能をうたっていれば、薬機法や健康増進法の誇大広告規制等の適用もありえます」

広告主はそのほか、不当表示を禁止する景品表示法に抵触する恐れや、口コミサイト側が損害を立証できれば法的措置も取りうるという。

多くの口コミサイトでは、「投稿するコンテンツは、その場所での実体験に基づいている必要があります」(Googleマイビジネス)、「店舗関係者が関係店舗へ口コミを投稿することを禁止します」(食べログ)などと"やらせ"行為を禁じている。

化粧品口コミサイト「アットコスメ」は「不正行為の事実が確認でき次第、業者やサービスに対し注意勧告及び弊社顧問弁護士と共に然るべき対処をしております」と警告している。

A社は取材にどう答える

代理店のB社に取材を申し込むと、直後に「口コミ大臣」のサイトが消えた。 しばらくして担当者から電話があり、「うちは集客支援のみ行っていて、すでに代理店契約は打ち切っている」と話した。サイトは消し忘れていたという。「僕たちも口コミを増やす方法は知らなかった。●●(A社)さんから『企業秘密』と言われていた」との弁だ。

一方、A社の社長と口コミ事業の責任者Y氏に事実関係を問うと、BazzCop.LTDのフリーメールアドレスから連絡があり「言われのない事柄で驚いております」と回答。

その上で、「今回の御社からの問い合わせについても弁護士と警察に報告しますが・・・明らかにストーキング行為ですね」「本件について警察から連絡があれば捜査に協力してください」と迫った。

同一名義宛てに「『言われのない事柄』『ストーキング行為』は具体的に何を指すのか」などと返信するも、回答はなかった。Y氏の携帯に電話をかけると、「Yです」と受けたために記者である旨を伝えると、「ちょっと違うので失礼させていただきます」と一方的に切られた。

それから数日後、A社の企業公式サイトとBazzCopの一部サイトは閲覧できなくなった。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

口コミをめぐる問題について、引き続き取材を進めていきます。情報をお持ちでしたら、https://secure.j-cast.com/form/post.htmlまでご連絡ください。

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