バイオ技術でCO2削減 ANAが取り組む「持続可能な航空燃料」の可能性
J-CASTニュース / 2020年11月28日 10時30分

CO2削減に本腰入れる
全日本空輸(ANA)が航空機用のバイオ燃料を用い、二酸化炭素(CO2)排出量を既存のジェット燃料に比べ約90%削減する取り組みを始めた。
航空機用のバイオ燃料は「Sustainable Aviation Fuel(SAF、持続可能な航空燃料)」と呼ばれる。ANAは2020年秋、世界有数のSAF製造会社でフィンランドが本社のNESTE(ネステ)と中長期的な戦略的提携の覚書を結んだ。ANAは既に10月からSAFを調達しており、日本発着の定期便を運航する航空会社としては初めてとなる。
シンガポールから調達、日本発の定期便で使用
ANAは11月6日、SAFを混ぜたジェット燃料を米ボーイングの中型旅客機「787-9」に給油する様子を羽田空港で公開した。この燃料を積んだ同機は羽田から米ヒューストンへ向かった。
今回のフライトを受け、ANAは「これからも環境リーディングエアラインとして、CO2削減をはじめとした環境問題の解決に積極的に取り組んでいく」とのコメントを発表した。
ネステとの覚書に基づき、ANAは2023年以降、同社がシンガポールの製油所で商業生産するSAFを調達し、日本発の定期便で使用していくとしている。ANAが調達したSAFの数量は「東京-ロンドン間をボーイング777-300ER型機で運航した場合、片道換算で約60便に相当する」という。
国際的な第三者認証機関「ISCC」のライフサイクル評価によると、日本までの燃料輸送を含め、SAFは既存のジェット燃料を使用した場合と比べ、約90%のCO2削減効果があるとされる。
ネステが製造するSAFは、廃食油・動植物油脂などを原料としている。主要な航空機・エンジンメーカーが定めるジェット燃料の国際規格を満たしており、既存のジェット燃料と同じ安全性も担保されているという。
ANAは2050年までに航空機の運航で発生するCO2排出量を、2005年比で50%削減することを目標に掲げている。
JALも次世代ジェット燃料へ
次世代のジェット燃料は、日本航空(JAL)も導入を進める方針だ。官民ファンドの「海外交通・都市開発事業支援機構」などが出資する米国製の燃料を22年度にも米国発の国際線定期便で導入する予定だ。
ANA、JALともコロナ禍で直近の決算は最終赤字に転落しているが、地球温暖化防止に向けた世界的な取り組みの中で、生き残りに向けた先行投資が必要と判断したようだ。
一度に大量の旅客や物資を長距離輸送する航空機は、長距離トラックやバスと同様、電動化するのが困難だ。そこで、既存のジェットエンジンを活用しながら、次世代の燃料を用いて大幅なCO2削減を達成できるなら、航空業界にとって大いに朗報となる。
ANAもJALも具体的な導入コストを明らかにしていないが、今後の普及とともに、どこまでコスト削減を図ることができるかどうかが最大の焦点になりそうだ。
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