【解説】英国参加でTPPは何がどう変わるのか アメリカ・中国への影響を読み解く

J-CASTニュース / 2021年2月24日 6時0分

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英国のTPP加入申請でどんな影響が?

英国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加入を正式に申請した。発足11か国以外の国の申請第1号で、認められれば、アジア太平洋地域外から初の参加となる。

中国、韓国、タイなども加入に意欲を見せており、英国との交渉は今後のTPP拡大の試金石になる。

加入交渉は長引く可能性も

2021年2月1日、加入を申請した英国のトラス国際貿易相は、TPP議長国である日本の西村康稔経済再生相らとテレビ会議を開いた。

席上で西村氏は「TPPのハイスタンダードでバランスの取れた21世紀型の共通ルールを世界に広めていくことが参加国共通の思いだ」と述べ、英国の申請を歓迎。トラス氏は「世界で最も急成長している地域と結びつきが深まる」と期待を示した。

TPPは、域内の関税撤廃・削減や投資の共通ルール策定などを行う協定。最終的な関税撤廃率は95~100%と高いうえ、知的財産の保護など広い範囲をカバー。例えばデジタル分野でソフトウエアの「ソースコード(設計図)」の開示を求めることを禁止し、巨大ITなど多国籍企業の活動への進出先の政府の介入を防ぐ内容を含む。

日中韓豪や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する自由貿易圏「地域的な包括的経済連携(RCEP)」の関税撤廃率が平均91%にとどまるのに比べ、「TPPは通商・投資ルールとしての水準が高い」(経産省筋)とされる。

TPPはもともと、シンガポールやニュージーランドなど4か国の協定をベースに交渉国を拡大し、日米豪、カナダ、マレーシアなどアジア太平洋地域の12か国で15年10月に合意した。しかし、米トランプ政権が「米国第一」を掲げて17年1月に離脱したため、18年末に11か国の「TPP11」として発効した。

今回の英国の申請を全批准国が認めれば、作業部会が設けられる。英国は他の参加国とも非公式に接触しており、今春にも交渉に入りたい考え。11か国は概ね加入を歓迎する見通しだが、関税やルールなどの交渉は「数か月レベルでは終わらない」(日英通商筋)との見方が強く、長引く可能性もある。

英TPP加入で中国にも影響?

英国が加われば、TPP加盟国の国内総生産(GDP)が世界のGDPに占める比率は現状の13%から16%超に高まる。

規模拡大効果は限定的だが、欧州からの参加は「高いレベルの国際貿易・投資ルールを、アジア太平洋を越えて広げる第一歩」(西村経済再生相)であり、日本としては、トランプ政権時代に世界的に後退した自由貿易の機運を再び盛り上げるきっかけと期待。さらに、米国の復帰に向けた呼び水にしたい考えだ。

英国にとっては、欧州連合(EU)から2020年末に完全に離脱し、EU外と自由に通商交渉できるようになったばかりで、21年1月に発効した日英包括的経済連携協定(EPA)とともに、EU離脱のメリットを国民に分かりやすく示す目玉政策となる。

同時に、中国をにらんだ思惑も指摘される。

そもそも、TPPは米オバマ政権時代、日米を中心に、高い自由化を掲げ、計画経済、統制経済が色濃く残る中国を牽制することも狙って合意した経緯がある。

関税引き下げや、外国企業の活動への介入の規制など高い目標を中国に突き付けることで、中国が受け入れれば中国の経済改革を進められるし、受け入れなければASEANなど他のアジア諸国との関係で中国に対して日米が優位に立てる――という狙いだった。

ところが、その後、状況は一変した。2国間協議による「取引」を重視したトランプ政権がTPPを離脱し、後を継いだバイデン政権も、「自由貿易で国内の雇用が奪われた」という声が国内で根強いことから、TPP復帰には当面、消極的とされる。

「1か国のためにルールを...」外相発言の真意

他方、米国の混乱のスキを突くように、中国が動いた。20年11月、習近平主席がTPPへの参加を「積極的に考える」と表明した。中国がにわかにTPPの厳しい条件を受け入れるのは難しいとみられるが、米国の方針が定まる前に手を挙げ、加入交渉で有利な条件を引き出したいとの思惑との見方が一般的だ。

そのほか、韓国、台湾、タイも参加に関心を示すなど、英国の加入申請を含め、動きがあわただしくなっている。

英国の申請を受け、茂木俊充外相は

「1か国のためにルールを変えることにはならない」

と、くぎを刺したが、英国との交渉より、むしろ中国を意識しての発言とみられる。

通商関係者は「英国との交渉で、厳しい条件をきちんと受け入れてもらい、中国に対して、TPP参加には高いハードルを越える必要があるというメッセージを打ち出したい」と話している。

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