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【7月は応援! 五輪・パラリンピック】ちっとも「レガシー」じゃない!? 新国立競技場はオリンピック終了後、陸上の公式記録は出なくなる

J-CAST会社ウォッチ / 2021年7月8日 11時45分

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コロナ禍で開催される東京五輪・パラリンピックの裏側とは……

東京五輪・パラリンピックが2021年7月23日に開会式を迎える。新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期され、いまなお世界各地で猛威を振るっている中での開催に、さまざまな議論が巻き起こっているが、アスリートの活躍には応援の声を届けたい。そう思っている人は少なくないだろう。

そんなことで、7月はオリンピックとスポーツにまつわる本を紹介しよう。

無観客での一部開催が検討され始めた東京五輪・パラリンピック。しかし、開会式が無観客になってもIOC(国際オリンピック委員会)関係者だけは入場させる方針と聞いて、立腹している人も多いだろう。

本書「オリンピック・マネー」(文藝春秋)は、公表されないIOC委員の厚遇、巨額の放送権料の行方、財政負担を嫌い五輪から逃げ出す都市たち。それでも開催される東京五輪の裏側を描いた出色のルポルタージュだ。

「オリンピック・マネー」(後藤逸郎著)文藝春秋

五つ星ホテルの宿泊料金の差額はプレゼント?

著者の後藤逸郎さんは、元毎日新聞編集委員のジャーナリスト。「週刊エコノミスト」編集次長の時、新国立競技場の建設に端を発する神宮外苑再開発に疑問を持ち、オリンピックの裏側を取材してきた。

新型コロナウイルス流行の収束のめどが立たないにもかかわらず、予定どおりの開催方針を繰り返してきたIOCに違和感を抱いた人も多いだろう。延期や中止について議論する際にも、米テレビ局の放送権尊重が大前提に語られてきた。

IOCはオリンピック運動の担い手であると同時に、世界最大のスポーツ興行主であり、映像コンテンツの供給者であることを、はからずも明らかにした。

IOCを巡る不透明なカネの流れを第2章で縷々取り上げている。その中で読者の関心が高いのは「五輪貴族」と呼ばれるIOC委員の優雅な暮らしぶりだろう。

IOC は開催都市契約の付則で、IOCと国際競技連盟(IF)、各国のオリンピック委員会(NOC)の幹部、いわゆる「IOCファミリー」が宿泊するホテルについて細かく規定している。

ホテルのグレードは「四つ星~五つ星のホテル」で計1600室、33泊の確保を開催都市に義務づけている。東京大会では立候補ファイルで「ホテルオークラ東京」と「ANAインターコンチネンタル東京」、「ザ・プリンス パークタワー東京」、「グランドハイアット東京」の五つ星ホテルの全室をIOCファミリーに提供すると保証した。

しかも、東京五輪招致委員会は立候補段階で、招致決定後に発足する組織委員会がホテル代の差額を負担すると約束した。IOCはホテル代の上限を一泊400ドルと定めているため、五つ星ホテルの料金を賄えないからだという。

IOCは委員へのプレゼント費用について、「一人200ドル以上の金品便益を供与してはいけない」と定めているが、ホテル代にはスイート料金も含まれており、「組織委員会が負担する差額は一人一日2万円ではきかない」として、疑問を呈している。

NBCの発言力が強いワケ

第3章で高騰する放送権料のからくりを明らかにしている。IOCの総収入は4年間で57億ドル(2013~2016年、6156億円)と、年間平均1500億円をくだらない。収入で最も多いのはテレビ放送権料で全体の73%を占める。

放送権料の推移を詳しく紹介している。1960年冬のスコーバレー大会から放送権料は支払われたが、全世界でたった5万ドルだった。夏のローマ大会で120万ドル。1964年東京大会では160万ドルだった。

IOCは世界で最も多額の放送権料を払っている米NBCと複数大会契約を結び、大会ごとの放送権料を公表しなくなった。

1995年、IOCとNBCは2004年アテネ大会、06年トリノ大会、08年北京大会(交渉時は開催地未定)の3大会を23億ドルで契約した。スポーツ史上最高だった。後藤さんは「ここがオリンピックの歴史の転換点であり、IOCとテレビ、競技団体(NF)、そして現地の組織委員会の力関係を決定づけた瞬間だった。

IOCは将来的な財務の安定性を得るだけでなく、組織委員会の発言権も事実上奪い取った。開催場所が決まっていない段階でIOCに意見を言える組織委員会は地球上に存在しない」と書いている。

放送権料の急騰はNBCの発言権を増大させた。2008年北京大会がその象徴になった。NBCは時差が米東部と北京で13時間あることから、米国で人気の高い競泳と体操を自国のプライムタイム(午後8~11時)に生中継できるように競技開始時間の変更をIOCと北京五輪組織委員会に要求。IOCは現地時間午前中の決勝実施を決めたという。

NBCはまだ開催場所も決まっていない大会の10年以上も前に巨額の放送権料を払った。それがたまたま、米国と昼夜逆転している北京で開かれるなら、競技開始時間を調整するだけのことだ。一方、北京とほとんど時差のない日本は日中の放送となり、視聴率も広告料もぱっとしなかった。

さまざまオリンピックにまつわるカネについて書いている本書だが、最も驚いたのは、新国立競技場は「レガシー(遺産)」にならないということだ。

なぜなら、新国立のサブトラックは一時施設で、終了後撤去される。そうすると、サブトラックが併設されない競技場では陸上の公式記録が認められなくなるからだ。

サッカーとラグビーの球技場として利用される方針だそうだが、何か肩透かしをくらったと思うのは評者だけだろうか。(渡辺淳悦)

「オリンピック・マネー」
後藤逸郎著
文藝春秋
880円(税込)

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