1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

1足1000円の靴下は高すぎるのか 「靴下屋」が価格競争に付き合わない「本当の理由」

J-CASTニュース / 2021年7月17日 11時0分

写真

タビオ・靴下屋の商品(提供:タビオ)

「靴下屋」などのブランド展開で知られるタビオ(大阪市浪速区)が、靴下業界の価格競争をめぐる厳しい状況をツイッターで明かした。

投稿は、品質へのこだわりと価格設定へのスタンスを伝えたもので、インターネット上で大きな反響を呼んでいる。こうしたツイートをした理由はどこにあるのだろうか。同社を取材した。

アパレルは高すぎる?

タビオは1968年の創業時から靴下の企画製造・販売を行っている老舗メーカー。「靴下屋」「Tabio」「TabioMEN」などのブランド・店舗の展開でも知られる。

そんな同社のブランドでは、1足1000円前後の商品も数多く取り扱っている。日用的な衣料チェーンなどの商品と比べると、決して安くはない値段といえるだろう。

こうした商品の価格設定に言及した、同社が運営する公式ツイッターアカウント「Tabio 靴下屋」(@Tabio_JP)の2021年7月13日の投稿が話題になっている。

「アパレルは高すぎる!という議論は定期的に起こるのですが」。こんな問いかけから始まるツイートによると、靴下業界は安さを求めた先に「3足1000円」といった商品が定番化。安価な海外工場に国内の工場が押される形となり、結果として業界全体の品質の低下を招いた、という。

投稿の中でタビオは、国内の技術を守るためにも、価格ではなく品質にこだわった「現在のスタイル」を継続したいと訴える。ただし、必ずしも低価格品を悪としているわけではなく、品質を優先させた商品と価格を優先した商品との「バランスこそが大切だと思っています」とも伝えている。

7つにまたがった一連のツイートには、あわせて1万2000件以上のリツイートや5万7000件超の「いいね」が集まるなど大きな反響を呼び、「お値段には、ちゃんと理由がある」「長く使えるので高いと感じない」のように、タビオの姿勢に賛同するような声が多く寄せられている。

吹き荒れる価格競争の風

J-CASTニュースの15日の取材に応じたタビオの広報は、今回のツイートに至った経緯について、

「(価格競争自体は)企業としての努力・戦略なので、全く問題ないのですが、片方で『価格競争が正義』となり、その価格というのが『普通』になってしまう事に危機感を感じました」

と答えた。価格競争を巡っては、20年11月にも「日本の靴下産業は風前の灯」とツイートするなど、過去にも訴えたことがある。

危機感を持つに至った背景には、何があったのか。広報によると、「靴下業界はアパレルの中でも早い段階から価格競争の風が吹き荒れた」という。

ファストファッションの普及に伴い、低価格帯品の市場占有率が増えた。このゾーンでの競合が激しくなったことで、商品の出荷価格が低下し、国内生産では採算が合いにくくなった――靴下業界で起きたことについて、このように広報は説明する。

また、仕入れ先がより供給コストの安い海外に生産スペースを移すなどしたことで、国内工場が事業展開の基盤を奪われ、国内工場の転廃業が進んだ。

広報によれば、パンティストッキング類も含む靴下生産業界全体の業者数は、ここ30年ほどの間にぼぼ1/4まで規模が落ち込んだ。ソックス類だけを見ても、国内市場で販売されている全数量に占める国産品の割合は、1990年には85%強あったものが、2020年にはほぼ10%まで低下したそうだ。

これに伴って、靴下生産に付随する各業種の業者の間でも淘汰が進んでいるという。

なぜ品質にこだわり続けるのか

そうした業界の流れに立ち向かいながら、タビオは商品を国内で生産することにこだわり続けている。

実はタビオ・靴下屋でも展開当初から「3足1100円」の商品を取り扱っているが、こちらも多くが国産だという。とはいえ、あくまでラインナップの中心に据えているのは、セットではなく全品国産の1足売りの商品だと広報は強調した。

タビオが重視しているのは「職人の勘による手作業」だという。「自動化だけで完結させる場合は『自動化で生み出せる物』になってしまう」といい、

「靴下はもちろん機械で作るのですが、ニットの性質上湿度や気温、糸のわずかな品質のバラ付きによって驚くほど出来上がる靴下の質が変わってきます」

と、一定の品質を維持するために必要な様々な調整は、機械に任せることはできないと説明した。

「創業より守り続けたモノを変えてしまうと...」

現在、業界を追い詰めているのは価格競争だけではない。

アパレル業界はコロナ禍によって、苦境に立たされている業界のひとつだ。タビオも例外ではなく、営業時間の短縮や店舗休業、また消費者の行動様式の変化といった影響を受け、2021年2月期の売上高は前期比26.8%の減収だったという。

しかし、厳しい状況のなかでも、

「『品質へのこだわりと価格設定』については、従来通りです」

と、広報は答えた。その理由について、

「コロナ禍がいつ明けるかは分かりませんが、創業より守り続けたモノを変えてしまうと、それを再び手に入れるのは非常に困難な道筋となるためです」

と話した。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング