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河野行革相「ファクス廃止」に霞が関が猛反撃 「そんなアナグロでデジタル化ができるのか!」

J-CAST会社ウォッチ / 2021年7月30日 18時15分

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「ファクス廃止」に孤軍奮闘の河野太郎行改革相

「ファクスなんて、もう10年以上使ったことがないな」

という人も少なくないのではないか。

しかし、中央省庁が立ち並ぶ霞が関では、いまだにファクスはなくてはならない仕事のツールなのだ。これでは行政のデジタル化は進まない。何より、ファクスの送受信のために出勤する人が多く、テレワークを妨げる大きな理由になっている。

というわけで、河野太郎行政・規制改革相が「ファクス廃止」を打ち出すと、霞が関の猛反撃を受けて、火だるま状態だという。いったい、どうなっているのか。

河野大臣、ファクスやめて「メールに切り替えて」

霞が関全体を敵に回した河野太郎行政・規制改革相の孤軍奮闘、四面楚歌ぶりを伝えるのは、読売新聞(2021年7月27日付)「河野行革相要請の『ファクス廃止』、霞が関が抵抗...『国会対応で必要』など反論400件」である。

「河野行政・規制改革相が旗を振る省庁のファクス廃止が難航している。各省庁からは国会対応などを理由に約400件の反論が寄せられ、霞が関の根強い『ファクス文化』が浮き彫りになった。河野氏は行政のデジタル化を推進するため、粘り強く取り組む考えだ」

河野氏は今年6月15日の記者会見で、行政のデジタル化の推進と、省庁のテレワークが進まない理由の一つに業務にファクスを使っていることがあるとして、「ファクスの原則廃止」を打ち出したのだった。内閣官房行政改革推進本部を通じて、ファクス廃止ができない場合は理由を報告するよう全省庁に求めた。河野氏も会見で、

「惰性でファクスを使うのはやめ、メールに切り替えてほしい」

と呼びかけた。しかし、これには猛反発が返ってきた。読売新聞が続ける。

「これに対し、省庁側からは『メールはサイバー攻撃による情報流出の懸念がある』『地方の出先機関では通信環境が整っていない』などとファクスの継続使用を求める意見が相次いだ。災害時などに限って認める考えだった河野氏にとっては、目算が外れた形だ。廃止に消極的な理由として国会対応も挙がった。議員側とはファクスを通じてのやりとりが多く、『役所側だけでは変えられない』というわけだ。河野氏は7月に入り、衆参両院の議院運営委員会に協力を依頼したが、どこまで効果が上がるかは不透明だ」

主要メディアの報道をまとめると、400件の反論の中には、ほかにもこんな例があったという。

「国民の声を吸いあげたり、事業者からの申請を受け付けたりする際に、メールを使えないお年寄りのために、ファクスは残しておくべきだ」
「最高裁が定めた民事訴訟の規則では、法廷文書は『持参』『郵送』『ファクス』の3つの通信手段しか認めていない。それに従って法務省でもファクスを多用している。メールにするには最高裁の規則から変えなくてはならない」
「警察文書や防衛文書など機密性が高い情報を扱う省庁ではファクスを使う場面が多い。メールに切り替えるとセキュリティを確保する新システムが必要になる」
「省庁の多くが、ニュースをクリッピングしてファクスで送ってもらう民間サービス会社を利用している」
「医療現場ではファクスが日常的に使われており、厚生労働省では、必然的に情報のやり取りにファクスを使うのが当たり前になっている」

などなどだ。

ネットで見られる国会広報を毎日印刷する無駄

なかでも、各省庁がファクスをやめられない最大の理由にあげているのが、「国会対応」だ。国会議員のほうが「ファクスでのやりとりを求めている」というのだ。朝日新聞(7月2日付)「河野行革相、国会対応でもFAX廃止を明言 自ら説得も」は河野氏が自ら国会に乗り込んで、説得する意欲を示したと伝えるが......。

「河野太郎行政改革相は7月2日の記者会見で、国会議員と中央省庁とのやり取りについてもFAX利用の廃止をめざす方針を明らかにした。『私のほうで(衆参両)院に直接出向いてご説明し、ご協力のお願いをしにいこうと思っている』と述べた。実現すれば、中央省庁の働き方改革が大きく前進する可能性がある」

しかし、いっこうに進展したという話は聞かない。むしろ、省庁のほうで国会議員とファクスでのやりとりを望んでいると伝えるのは、デイリースポーツ(7月7日付)「丸山穂高議員 国会もFAX、メール断られた 広報は印刷&業者投函『億単位で無駄』」がこう伝える

「丸山穂高衆院議員が7月7日、ツイッターに投稿。河野行政改革担当相が打ち出した中央省庁のファクス廃止が進まないことを伝えるニュースを取り上げ、関連して『行政も国会事務も議員事務所へFAX送ってくる』と明かした」

丸山穂高議員のツイッターを見ると、こう書かれている。

「FAX廃止! とか令和にもなってFAXを議論している政治界隈に驚く人もいそうだが、まだバリバリ現役。しかもセキュリティ的ではなく慣習的なもの。何度お願いしても『いや、いち事務所だけ特別メールには出来ないし、それも余計に手間なので』と言われ、結局届くFAXを自動でPDF化してメール転送している、汗。
なお、国会側もまだまだ無駄多し。たとえばネットで見られる衆議院広報が未だ大量印刷されて議員宿舎等へ。議員が地元にいて留守でも関係なし。毎日業者により投函され大量に溜まり、ゴミ箱行きの仕組み。電媒でよいし予算億単位で無駄」

ファクスもそうだが、ネットで見られる衆議院の広報を、毎日業者に印刷させて議員の元にまで届ける無駄な作業には恐れ入るばかりだ。

韓国紙「日本の公務員はファクスが大好き」と皮肉

こうしたニッポン公務員のファクス好きを、韓国の大手紙、朝鮮日報(7月28日付)が冒頭の読売新聞の記事を引用する形で、「日本の公務員『私たちはずっとファクスを使いたい』」という皮肉たっぷりの見出しでこう報じた。

「日本政府が行政デジタル化のために打ち出した『省庁内ファクス廃止』方針が1か月半で暗礁に乗り上げる危機に瀕している。政府省庁内から約400件の反論が寄せられるなど、反発が大きいからだ。河野改革相が問題提起するほど、日本にはファクスを愛用する文化が根強く残っている。昨年、人口約1400万人の東京都がファクス2台で新型コロナの新規感染者数を集計し、感染者統計情報が混乱したことがある。国会議員たちが依然としてファクスを好んでいることも障害になっている。政府省庁にファクスで問い合わせたり、資料を要求したりする国会議員に、公務員が『電子メールで送ります』と対応するのは難しいだろう」

と皮肉った。

そして、電子版のこの記事に付けた「関連記事」のトップが、「韓国が『デジタル政府評価』で1位、日本は5位』」(2020年10月23日付) という見出しの記事だった。経済協力開発機構(OECD)が実施した加盟29か国・地域の中で、どの政府のデジタル化が一番進んでいるかという調査で、韓国がダントツの1位となり、5位の日本を大きく引き離したという内容だ。さぞ、留飲を下げたことだろう。

インターネット上では、中央省庁の「ファクス廃止」が激しい抵抗にあっていることに対し、こんな批判の意見があふれている。

日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター所長の石川智久氏は、こう指摘した。

「デジタル政府とは、基本的に安全性が守られるようにデジタル化を進めることであって、不安だからデジタル化しないというのはやや本末転倒のような気がします。個人的にはFAXは絶対に安心というわけではなく、信頼できるITシステムに変えていくことが重要です。急激にFAX全廃できなくても経過措置を設けるなどして、極力デジタル化を進めることが重要であると考えます。確かにFAXででき上がった事務処理を変えることは手間がかかり、意外と世の中にFAX愛好者は多いのですが、そういう人でも一度ITに慣れれば、意外と転向します。デジタルガバメントは、効率を上げることでリターンを出す一種の成長戦略でもあります。少しでも行政の手続きが便利になることを期待します」

ほかにもこんな意見が多かった。

「いまだにFAXでないと機密性が確保できないというのは、明らかに昨今の情報セキュリティポリシーから言っても問題外。企業に高レベルの同ポリシーを要求してきて、肝心の官公庁がここまで遅れているとは、不安しかない」
「全廃は確かに難しいだろうが、新たなセキュリティシステムが必要なら投資して作ればいい。そういう事を怠ってきたから日本はIT後進国になってしまった。霞が関がこんなことで世の中の企業がついてくると思っているのですかね」
「できない理由を並べるのは簡単です。できる方法を考え企画立案して実現し、世の中を先に進めるのが官庁や大企業総合職のエリートたちの役割でしょう。仕事を放棄した反論と、それに折れるリーダーシップのなさに、日本が停滞している理由を感じます」

「セキュリティ面ではファクスの誤送信が怖い」

「最近の複合プリンタなら、受信したFAXをPDFで共有フォルダに自動で格納しているし、PCからFAXもできるから、メール送信の導入は難しくない。裁判関連や証拠資料などは難しいだろうが、100%はダメでも99%削減できるなら大成功だと思うが」

セキュリティの面ではファクスの誤送信が怖いという人が多かった。

「セキュリティ云々なら、FAXの誤送信も結構あるぞ。FAXの誤送信が固定電話(FAX非対応)にかかってきた日にゃ泣く」
「保険会社からの弁護士事務所あての書類が誤送信で来たことあります。交通事故関係の書類で、加害者被害者双方の個人情報と保険金額等が記載されていました。危険ですね」

一方、いまだにファクスを使っているという民間会社の人からは、悲喜こもごもの声が。

「私は企業の総務課でFAXをなくそうと頑張っているが、まったく理解が得られない。河野さんのお気持ちはわかるよ。FAX信者や紙に依存している人たちの気持ちがわからないわけではないが、現状維持では会社全体の生産性が上がらない。トップダウンの会社なら良かった」
「私もITでの業務連絡が進んだ職場から、異動していまの職場になり、何年か時間を巻き戻された感じです。非常に非効率で紙ももったいないですが、ワードやエクセルすら使えない世代がいなくならないと難しいのかも知れません」
「民間でもFAXで営業の案内を送ってくるタワケがいるし 契約書をFAXで送れという会社があったりする(それもIT/web関連の大手だ)」
「事務職なんかだとメールのほうが楽だろうけど、簡易な図面とかだと手書きでさっさと送れるFAXのほうが速かったりする。PDFにしてメールで送るほうがが、ひと手間増えますからね」

最後にこんな声を紹介したい。

「FAX全廃は無理でも、『PDFを印刷した紙をFAXして、届いた紙をスキャナーで読み込む』みたいな『謎の部族』に伝わる儀式は全廃できるんじゃないですかね!」

(福田和郎)

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