「五輪興味ない」スケボー・芝田モトが貫くスケータースタイル…Ｘゲームズ「今になってゴールドに憧れ」

２０２３年のＸゲームズ千葉大会の記者会見でインタビューに応じる芝田モト（左）ら（２０２３年、東京都港区で）＝永井秀典撮影

　アクションスポーツの世界最高峰の賞金大会「Ｘゲームズ」千葉大会が９月２０日～２２日、千葉市の幕張メッセで開催される。この大会のスケートボード「バート」に出場する芝田モト。日本では知名度が決して高くはないが、彼こそ、スケボー大国・日本で「スケーター」の姿を体現する存在だ。（デジタル編集部　古和康行）

ハーレー好き

　「練習は週３回くらいですかね。練習場所まで１時間くらいかかるし、毎日練習するのもしんどい。スケボーは楽しんでやるものだから」

　肩まで届く長髪、気だるそうな関西弁、すらりと長い足に完璧なサイジングの細身のデニム――。２８歳の芝田は、誰が見ても、明らかにカッコイイ。練習は「週３日」というから、残り４日は何しているのかと聞けば、「最近バイクに乗っています。ハーレー好きなんで。あとは仲間と遊んだりしてますね」という。かっこよすぎて、お手上げである。

　スケートボードは様々な顔を持つ。オリンピックでは「ストリート」「パーク」という２種目がある。競技として見た時に、スケートボードの日本勢は明らかに強い。東京五輪では４種目で５個のメダル、パリ五輪でも４個のメダルを獲得した。ファッションアイテムとしても人気だし、ビデオや写真を撮ってＳＮＳに上げる「カルチャー」もある。

　芝田が主戦場とする「バート」は、五輪種目には採用されていないので、国内での知名度は決して高いとはいえない。だが、Ｘゲームズでは花形種目の一つだ。スノーボードのハーフパイプのようなコースを滑り降り、宙に跳ね上がる。空中で見せるエアトリックは華やかだ。パリ五輪で何度もテレビ画面に映し出され、「スケボー界の神」として知られるトニー・ホーク（米）もこの種目の出身だ。

五輪「興味ないわ」

　芝田はバートでは日本の第一人者だ。２０１７年にＸゲームズミネアポリス大会で日本人初優勝。２１年には世界選手権を制し、今年のＸゲームズベンチュラ大会では２位に入っている。長い滞空時間とオリジナル技「カミカゼ」を武器に、世界のシーンで活躍している。

　「一応、女子のパークは見ました」。パリ五輪を見たか――と聞かれて、芝田は答える。そして、こう言葉を続ける。「スケートボードを好きでずっとやっている人が見たら、五輪はスケボーのあるべき場所じゃないよって思いますよね」「でも、子どもがスケボーに乗っている親から見たら夢のような場所やなって思うし」――。そして「自分はどちらかと言えば良く思ってなかった」と。

　実は、五輪種目を戦ったこともある。２０１６年にはアジアスケートボード選手権のパークで優勝を果たしている。「ケガもすげえしたし、面白くなかった。二度と出えへんって思って」。スポンサーや周囲が「五輪競技になるのだから」とパークでの競技続行を勧めても、芝田は「俺は興味ないわって。オリンピックのためにスケボー始めたんちゃう」と一蹴した。そこから、芝田が五輪と交わることはなかった。

証明しておきたい

　パークを続けなかった一番の理由は「バート滑りたいのに、ケガしたら滑られへんようになる」ことだった。五輪には全く縁がなくても、Ｘゲームズには２０１６年から出場し、これまでに計８個のメダルを獲得している。彼がスケートボード界に残した日本人としての足跡は、とてつもなく大きい。

　芝田はラフで、自分を軸に生きている。スケボーへのスタンスも一貫してきた。それは「優勝とか勝ちにこだわらない」ということ。「自分のベストができれば、ベベ（最下位）でもいい。勝つぞ、みたいになったらスケボーちゃうやん」とその理由を語る。

　でも、２０代後半になり、心境に変化が生じたという。それは、初めて「勝ちたい」と思っていること。Ｘゲームズで優勝したのは２０１７年に１度だけ。昨年の千葉大会ではバートのベストトリックで２位になっているが、頂点は逃した。気だるそうに、ラフに。それでいて、熱を込めて語った。「Ｘゲームズに７～８年続けて出てきて、今になってゴールドに憧れが出てきた。どこかで証明しておきたいという気持ちがある」。これまで主戦場としてきたＸゲームズ。そして、自国開催。証明の場に、これ以上ふさわしい大会はない。