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築地小劇場100年…新劇精神を若手俳優ら継承、平体まひろ・那須凜が劇団への思いを語る

読売新聞 / 2024年8月31日 15時57分

知り合った頃の那須の印象を「エネルギーの強さが『夏』って感じ」と平体(左)。那須は平体について「冬っぽいイメージでした」。平体は「根っこの太さが似ている気がする」と語る=青木久雄撮影

 築地小劇場は、新劇の若手俳優たちが表現を研さんしてきた舞台でもある。そして、100年たった今も、その歴史につらなる劇団では、多くの若手が舞台に上がる。第一線で活躍する劇団青年座の那須凜と文学座の平体まひろが、演劇や劇団への思いを語った。(武田実沙子)

 ――「創作劇の上演」を掲げて設立された青年座は、今年創立70年を迎えた。劇団の印象や魅力は。

 那須 活動について話し合う総会は家族、親戚の集まりのよう。若者にはやり方を変えていきたいという思いがあり、グツグツしたエネルギーになっているのではないでしょうか。

 平体 (那須主演で青年座が上演した)「ケエツブロウよ 伊藤野枝ただいま帰省中」にも表れていたけれど、家族のようなつながりの深さや、みんなで向かっていく勢いを感じます。

 那須 うれしい、よく見てるなあ。若手が頑張れるように、先輩たちが後ろから支えてくれています。

 ――文学座は1937年、作家の久保田万太郎、岸田 國士 くにお、岩田豊雄の発起で創立された。現在は女性演出家も多い。

 平体 背中を押してくれるというより、背中を見せる派の先輩が多い。層が厚く、経てきた時代も違うので、それぞれ考え方は違います。

 那須 演出家も役者も、文学座以外の公演で活躍する人が多く、吸収して戻っていく雰囲気を感じます。一人一人の色がしっかりあるのも魅力。

 平体 だからこそ、哲学が人によって違う。なので、稽古場はそのぶつかり合いです。別々の方向を見ているのに、一つの作品を作りあげるのは彩り豊かなことだと思う。

 ――演劇を志す若者が研究所を経て、劇団員になるシステム。研究所生活は。

 那須 1年目は身体訓練で一瞬にして体育会系になる。ダンスや殺陣、地唄舞に狂言と、めげずに食らいついていく胆力がつきました。舞台に立つには、すごく大きなことなのかも。

 平体 文学座は「芝居とは何か」という授業が多いですね。演出家や役者がそれぞれ語る大事なことが違う。最初は「どっち?」となるけど、どれでもいいんだと思える。むしろ「自分で探しに行くんだ」という気持ちになる。

 那須 だから頭のいい人が多いんだ。うちはみんな、元気がいいのが取りえ……。

 ――新劇を意識することは。

 那須 脈々と受け継がれてきた長い歴史を感じます。先輩たちが、亡くなった先輩たちの話をする。青年座70年の歴史の中の一部にいることを実感する。

 平体 10年や20年ではできない地力がある。作品の中に老成したエネルギーの渦を感じる。これは、歴史の長さがもたらしてくれたのだと思う。劇団力を感じる芝居をやっていきたい。

 那須 ただ、劇団外の公演に出ると「新劇の女優っぽくないね」と言われる。「新劇の女優っぽい」ってなんだろう、と考えています。

 平体 新劇が何なのかは分かっていないが、(文学座が6~7月に上演した)「オセロー」と「ケエツブロウよ」を見て思った。長い間、いろいろなことを吸収してきた文学座、青年座という団体のそれぞれの色と、生きているエネルギーが舞台に乗ると、こんなに面白いことになるのか、と。

 ――築地小劇場の存在とは。

 那須 演劇の歴史の年表を見た時に、青年座の創立、文学座の創立とさかのぼると、最初に築地小劇場がある。激動の時代に、芝居をすることで社会運動を起こそうとした。世の中が大変な時に始めたということはものすごいことだと思います。

 平体 関わった人たちは、人はどう生きるのかという問いに向き合った時代に、演劇に落とし込んだ。生きることと演劇が重なり合っていたような気がする。それは今も同じだと思う。

ひらたい・まひろ 1996年11月19日生まれ。北海道出身。2017年、文学座付属演劇研究所に入所。22年に座員に。21年に「紙屋悦子の青春」で文化庁芸術祭賞新人賞を受賞した。10月に東京・新宿三丁目の雑遊で、ひとり芝居「売り言葉」に取り組む。

なす・りん 1994年10月12日生まれ。東京都出身。2013年、劇団青年座研究所に入所。15年入団。22年、「ザ・ドクター」などで読売演劇大賞杉村春子賞を受賞した。11~12月に横浜・KAAT神奈川芸術劇場で上演される「品川猿の告白」に出演する。

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