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水産物輸入再開 日中関係の改善につながるか

読売新聞 / 2024年9月21日 5時0分

 日本産水産物を巡る科学的根拠のない主張を、中国がようやく取り下げたと理解してもいいのだろうか。日本は中国側の出方を慎重に見極めていく必要がある。

 東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を巡って、中国が日本産水産物の輸入を段階的に再開する方向で、日中両政府が合意したという。

 具体的には国際原子力機関(IAEA)が海水などのモニタリング(監視)を拡充する。その枠組みの下、中国などが独自に調査を行うことを、日本側が認めた。

 中国はかねて、「独立した試料採取」を求めてきたが、日本は、独自の調査では客観性を担保できないとし、認めてこなかった。今回は、IAEAが関与するなら問題はないと判断したのだろう。

 東電は昨年8月、太平洋への処理水の放出を始めた。IAEAは放出計画を「安全基準に合致している」とし、放出開始後の海水などの調査でも、問題はないと繰り返し強調してきた。

 だが、中国は、安全性が疑わしいとして、日本産水産物の全面的な禁輸に踏み切っていた。

 一方、韓国は先月、近海で独自に行ってきた5万件近い調査で、安全基準を外れた事例は1件もなかったと発表した。中国の主張に全く根拠がないのは明白だ。

 理不尽な中国の禁輸措置は、日中間の懸案となってきた。今回、中国が歩み寄り、問題解消に向けて前進したことは評価できる。

 ただ、中国は日本との合意後も処理水を依然として「核汚染水」と呼んでいる。日本を おとしめるような振る舞いを続ける限り、全面的に信頼するわけにはいかない。

 岸田首相は日中間の合意後、「日本産水産物の輸入が着実に回復されると理解している」と述べた。国内でも、福島産などの水産物を購入する機運を高め、売り上げの減少に苦しむ水産業者への支援を広げていきたい。

 中国が禁輸措置の解除に向けて動き出したのは、日中関係をこれ以上悪化させるのは中国にとって得策ではない、という判断が働いたとの見方も出ている。

 中国では日本人が襲われる事件が相次いでいる。広東省深圳で男子児童が中国人の男に刺されて死亡した事件では、中国側から犯行動機など詳しい説明はない。

 尖閣諸島周辺での中国海警局の威圧的な活動を含め、日中間の懸案は多い。中国が独善的な対応を改めなければ、日本人の対中感情は悪化する一方だろう。

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