食品包装用の耐油紙、脱PFASで国内製紙大手に商機…欧米で規制強化の動き
読売新聞 / 2024年9月24日 5時0分
製紙大手がフライドチキンやドーナツといった油分を多く含む食品の包装に使う耐油紙に、「PFAS(ピーファス)」を使わない製品を発売している。欧米で規制強化の動きが広がっており、国内でも需要の増加を見込む。技術力で差別化が図れる製品として、商機になる可能性もある。
日本製紙パピリアは7月、PFASを使わない耐油紙を発売した。水蒸気を通して、揚げ物の食感を保つ。食品包装向け耐油紙の市場規模は年7000トン程度が見込まれ、5年後に年700トン以上の販売を目指すという。大王製紙が6月に発売した新製品は、店や商品の名前が印刷しやすいという。
王子ホールディングス傘下の王子エフテックスは2015年に一度、生産から撤退したが、海外の規制強化を追い風に23年10月、新製品を発売した。外から中身が見えにくいものなど、4種類を用意している。過去のノウハウも生かし、3年後に2000トンの販売を見込む。
食品包装向けの耐油紙には、油やソースなどがしみ出ることを防ぐ機能が求められる。これまでは、水や油をはじく性質があるPFASを含む耐油剤の塗布や、ポリエチレンによるラミネート加工などが採用されてきた。
PFASは一部の種類で発がん性が指摘され、各国で規制強化が検討されている。米食品医薬品局(FDA)は、化学品メーカーに対して、PFASを使わない耐油剤に切り替えるよう要請した。
米マクドナルドは、25年までにすべての食品包装をPFASを使わないものとする方針だ。欧米では、人が触れる食品向け包装容器や衣類などから、PFASを使わない製品への代替が進んでいる。
日本でも、一部の外食チェーンでは、同じような製品を採用する動きが出てきた。脱プラスチックの流れを受けて、ラミネート加工の製品も今後、需要が減ることが見込まれる。規制強化を念頭にした議論も始まった。
みずほリサーチ&テクノロジーズの後藤嘉孝氏は、「消費者の注目が集まっており、規制の有無にかかわらず、PFASを使わない製品は需要の増加が見込まれる。日本企業も海外展開する上で、供給網全体でPFASの管理が求められることになる」と話している。
◆PFAS(ピーファス) 有機フッ素化合物の総称。水や油をはじき、熱に強い性質から、フライパンのコーティングやはっ水スプレー、泡消火剤などに広く使われてきた。自然界で分解されにくく、人体に長く残留するため、悪影響が懸念されている。
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