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銅線ケーブルの盗難350件、山間部の太陽光発電所が標的に…金属くず売買の規制強化の検討も

読売新聞 / 2024年9月24日 14時54分

 太陽光発電所で使われる送電用ケーブルなどを狙った窃盗事件が三重県内で多発している。ケーブルに使われている銅などの金属を換金しているとみられ、世界的な金属価格の上昇が犯罪の背景にあるとされる。犯罪を放置すれば、政府が進める再生エネルギーの普及拡大に支障を及ぼす恐れもあると指摘されている。金属くずの売買を巡っては、売り手の身元などを十分に確認しないケースもあるとされ、県警は条例などで規制を強化する必要性を検討している。(小林加央)

昨年上回る

 県警によると、2023年の金属類の窃盗は347件にのぼり、21年(168件)から倍増した。24年1~7月末で356件が確認され、すでに昨年1年間の被害件数を上回った。県警は、金属資源の価格高騰が要因の一つとみている。

 特に、太陽光発電施設で使われる送電用の銅線ケーブルの被害が多発しているといい、24年7月末までで206件と、金属盗全体の6割近くをしめた。太陽光発電施設は人目につきにくい山間部にあることが多く、防犯カメラなどがあっても無人の時間が長いため、標的にされやすいという。県内のある事業者は「夜間でも鮮明に映せる高性能な防犯カメラはコストがかさむ。ダミーカメラを混ぜるなどして必死に対策している」と明かす。

条例検討も

 過去、県には金属くずの買い取りを規制する「県金属くず取扱業条例」があった。県警によると、朝鮮戦争の特需景気による金属類の価格高騰を受け、全国的に金属類を対象とした窃盗事件が多発したため、1957年に制定された。その後、金属類の盗難件数は減少し、条例は2000年に廃止された。

 太陽光発電協会(東京)の杉本完蔵シニアアドバイザーは「(発電所に)入らせない、とらせない、といった対策は引き続き徹底していくが、それではもう間に合わない状況」と指摘する。

 「(盗品の)金属くずを買い取る業者がいるため、いわゆる『出口』が抑えられない状況になっている」。再び条例を制定し、売り手の身分証明書や取引記録の保存を義務づけ、「出所不明」の金属は買い取らせないようにすることが必要だと主張する。

 県警の難波正樹本部長は「現在の金属盗の発生実態、条例制定による抑止効果などを踏まえて、必要性を検討する。県内の買い取り業者の実態をよく把握した上で判断したい」と説明している。

再生エネ普及妨げ 懸念

 発電時の二酸化炭素(CO2)排出が少ない太陽光発電は、2011年の東日本大震災以降、国の重要な電源として導入拡大が続いている。

 資源エネルギー庁によると、国内の太陽光発電の発電量は2011年度の48億キロ・ワット時から、22年度には926億キロ・ワット時と約20倍になった。原子力や火力などを含めた発電量全体に占める比率も、11年度の0.4%から22年度は9.2%に上昇した。

 政府は太陽光のさらなる導入を目指しており、30年度には電源全体に占める太陽光の比率を14~16%程度(発電量は約1290億~1460億キロ・ワット時)とする目標を掲げている。

 太陽光発電施設での窃盗急増は、再生エネルギーの拡大に水を差しかねない。再エネ業者にとっては、盗まれた送電用ケーブルの修理費用だけでなく、防犯コストも負担になる。被害に遭った企業の間では「事業を手放したい、という声も出ている」(業界関係者)という。

 太陽光発電協会の杉本完蔵シニアアドバイザーは「太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーで、日本の電気をグリーン化していきたいが、窃盗が増え続ければ普及が止まってしまいかねない」と警鐘を鳴らす。生活を支える電力の安定供給に向け、「エネルギー政策の一環としての対策」を求めている。

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