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「晴れ風好調で一番搾りに次ぐブランドに育てたい」「ファンケル買収でシナジー期待、イノベーション起こす」…キリンホールディングス・南方健志社長

読売新聞 / 2024年9月25日 17時20分

インタビューに答えるキリンホールディングスの南方社長(東京都中野区で)

 キリンホールディングスは、酒類、飲料だけでなく、医薬を第2の柱として育て、両者を結びつけるヘルスサイエンス事業にも力を入れている。化粧品やサプリメントが主力のファンケルの買収も決めた。南方健志社長に戦略を聞いた。(聞き手・貝塚麟太郎)

「晴れ風」「生茶」想定以上の売り上げ

 ――社長就任後、力を入れている点について。

 「まずは事業の実態を自分の肌感覚で確認し、目指すべき方向とのギャップがどこにあるかをつかもうと思い、かなりの時間を使って、社員と話す対話集会を開いている。現場の視察ということで、工場や営業所を訪ねて膝詰めで話をしている。

 キリンビールは、2024年4月に発売した新商品の「晴れ風」が好調で、キリンビバレッジは「生茶」をリニューアルした。想定以上の売り上げで、お客様に支持されている。とてもうれしく、メーカー 冥利 みょうりに尽きる。

 社員も実感しており、現場は前向きで元気があるというのが第一印象だ。世の中に評価してもらえる、商品と話題作り、サービスの提供が大事だというのは当たり前だが、メーカーの原点だと実感している。

 また、本社が作った戦略をいかに実行できるかという点もみている。社員の意識と行動が一つに向かっているかどうかが、大事だ。社員の潜在能力をさらに引き出さなければいけない。

 (事業を通じて社会課題を解決する)CSV経営が根幹にあるという理解は進んできた。社員が自分の仕事に置き換えて、行動を起こせているかといえば、人によって差がある。CSVの先進企業として取り組みをさらに進めていきたい」

 ――ビール事業の展望を。

 「晴れ風では、メーカーの提案次第で、お客様はビールに振り向いてくれるということが改めてわかった。コクがありながら飲みやすい。苦みが好きでない人にもおいしいと感じてもらえる商品になった。一番搾りに次ぐブランドに育てたい。

 QRコードを使って、社会の課題解決にお金を振り向ける。お客様のニーズを満たす提案ができているという点もこの商品の背景にある。単にモノを提供するだけではなく、生活の中で感じている自分としての思いや期待が商品を通じて実現できる、ちょっとしたコト消費というか。

 単にモノだけではない、社会とのつながりを感じてもらえる商品ができた。これからもいろいろな提案を行い、商品のコンセプトを守りながら大事に育て、次の柱にしていきたい」

 ――酒税の改正もあり、狭義のビールが見直されている。

 「26年には(狭義のビールと第3のビール、発泡酒の税率が)一本化される。過去にも技術革新を行い、新ジャンル(第3のビール)や発泡酒を提案し、定着してきた。税率が一本化されても、一定程度は価格差が出てくる。割安なカテゴリーの商品を楽しみたいというお客様は必ずいる。主力商品にはしっかりと投資していきたい」

アジア太平洋地域で大きな存在に

 ――ヘルスサイエンスを強化するために、ファンケルを買収した。

 「ファンケルは19年に初めて出資した。ヘルスサイエンスを成功させるために、可能性を感じている。ブランド力のほか、サプリメント以外にもスキンケアという肌の健康という領域で独自の強みを持つ会社だ。

 キリンが100%完全子会社化することで、知的財産の完全共有といったブランドの相互活用ができるようになり、今まで以上にシナジーが期待できる。ファンケルにとっても、キリンが培ってきた研究開発の成果を活用でき、イノベーションを起こすことができる。

 すでに買収した豪州の食品大手、ブラックモアズと三つどもえで、アジア太平洋地域で大きな存在を目指す」

 ――ファンケルの株式公開買い付け(TOB)は、途中で買収価格を引き上げた。

 「もともとTOBが簡単ではないとは想定していた。買い付け期間が延びてしまったのもやむをえない。難航したように見えるかもしれないが、当社がコントロールできるものでもない。(買収に応じるかは)あくまで株主が判断するものだ。もちろん、最初に示した価格がベストだとは思っている。引き上げを取締役会で議論する時にも厳しい意見は出た。TOBは、リスクを想定しながら進めなければならない」

 ――為替が大きく動いている。事業への影響は。

 「経済が海外とつながっており、為替変動の影響は受けやすい。今後も為替の変動は起こり得る。結果として原材料を始め輸入価格が高くなったり、輸出が難しくなったりする可能性もある。そうしたことを前提に事業を進めたい。環境変化に強い事業構造、レジリエントなポートフォリオ( 強靱 きょうじんな資産配分)を作らなければならない。いくつかの市場でバランス良くビジネスを進めるのも一つの手だ。

 外食市場でビールの販売がコロナ禍前に戻ったとは考えにくいが、少しずつ、消費は上向きつつあるのではないか。賃上げが進んでいるのは喜ばしいことだ。購買力が少しずつ上がっているという実感もある。だが、利上げが進めば、影響を受けるところもある。まだまだ力強さには欠けるのではないか」

◆南方健志氏(みなかた・たけし) 1984年東大農卒、キリンビール入社。キリンホールディングス取締役常務執行役員とヘルスサイエンス事業本部長の兼務を経て、2024年3月から社長。工場などの現場経験が長い。週末は、10年ほど前に始めたテニスでリフレッシュしている。広島県出身。

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