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「人手不足が一番の課題、サービスの質イコール社員の質なので人材に投資していく」…セコム・吉田保幸社長

読売新聞 / 2024年9月27日 12時30分

セコムの吉田社長(東京都渋谷区で)=野口哲司撮影

 コロナ禍後の経済正常化によって、幅広い分野で人手不足が深刻化している。警備員は人材獲得競争の激しい職種の一つだ。異常を察知して24時間365日対応するためには、人手が欠かせず、働く環境の改善を進めている。セコムの吉田保幸社長に話を聞いた。(聞き手・石黒慎祐)

平均上回る賃上げ

 ――警備サービスの現状について。

 「コロナ禍が収束し、様々な業種で採用活動が活発になった。警備員はとりわけ採用が厳しく、求人倍率も高い。人手不足が一番の課題だ。やはり夜勤があることが原因として大きい。

 逆に警備を好んでやりたいという人もいる。夜勤が苦にならなければ悪い仕事ではないと思う。潜在的ななり手、関心を持っている若者には十分にリーチできている。そんな中で、平均的な賃上げ率を上回る形で賃金を引き上げている。サービスの質イコール社員の質なので、人材に投資をするのが最も大事だと思っている点だ。

 働きやすい環境作りも重要だ。最近、大学に通っている方で奨学金をもらっている人が多い。この支援もしている。人生の半分以上を仕事に費やすので、定年まで働いてよかったと思ってもらいたい。家族も幸せに暮らせるような会社にしたい」

 ――警備サービスは契約件数が右肩上がりだ。

 「警備サービスに対するニーズは着実に伸びている。一つは高齢者が増加し、見守りサービスの利用が増えている。地方に残っているお父さんやお母さんを見守ってほしいという要望だ。

 防犯のニーズも多く、ホームセキュリティーの問い合わせが増えている。空き巣は、2002年頃が発生件数のピークで、警察の取り締まりで減ったが、闇バイトの強盗が発生し、体感治安がものすごく悪くなっている。AGCと防犯ガラスを開発したが、手口も荒くなっている。より強化したものを作って発表した」

 ――技術の活用について。

 「機械警備と言っているが、警報を受けて駆けつける仕組みを(創業者の)飯田亮が始めた。今で言う(あらゆるモノをインターネットでつなぐ)Iotの仕組みで、たとえるならば、サービスを提供する(定額制の)サブスクリプションだ。

 飯田は、人手を使った警備には限界があると考えていた。お客様が増えると、警備員を確保しなければならない。人がやらなければいけない部分を除いて、技術で補う。現在、国内270万の契約者に6000万のセンサーが付いている。センサーから情報を取って、警備をしている。機械なしならば、人はもっと必要になる。

 若い頃に成田空港に配属された。当時はテロが結構多かった。私がやっていた仕事は今、ロボットに置き換わっている。そうすれば、本当に大事な仕事に人をあてられる。一番難しいのが(警報を受けて出動する)駆けつけだ。機械ではできない。AI(人工知能)を使った判断はできても、最終的な判断は人がしている」

AIが感知、人間がカバー

 ――AI行動検知システムの発売を始めた。

 「警備は、人がモニターを見ながら何か異常がないかを調べている。起きたことをAIで感知して知らせてくれれば、何かが発生した時だけ見ればよくなる。そうすれば、24時間、社員をはり付ける必要もなくなる。

 23年以降、法人向けのセキュリティーの契約者には8%、ホームセキュリティーでは3%の値上げをした。下請けで工事をしている会社やセンサー類を納入している会社も一緒に賃上げしないといけない。今までは、コストを抑えるのが企業の美学のようだったが、優れたサービスを提供しようと思ったら、対価をもらわないといけない。警備業は下請けの部分が多く、賃金の底上げが必要だ。

 たとえば、夜間に何かが起きた時に駆けつけてもお客様は朝来たときに、『異常はありませんでした』という報告書を受け取るだけで、駆けつけた人間に会う機会がない。見えないから、人件費として価格転嫁がしにくい。異常信号を受けてから25分以内に駆けつけねばならず、拠点に24時間365日、人が待機している。都市部では異常信号が多発している。

 北関東では雷で苦労している。停電すると、異常が出て、通電後に警報が鳴る。現場の社員は出勤が増えて疲弊している。エッセンシャルワーカーで休めない。人が足りないから、この場所だけはサービスを停止しますとはいえない。見えない努力をしている人たちの働き方を変えなければならない」

 ――データセンター事業も手がけている。

 「もともと子会社でやっていたが、規模を大きくしたかったので、東京電力などと一緒にやっている。延べ床面積では日本最大規模だ。データセンターは電気が必要で、東電とやっており、心配がない。外資を始め、様々な企業から、データセンターの需要がある。当社で一番伸びている事業で、今後も強化したい」

◆吉田保幸氏(よしだ・やすゆき) 1980年慶大商卒、入社。東洋火災海上保険(現セコム損害保険)社長、セコム専務取締役などを経て、2024年4月からセコム社長。休日の息抜きは温泉巡り。東京都出身。

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