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ナスカ地上絵、新たに303点…山形大などの研究チームがAIによる航空写真解析で発見

読売新聞 / 2024年9月24日 23時34分

「ナイフを持ったシャチ」の地上絵のイラスト(山形大ナスカ研究所提供)

掲示板のような役割か

 人工知能(AI)による航空写真の解析を基に、南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」を新たに303点発見したと、山形大などの研究チームが発表した。過去1世紀で見つかった430点から大きく増え、その分布から地上絵の制作目的も明らかになってきた。論文が24日、米科学アカデミー紀要に掲載された。

 同大によると、地上絵は東京23区の半分あまりの面積に相当するナスカ台地(約400平方キロ)に点在しており、人力で探すと膨大な時間がかかっていた。そこで2018年からAIの活用を試み、地上絵の特徴を学習させたうえで航空写真を解析。これまでの実証実験で4点が新たに見つかっており、今回は1309か所で地上絵の候補が示された。

 うち341か所を22年9月から約6か月かけて現地調査。1か所で複数の地上絵が確認されたり、候補地の付近でAIでは示されなかったものも見つかったりして、303点の発見につながった。発見までの時間が短縮され、調査研究が大幅に効率化された。

 地上絵は紀元前100年頃~紀元後300年頃に作られ、地面に線状に描かれた「線タイプ」と、地表を削って凹凸をつけるなどした「面タイプ」がある。代表的な「ハチドリ」や「クモ」などの地上絵は線タイプで、50点が確認されている。大きさは平均約90メートルと、大型なのが特徴だ。

 一方、今回見つかったのは全て面タイプだった。大きさは平均約9メートルと比較的小さく、これまで発見が難しかったとみられる。人の形や頭部を模したとみられるものが約8割を占め、ラマのような家畜や、「ナイフを持ったシャチ」のような地上絵もあった。

 チームの坂井正人教授(考古学)は「面タイプの地上絵は、(住民が日常的に使う)小道沿いに多く分布している。当時文字を持っていなかったため、その代わりとして、儀式や家畜に関する『掲示板』のような情報共有の役割を果たしたのではないか」と分析している。

 住民たちが歩きながら地上絵を繰り返し見て、人をいけにえとする儀式の概念を認識したり、家畜の繁栄を祈ったりしていたとみられるという。

 これに対し線タイプは、ナスカ台地の南北の神殿などをつなぐ巡礼経路の両端に集中しており、周辺では当時の土器の破片なども見つかっている。このため、宗教的な儀式に使われたと考えられている。

 AIで示された候補の約7割は現地で調査できておらず、地上絵は今後さらに増える見通し。開発や洪水などによって失われてしまう恐れもあるため、特定を急ぎ、ペルー政府と協力して保護につなげたい考えだ。

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