AIブーム乗り遅れのインテル「独り負け」、連続赤字で1・5万人削減…買収浮上に大規模再編も
読売新聞 / 2024年9月25日 18時0分
【ニューヨーク=小林泰裕】世界最大の半導体企業として知られた米インテルが、経営不振にあえいでいる。AI(人工知能)ブームに乗り遅れ、注力してきた受託製造事業では巨額の損失を計上した。同業による買収の可能性も浮上しており、大規模な業界再編に発展する可能性もある。
インテルの2024年4~6月期の最終利益は、約16億ドル(約2300億円)の赤字となった。最終赤字は2四半期連続だ。売上高は約128億ドルで、この3年で3割減少した。
23年1~3月期には四半期で過去最大となる27億ドル超の最終赤字も計上。株価も21年に比べて3分の1の水準に低迷している。
不振の主な要因は、AIブームへの対応の遅れだ。22年11月に米オープンAIが「チャットGPT」を公開して以降、データセンターで生成AIのデータ処理を行う高性能半導体への需要が急増した。
米半導体大手エヌビディアはAI処理に適した半導体を開発し、3年で売上高を5倍に増やした。データセンター向けは10倍超に膨らみ、24年5~7月期の売上高は約300億ドルと、インテルの3倍近い規模となっている。
一方、インテルはAI向け半導体の開発で出遅れ、24年4~6月期のデータセンター向け売上高は約30億ドルとなり、3年で半減した。エヌビディアなどが生成AI需要を取り込んで業績を伸ばす中、「独り負け」に近い状況だ。
新たな成長分野としてきた半導体の受託製造も、台湾積体電路製造(TSMC)などの牙城は崩せず、先行投資がかさんで24年4~6月期に約28億ドルの営業赤字を計上。「インテル・インサイド」のキャッチコピーで知られ、インテルが高いシェア(占有率)を持つパソコン向けの半導体も、コロナ特需の反動によるパソコン販売の低迷で業績の重荷となっている。
変革の時
インテルは1968年に設立され、本社を米カリフォルニア州シリコンバレーに置く企業だ。米セミコンダクターインテリジェンスによれば、2021年1~3月期には世界の半導体企業で売上高トップだったが、24年4~6月期には4位に転落した。99年にダウ平均株価(30種)の採用銘柄となったが、株価低迷で除外されるとの観測も浮上する。
インテルは経営再建に向け、8月には全従業員の15%にあたる約1万5000人の削減や、100億ドル規模のコスト削減方針を発表した。今月16日には不振が続く受託製造事業を分社化し、外部から資本を受け入れることや欧州で予定していた投資計画を約2年中断することも明らかにした。
パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は16日、「過去40年間で最も重要な変革の時だ」との声明を公表した。今後のカギを握るのが他社との提携や協業だ。今月に入り、同業の米クアルコムによる買収や、米ファンドによる投資の可能性が報じられている。
スマートフォン向け半導体に強みを持つクアルコムとの経営統合はインテルと相性が良いとみられ、IT業界で過去最大規模のM&A(企業の合併・買収)になる可能性があるという。ただ、米国の独占禁止法に抵触する恐れがあり、「実現は不透明」(欧米メディア)との見方が支配的だ。
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