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香りもAIで分析…讃岐うどんに近いダシの香りは稲庭うどん

読売新聞 / 2024年9月26日 9時18分

 讃岐うどんのダシの香りを数値で分析し、可視化する研究に、四国電力の通信子会社「STNet」の主席研究員、野口英司さん(55)が取り組んでいる。香りをセンサーで分析し、AI(人工知能)を活用して図表に表示する仕組みだ。将来的に名店の香りをデータで記録したり、離れた場所でも香りを楽しめたりする可能性を秘めている。(黒川絵理)

40万種を認知

 野口さんは同社研究開発部に所属し、様々な情報通信技術を問題解決に応用できないかを研究している。

 野口さんによると、映像や音声はデータ化され、ネットワークでやりとりできるが、香りは実現していない。原因は、人が香りを認知する複雑さにあるという。

 香りは多くのにおい分子で構成され、人は鼻の奥にある嗅神経細胞からなる受容体に分子が吸着すると、においを感じる。約40万種を認知できるとする説もある。

 香りをデータ化できれば、様々な分野で応用できることから、野口さんは2021年に研究を始めた。その際、「せっかくなら、香川県民の心の香りともいえるうどんダシを題材に」と選んだ。

 AIによる香りの研究開発に取り組む東京の会社と協力した。人の嗅神経細胞を模した16種類の膜に、様々なにおい分子がついた時の震え方を検知する嗅覚センサーで、ダシの香りを分析。AIで統計学の方法を用い、分析結果の香り成分が似ているものほど、近い位置に点がデジタルマップに表示されるようにした。

類似性うまく表現

 表示でわかるのはあくまで香り成分の近さで、人が感じる香りとして近いことを示すには、AIに多くの人の香りの感じ方を学習させる必要があるという。

 香川県内の約20店舗のダシを調査すると、マップ上では様々に分布し、多様性を示す結果になった。

 昨年12月には、各地のうどんを高松市に集めた「全国年明けうどん大会」の会場で香りを分析。その結果、かけダシを主とした秋田県の稲庭うどんや滋賀県の近江うどんなどが讃岐うどんに近い結果が出た一方、ぜんざいのようなあずき味やカレー味、ソースで味付けした焼きうどんなどは離れた点で表示され、香りの類似性がうまく表現できていることが確認できた。

 ただ、かにみそが使われているダシと、トマト味のダシが隣接して表示されるなど、人の感じ方とは異なる結果もあったという。

再現装置も

 野口さんは香りを再現する装置づくりにも挑戦している。うどん鉢のデザインで、ダシの香りのデータを基に、複数のカートリッジに入れた様々なダシを噴射して配合し、香りを作り出す。この装置をネットワークでつなげば、離れた場所で同じ香りをかぐことも可能だという。

 野口さんは「今後香りを可視化する研究が進めば、いつものダシと同じかチェックする検査に応用できたり、ダシの香りをデータベース化して未来に残したりできるのでは。デジタル技術が役立てば」としている。

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