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中学時代は男子生徒10人に囲まれ、自転車で反撃したことも……イタリア人の父と日本人の母の間に生まれた女子プロレスラーのジュリアさんに思う

読売新聞 / 2024年9月26日 17時0分

カリスマキリンへの道

 胸板の薄さには自信があるキリンにとって、格闘技は最も縁のないものです。でも、昔からプロレスについて書かれた本を読むのは好きでした。井田真木子さんの『プロレス少女伝説』をはじめ、肉体の生み出す体温が文字に息づく一冊が多いからです。

 『My Dream ジュリア自叙伝』(発行・ホーム社)を手に取ったのは、その予感があったからでしょう。華やかな女子プロレスのスターが自分を語った本です。期待を裏切らず、ジュリアさんの前半生は激しいものでした。

 ジュリアさんは、レストラン経営を夢見るイタリア人の父と、柔道で鳴らした母が恋に落ち、ロンドンで生まれました。その後、日本で暮らし始めましたが、日本人離れした見た目や行動からいじめられます。

 やがてけんかに目覚め、中学時代は男子生徒10人に囲まれて自転車で反撃し、高校は1年生の冬で退学。遊びに飽きて親の経営する店で働き、メイク学校に通うためキャバクラでアルバイトするようになります。同伴のお客さんに連れられていったプロレスなどがきっかけで、選手になることを夢見るようになります。

 人間社会の枠から転落しそうなぎりぎりの一線で踏みとどまって生きる人たちの物語は、いつも私を強く揺さぶります。話の世界に没入した後で、ひどい自己嫌悪に陥ります。私は自分を安全な場所に置き、いわば高みの見物のようにジュリアさんの人生を眺めている。自分がここしかないと思っている場所は狭く、世の中はもっと広いのだと彼らを見て、息を一つついてみたいだけではないか。

 こちらは本を買った「お客さん」なのだから、それでいいのかもしれません。でも、開き直りきれないのは、SNSで中傷を受けて自殺したライバルの木村花さんのことにも触れられているからです。誰の人生も、歯止めなく消費し尽くすことは許されないのです。

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