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袴田氏無罪判決 長すぎる再審の見直しを急げ

読売新聞 / 2024年9月27日 5時0分

 揺れ動く司法判断に ほん ろうされ続け、死刑の確定から40年以上を再審のために費やした。こうした事態が二度と起きないよう、再審が速やかに進む制度に改めるべきだ。

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件を巡り、死刑が確定した袴田巌さんの裁判をやり直す再審で、静岡地裁は無罪判決を言い渡した。死刑が確定した事件で再審無罪となるのは、戦後5件目となる。

 再審の争点は、事件の約1年後、現場近くのみそ工場のタンクから見つかったシャツなどが袴田さんのものかどうかだった。

 衣類には血痕が残っており、当初の死刑判決は袴田さんの犯行時の着衣だと認定した。再審で検察側は、この判決に基づき、改めて犯人は袴田さんだと主張した。

 これに対し、26日の判決は、「衣類は捜査機関によって 捏造 ねつぞうされ、自白も非人道的な取り調べで得られたものだ」と断じた。その上で、袴田さんは「犯人だとは認められない」と結論づけた。

 捜査機関が自分たちの都合のいいように証拠を作り出し、 冤罪 えんざいを生み出したのだとしたら、許しがたい。検察側は、組織のメンツを保とうとして、控訴するようなことがあってはならない。

 最初の再審請求は81年だった。2014年に2回目の請求が認められ、再審開始が決まって釈放された。だが、その後も裁判所の判断は、「有罪」か「無罪」かを巡って二転三転した経緯がある。

 逮捕時30歳だった袴田さんは、半世紀近く身柄を拘束され、今では88歳になっている。その間、死刑執行の恐怖におびえる日々を送った。冤罪を晴らすのに要した時間は途方もなく長い。

 現行制度では、裁判所が再審開始を決定しても、検察側は不服を申し立てられる。そのため、再審の前段の手続きが延々と続き、再審裁判がなかなか始まらない。

 ひとたび再審開始が決定されたら直ちに裁判に移行し、公開の法廷で有罪か無罪かを審理する形にしてはどうか。これで再審手続きは大幅に短縮できるはずだ。

 証拠開示の仕組みにも問題がある。再審制度では、検察側の証拠開示義務が法的に定められていないため、検察側が重要な証拠をすぐに開示しないケースがある。

 袴田さんの事件も、血痕の付いた衣類のカラー写真が無罪判決に結びついたが、検察側が開示したのは2回目の再審請求の時だった。冤罪の救済には、証拠開示のルール明確化が不可欠だ。

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