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石破新総裁 新しい自民党の出発となるか

読売新聞 / 2024年9月28日 5時0分

◆地に足の着いた政策を遂行せよ◆

 5回目の挑戦で、ようやく首相の座をつかみ取った。地に足の着いた政策を遂行し、自民党への信頼を取り戻せるかどうかが問われる。

 自民党総裁選で、石破茂元幹事長が新総裁に選出された。石破氏は来月1日に召集される臨時国会で、首相に指名される予定だ。

 これまで党内で野党的な発言を続けてきた石破氏が政権を担う。自民党の新時代を築けるか、見識と力量が試されることになる。

◆決選で旧派閥が存在感

 総裁選は1回目の投票で過半数を得た候補がなく、決選投票が行われた結果、石破氏が高市早苗経済安全保障相を破った。

 自民党内では派閥の解消が進んでいるが、決選投票では旧岸田派が石破氏に、今も存続している麻生派は高市氏に、それぞれまとまって投票するよう呼びかけるなど派閥が一定の存在感を示した。

 今後の党役員や閣僚人事でも、派閥が影響力を行使する可能性があるのではないか。

 今回の総裁選は過去最多の9人が立候補し、それぞれが主張を戦わせた。この経験を生かし、政策論争を活発に展開することを通じて、自民党の体質を新しいものに変えていくべきだ。

 石破氏が政権を担う上で気をつけなければならないのは、いかに党内を まとめ、融和を図るかだ。

 石破氏はこれまで、時の政権への注文や批判も辞さなかった。総裁選後の記者会見で「自民党はルールを守り、公平公正で常に謙虚な政党でなければならない」と述べたのも、従来の党運営を暗に批判したものとみられる。

 こうした姿勢は、世論の注目を集める効果があった反面、党内から冷ややかな目で見られ、総裁選で敗れ続ける要因になった。

 今度は自分が行政のトップとして、批判を浴びる側に回る。苦言や批判にも謙虚に耳を傾け、政権運営に生かせるかどうかが、「石破政権」の浮沈を左右しよう。

 党運営では、派閥が担ってきた議員の教育はどの組織で行うのかが定まっていない。部会長など様々な人事をどう調整していくのかも決める必要がある。

 内外の政策課題への対応も、待ったなしだ。

 人口減少や少子化に歯止めをかけないと、経済や社会は縮小し、社会保障制度の維持は難しくなる。中露両国は、日本の政治空白を見透かすかのように領空侵犯や領海侵入を強行している。

 難局を乗り越えていくために、石破氏は強力な内閣を組織しなければならない。

 だが、総裁選での石破氏の訴えの中には、実現可能性を疑いたくなるものが目立った。

◆公約の実現性問われる

 石破氏は、中露や北朝鮮の脅威が増大したことを踏まえ、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の構想を掲げた。

 だが、中国と経済面で結びつき、利害関係も複雑な東南アジア諸国が、中国を念頭に置いた軍事協力に賛同するとは思いにくい。

 日米韓や日米豪印4か国の「クアッド」など今ある枠組みを活用し、アジアや太平洋 島嶼 とうしょ国を支援することで良好な関係を築いていくことが建設的ではないか。

 石破氏は、米国内に自衛隊の訓練基地をつくることも提案している。日米同盟を対等な関係にする狙いだというが、米国が対日防衛義務を負い、日本が基地を提供する、という現在の同盟関係を不安定にしてはならない。

 石破氏はまた、北朝鮮による拉致問題の解決に向けて、東京と平壌に連絡事務所を開設する、と述べているが、拉致被害者家族は反対している。家族は高齢化しており、拉致問題の解決は新政権にとって最優先課題となろう。

 憲法改正について石破氏は、戦力不保持を定めた9条2項は「自衛隊の存在と矛盾する」として削除を主張している。さらに「国の自衛権を体現する実力組織は国際的に『軍』だ」とも指摘し、「国防軍」の明記を求めてきた。

◆逆風をどうはね返す

 こうした考え方は、9条に自衛隊を明記するという自民党の現在の方針に矛盾している。総裁として再度、憲法改正の方向性について議論し直すつもりなのか。

 政治とカネの問題で、自民党は逆風にさらされている。

 石破氏は、党が議員に支給している政策活動費について、「廃止も選択肢だ」と述べていた。

 政治活動には一定の資金がかかるが、カネのかからない選挙の実現は時代の要請と言える。新たな政党像を作り上げることもまた、石破氏に課せられた使命だ。

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