セブン&アイ買収提案のクシュタールCEO「彼らの食品事業はワールドクラス」…店舗報道公開でPR
読売新聞 / 2024年11月23日 9時11分
セブン&アイ・ホールディングスに買収を提案しているカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールが21日、日本の一部報道機関を対象に、カナダ・モントリオールで店舗を公開した。首脳陣はガソリンスタンドに大きく依存した現在の経営モデルから転換する上で、食品事業に強みを持つセブン&アイとの経営統合が必要だとの認識を強調した。(モントリオール 小林泰裕)
モントリオール近郊はクシュタールにとって、1980年に事業を開始した創業の地だ。市中心部にある店内は日本のセブン―イレブンと同様に明るく、飲み物やお菓子などがきれいに陳列されており、現金自動預け払い機(ATM)もある。日本と同様に24時間営業の店が多い。
ホットドッグやハンバーガー、パンなどの軽食が充実しているほか、コーヒーマシンも設置されており、カフェラテやカプチーノが1杯約3カナダドル(約330円)で楽しめる。カフェラテはクリーミーで非常においしく、ホットドッグ(約310円)やクロワッサン(約330円)も印象に残るおいしさだった。
一方、店舗での取材に同行したクシュタールのアレックス・ミラー最高経営責任者(CEO)は「セブン&アイのコーヒー類はもっと先進的だ。彼らの食品事業は間違いなくワールドクラスだ」と評価した。
日本のセブン―イレブンでは1日に3回、弁当やおにぎりが店舗に配送されるのに対し、クシュタールでは食材の配達は多くて1日1回程度にとどまるという。クシュタールの店舗でもサンドイッチやサラダなどが販売されていたが、種類はセブンほど豊富ではないという印象を受けた。
創業者のアラン・ブシャール会長も21日、数ある日本のコンビニの中でセブン&アイに買収提案した理由について「おでんなど多くの食品が販売されており、素晴らしい供給網が整備されている」と強調した。ブシャール氏は6~7回来日した経験があり、「日本のセブンの手巻き寿司に感動した」とも話した。
クシュタールの世界の約1万7000店のうち、ガソリンスタンド併設型の店舗は8割を占めており、売上高の7割超をガソリンなどの燃料販売が占めている。気候変動対応で電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の販売が伸びる中、ガソリン依存度の高さは将来的に業績の低迷につながる恐れがある。
また、北米では日本と同様に都市部への人口集中が進みつつあり、車を持たない人が増える可能性もあるという。そのため日本の都市部で多くの店舗を展開し、優れた食品事業を抱えるセブン&アイを、構造転換を進める上で不可欠なパートナーと評価している。
デジタル面の強化も買収提案の狙いの一つだ。21日に訪れたクシュタールの店舗には無人レジも設置されていた。ミラー氏は21日、「データ活用を含めたデジタル技術への投資をセブン&アイと協力して進めていきたい」と話した。
クシュタールは1980年の創業後、買収を重ねて現在の規模に成長した。現在の社名もフクロウのロゴも、買収を通じて得られたものだ。クシュタール営業部門幹部のステファン・トルーデル氏は「他社との融合と共生がクシュタールの成長の原動力だ」と話した。
ブシャール氏は21日、2005年、20年、24年と、これまで3回にわたってセブン&アイに買収提案を行ったことも明らかにした。今回の提案が実現しなくても、クシュタールが将来的に再び買収を提案する可能性はある。
セブン&アイは「非コンビニ」事業を分離して主力のコンビニ事業に注力する方針だが、創業家からは経営陣による自社株買収(MBO)の提案も受けている。クシュタールの提案に応じるにしても断るにしても、今後の成長戦略を明確に示す必要がある。
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