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35周年の真心ブラザーズが19枚目アルバム、円熟のギター…「スピード」から「急がず」

読売新聞 / 2024年11月23日 16時16分

YO―KING(右)と桜井。本作を携えたツアーも展開中だ=安川純撮影

 真心ブラザーズがデビュー35周年を迎え、19枚目のアルバム「SQUEEZE and RELEASE」(コロムビア)を出した。ロック色を強めた1995年の名盤「KING OF ROCK」をほうふつとさせるたくましい音とともに、真心らしい自由な精神と詩情にもあふれた快作だ。(北川洋平)

 89年に大学の音楽サークルの先輩YO―KING(ヨーキング)と後輩の桜井秀俊で結成しデビュー。「どかーん」「モルツのテーマ」といったフォーク調の温かい音とユーモラスな歌詞で人気をつかんだ。

 一方、アルバム「KING――」は同時代のオルタナティブロックやヒップホップなどの音楽を取り入れた意欲作。「自分たちの根っこにある言葉とメロディーを盛る器として、はまった」(桜井)作品でもあった。

 同作にあるような曲群は近年のライブでも好評で、節目となる今作の基調になっている。収録には気鋭の大橋哲(ベース)と古市健太(ドラムス)を起用し、生々しいバンドサウンドで10曲を収めた。

 冒頭の「あたまの中は大自由」から豪快なギターロックだ。〈楽しいことを考えてなきゃだめだ〉とYO―KINGの自由を希求する言葉がさく裂する。

 これぞ真心、といえる曲を、当人は「世界はある意味全て思い込みだと思う。だからどれだけ自由に世界を思い込めるかが、幸せになる技術として重要。思い込むほどにその世界が自分に寄ってきてくれるという感じですかね」と笑う。

 桜井が歌う「Mic Check」はファンキーで激しいサウンドにラップを乗せ、要所での桜井らしい甘い旋律が印象深い。ライブで盛り上がりそうなこの曲を、桜井は「これ見よがしに韻を踏んでいて、やりすぎと言われるくらいやってみるとやっぱり気持ちいいよね。唇が肉体的に喜ぶ感じがあります」と語る。

 29年前に出した「KING――」は「スピード」「すぐやれ 今やれ」といった曲の言葉にあるように性急な雰囲気が魅力だったが、対して今作の最後を飾る「急がない人」はゆったりと、おおらかなギター演奏で円熟の響きを聴かせる。YO―KINGが〈できる限り ゆっくりと できる限り 力を抜いて〉と伸びやかに、かみしめるように歌っている。

 「サマーヌード」「拝啓、ジョン・レノン」といった名曲を世に届け、のびのびとキャリアを充実させてきた2人の歩みと現在の境地が音ににじむ。YO―KINGは「休まない、急がないっていうのかな。それが一番、成果が上がる。山あり谷ありじゃなくても、フラットにやり続ければ、その成果の方が勝つんじゃないかな。35年やり続けるのも、なかなかの名人芸だよ」とほほえんだ。

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