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「不明」並ぶ収支報告書、世耕氏団体は13か所…調査や書類押収を理由に「説明責任果たさず」

読売新聞 / 2024年11月30日 5時0分

収入や支出の総額などを「不明」と記載していた世耕弘成衆院議員の資金管理団体の収支報告書

 総務省が29日公表した2023年分の政治資金収支報告書では、自民党派閥を巡る政治資金規正法違反事件を受け、旧安倍派の所属議員らの政治団体で収支などを「不明」とする記述が相次いだ。このほか、収入などの記載漏れも多く確認された。事件を受けてもなお、不明朗な会計処理が後をたたない。

 <収入総額 不明><前年からの繰越額 不明><支出総額 不明>――。

 かつて自民党参院幹事長を務め、旧安倍派で「5人衆」と呼ばれる幹部だった世耕弘成衆院議員(和歌山2区)。その資金管理団体「紀成会」の収支報告書には、冒頭から「不明」の文字が並んだ。個々の項目でも「領収書を紛失した」として贈答品などの名目の支出額を不明とするなど、全体では13か所に及んでいた。

 同会は派閥から政治資金パーティー収入の一部を還流され、2022年までの5年間で計1542万円が不記載だった。22年分までの収支報告書を訂正したが、「収入や支出の一部に金額・日付不明などがあり、調査している」との理由で、収支の総額などはいずれも「不明」に。世耕氏は今年3月の参院政治倫理審査会で、「支出約60万円の領収書が見つからなかった。繰越残高が不明となり、(他項目も)玉突きで不明となってしまった」と釈明した。

 それから約8か月。世耕氏は離党勧告を受け、くら替え出馬した10月の衆院選で当選したが、収支報告書の「不明」は解消されないままだ。世耕氏は29日、取材に対し、約60万円分の領収書は見つかっていないとした上で、「だから総額を不明とせざるを得ない。それでも大半は判明している」などと答えた。

 高額の還流を受け、同法違反で起訴・在宅起訴された議員側などにも不透明な記載が目立った。不記載額が約5100万円の大野泰正参院議員や、約4800万円の池田佳隆・前衆院議員の資金管理団体は、収支の総額に加え、支出の内訳を全て「不明」と記載。いずれも「関係書類が押収されているため」としている。

 このほか、昨年NHK党から2度名称変更した「みんなでつくる党」でも、計約4500万円分の支出について、支払先や目的などを「不明」としていた。同党は昨年、計約3億3000万円の政党交付金を受けている。担当者は「昨年3月に代表者が交代した際、領収書などが引き継がれず、支出の詳細が分からなかった」としている。

 総務省によると、収支報告書に「不明」と記載した場合の取り扱いについては、具体的なルールが設けられていない。

 岩井奉信・日大名誉教授(政治学)は「政治資金をどこから得て、何に使ったのかを国民に示す収支報告書に『不明』と書くことはあってはならないことだ。火災による焼失などの特殊事情を除いて、『不明』との記述がまかり通れば、制度を根幹から揺るがす事態になりかねない」と批判。「『不明』を解消しない限り、説明責任を果たしたとは言えない」と指摘する。

◆自民党派閥を巡る事件=派閥のパーティー収入のうち、ノルマ超過分を所属議員側に還流し、収支報告書に記載しなかったなどとして派閥の会計責任者らが政治資金規正法違反で起訴されるなどした。不記載額は旧安倍派が計約6億7500万円、旧二階派が計約2億6400万円、旧岸田派は計約3000万円で、各派の会計責任者の有罪が確定している。

麻生派からの寄付230万円、井林辰憲衆院議員が不記載

 自民党の井林辰憲衆院議員(48)(静岡2区)が代表を務める資金管理団体「大川会」が2023年、井林氏が所属する「志公会」(麻生派)から寄付として受け取った約230万円を同年分の政治資金収支報告書に記載していなかったことがわかった。井林氏側は取材に記載漏れを認め、収支報告書を訂正する意向を示した。

 麻生派の収支報告書によると、同派は大川会に対し、7月6日に230万9680円を寄付として支出していたが、大川会の収支報告書には同額の収入は記載されていなかった。井林氏の事務所は「東京と地元の事務所間の連携がうまくとれておらず、記載漏れになった」と説明した。

都内の政治団体、旧二階派パーティー券購入を記載せず

 自民党旧二階派が2023年4月26日に開催した政治資金パーティーを巡り、東京都内の政治団体がパーティー券を20万円超購入していたにもかかわらず、同派の政治資金収支報告書に団体の名称などを記載していなかったことがわかった。

 この政治団体は、泉信也・元国家公安委員長が代表を務める政治団体「篠山会」(東京都品川区)。昨年4月11日と13日、「志帥会(旧二階派)と同志の集い会費」として3回にわけて計24万円を支出したと同年分の収支報告書に記載した。一方で、旧二階派の収支報告書には、篠山会の名称などは記載されていなかった。

 政治資金規正法は、20万円超のパーティー券を購入した個人や企業、団体の名称などの記載を義務づけている。

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