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シリア政権崩壊 独裁終焉でも安定はなお遠い

読売新聞 / 2024年12月10日 5時0分

 内戦が続いていたシリアでアサド政権が崩壊した。半世紀にわたる圧政には終止符が打たれたものの、秩序回復に向けた道筋は見通せない。

 中東の混迷がさらに深まる事態を憂慮する。

 アサド政権と交戦していた反体制派が8日、首都ダマスカスに進軍し、政権を崩壊させたと宣言した。アサド大統領は家族とともにロシアに亡命した。

 シリアでは1971年にアサド氏の父ハフェズ氏が大統領に就任して以降、強権統治が続いていた。ハフェズ氏はアラブの盟主として存在感を発揮したが、2000年に死去し、息子バッシャール氏が政権を引き継いだ。

 11年に中東に広がった民主化運動「アラブの春」でエジプトなどの政権が崩壊する中、シリアは反体制派の掃討を名目に市民を巻き込む無差別攻撃を行い、独裁体制を維持してきた。

 親子2代に及ぶ独裁体制が10日余りの反政府軍の進軍であっけなく終焉しゅうえんを迎えたことは、暴力と恐怖を源泉とする権力のもろさを示したのではないか。

 こうした独裁体制を裏から支えてきたのがロシアとイランで、その構造に変化が生じたことが事態急変につながった。

 ロシアはウクライナ侵略で、シリアの内戦に関与する余力を失った。イランはレバノンのイスラム教シーア組織ヒズボラなど親イランの武装勢力を支援し、パレスチナ自治区ガザに侵攻するイスラエルを攻撃することを優先した。

 今後は、新たな政権作りが焦点となる。反体制派は、イスラム過激派組織「シャーム解放機構」が主導しており、米国はテロ組織に指定している。

 反体制派による新政権は、国際社会の承認が得られない可能性がある。反体制派は「反アサド」では一致していたが、異なる民族や主張が混在している。国内の石油利権などを巡って対立し、新たな戦闘が起きる恐れもある。

 シリアが無政府状態に陥り、テロ集団の巣窟となる事態は避けなければならない。

 内戦が始まって以来、国の内外で避難生活を送るシリア人は1200万人を超える。国際社会は、政権崩壊で難民の苦境が深まらないよう、支援を強化すべきだ。

 アサド政権は、反体制派に猛毒サリンなど化学兵器を使用したことが国連などの調査で明らかになっている。国際機関などを通じて、アサド氏ら元政権幹部の責任を追及する必要もあるだろう。

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