エネルギー計画 脱炭素には原発活用が必要だ
読売新聞 / 2024年12月18日 5時0分
脱炭素と電力の安定供給を両立させるためには原子力発電を活用していく必要がある。再生可能エネルギーに関する技術革新を進めていくことも不可欠だ。
政府は、国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の原案を発表した。2021年度以来の見直しとなる。24年度中に閣議決定する予定だ。
原案では、40年度の電源構成目標を初めて提示した。再生エネを4~5割、原子力を2割、火力を3~4割とした。再生エネを最大の電源と位置づけることにより、原発と合わせ、脱炭素電源を6~7割へと高めたい考えだ。
ただし、23年度の実績では、電力の約69%は火力に依存し、再生エネは約23%、原子力は8・5%にとどまっている。
40年度の電力需要は、生成AI(人工知能)の普及により、1~2割増えると予想され、電力の供給量を増やすことが必須だ。
目標どおりの電源構成を実現するハードルは高く、官民を挙げて、脱炭素の取り組みを一段と強化していかねばならない。
今回、大きな転換を図ったのが原発の位置づけである。
東日本大震災後、基本計画に明記してきた「可能な限り依存度を低減する」との文言を削った。その上で、再生エネとともに原発を「最大限活用する」と記した。
岸田前政権は、23年に原発を積極的に活用する方針へと
廃炉を決めた原発の敷地内に限っている建て替えを、他の原発の敷地でも行えるようにする。原発の運転期間は原則40年で、電力供給力を維持するためだ。
将来も原発を活用する方針を明記することで、電力会社は建て替えの計画を立てやすくなろう。
一方、再生エネの柱であるパネル型の太陽光発電は、適地が少なくなっている。さらなる拡大を図るには、ビルの壁面などに設置できるペロブスカイト太陽電池の開発を急ぐことが重要だ。
日本は、温室効果ガスの排出量を50年に実質ゼロとする国際公約を掲げ、中間目標として35年度に13年度比で60%減とする案を示した。新たな基本計画は、その政府目標の裏付けとなるものだ。
世界的に異常気象が頻発し、脱炭素の重要性は増している。ロシアのウクライナ侵略を受け、エネルギー安全保障も切実な課題だ。基本計画は、そうした観点から考えていくことも大切になろう。
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