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焦点:米共和党の「分断」深刻、トランプ氏が残した置き土産

ロイター / 2021年1月20日 14時8分

 1月19日、 米共和党が「弱虫」議員たちに支配されるぐらいなら、いっそ党をつぶした方がましだ――。トランプ大統領支持者たちによる連邦議会議事堂乱入事件の後、一部の同党議員たちがトランプ氏を非難して距離を取りつつあることに対し、米テキサス州西部ホックリー郡の共和党地区委員長、パット・コワンは本気でそう考えている。写真は6日、ワシントンで開かれた選挙結果への抗議集会の会場で撮影(2021年 ロイター/Shannon Stapleton)

[レベランド(米テキサス州) 19日 ロイター] - 米共和党が「弱虫」議員たちに支配されるぐらいなら、いっそ党をつぶした方がましだ――。トランプ大統領支持者たちによる連邦議会議事堂乱入事件の後、一部の同党議員たちがトランプ氏を非難して距離を取りつつあることに対し、米テキサス州西部ホックリー郡の共和党地区委員長、パット・コワンは本気でそう考えている。

コワン氏は、同郡レベランド市の自宅で「連中は民主党員か共和党員か、もはや区別がつかない」とあざけった。

彼女は、昨年11月の不正な大統領選で「勝利を盗まれた」とのトランプ氏の根拠なき主張を信じて疑わない。乱入事件の数時間後にバイデン氏勝利の認定に賛成したテキサス州選出の共和党下院議員たちに対し、怒りをたぎらせている。

もっと頭にきているのは、トランプ氏への弾劾訴追決議案に他州選出の共和党下院議員10人が賛成したことだ。コワン氏は「これで新党立ち上げを思い浮かべた人は多い。トランプ氏が党首になるというのが私の考えよ」と話す。

ロイターが20人余りのテキサス州の有権者や党幹部を取材したところ、多くが同様の考えを表明した。トランプ氏が大統領を務めた4年間のうちに、米国全体だけでなく共和党自体まで分断が進んでしまった事実が浮き彫りになった。

テキサスのような保守地盤の強固な州で、今後の選挙への出馬を目指す共和党の政治家たちは「選挙が不正だった」とのトランプ氏の虚偽の主張をずっと引き継いでいくよう、強い圧力を受けている。将来の選挙で票を入れるかどうかの有権者の判断で、トランプ氏への忠誠度が物差しにされてしまうからだ。

先週開かれたテキサス州議会では、選挙不正を防止する必要があるとして、郵便投票や期日前投票の制限を含む投票権の制約法案を、幾人かの共和党議員が提出した。ここにも、そうした忠誠心が垣間見える。

上院決選投票で共和党候補が2人とも敗北したジョージア州では、党内部が混乱の極みに達している。いずれも共和党のケンプ知事とラフェンスパーガー州務長官が、同州の大統領選結果を覆すようトランプ氏から手伝いを要請されて拒否。これをトランプ氏が猛然と批判したことで、同州フォーサイス郡の屋外広告ボードには先週、ケンプ氏とラフェンスパーガー氏を、投獄すべき「裏切り者のRINO(Republicans In Name Only=名ばかり共和党員)とののしるメッセージが掲げられた。

片やアリゾナ州共和党は、トランプ氏とかつて激しく衝突した故マケイン上院議員のシンディ・マケイン夫人ら何人かの有力党員について、トランプ氏への忠誠度が足りないと問責するかを近く採決する。

共和党内には、トランプ支持者にひたすら迎合すれば、同氏の下で大統領職と上下両院での優位をすでに失った同党が、取り返しのつかない痛手を負うことになると警鐘を鳴らす声もある。

複数の共和党ストラテジストは、トランプ氏が唱える根拠のない不正説を支持する政治家は、目先は報われるかもしれないが、結局は米国の選挙制度に対する有権者の信頼を損ない、党の信認と団結も同時に傷つくと警告する。

カリフォルニア州の共和党ストラテジストで、2008年の大統領選で共和党候補になったミット・ロムニー上院議員の顧問を務めたロブ・スタッツマン氏によると、この先米国と共和党が抱える問題は、あまりに多くの党員が「選挙は盗まれた」との間違った見方を自分たちの手で広めてしまったことだと語る。同氏は今、党内でトランプ氏を批判する急先鋒の1人だ。

16年の大統領選を目指したテキサス州のテッド・クルーズ共和党上院議員の陣営広報責任者だったアリス・スチュワート氏は、共和党員にとって目下一番大事なのは「うそをつくのをやめる」ことだと忠告した。

<政治的打算>

議事堂乱入事件の直後でも、大統領選でバイデン氏勝利を認定した幾つかの激戦州の選挙人団による投票結果を巡り、共和党下院議員では3分の2に当たる139人、上院でも8人の同党議員が異を唱えた。テキサス州選出の同党下院議員の場合、24人のうち17人が一部の州の選挙人団認定に異議ありとした。

ロイターが昨年11月に行われた大統領選でのテキサス州下院選挙区の投票動向を調査した結果から見ると、バイデン氏の勝利を認定した同州選出7人の中で、トランプ支持が強い地区から選出されたのはケビン・ブレイディ氏とカイ・グランジャー氏の2人にとどまる。トランプ氏は自分の意にそむく共和党議員の選挙区には、今後の選挙の予備選で「刺客」を送ると示唆しており、今回の2人は党公認候補の地位を得るのが厳しくなる可能性もある。

一方、残る5人の選挙区はテキサス州でも穏健な有権者が多く、民主党員の比率が相対的に高い。つまりバイデン氏勝利を認めても政治的リスクは小さい上に、トランプ氏に反対する穏健な有権者の支持をむしろ集められるかもしれない議員たちだ。

ダラス北部の郊外地域が選挙区のほとんどを占めるバン・テイラー下院議員も、バイデン氏勝利を認めた1人。それでもロイターの取材には慎重な態度を崩さず、トランプ氏への直接批判は避けた。バイデン氏勝利を自分が認定したのは合衆国憲法上の手続きの定めに基づいただけであり、選挙不正や、多くのトランプ支持者の不興を買った州の選挙規定変更を巡って、調査することは支持すると強調した。「選挙制度への国民の信頼を取り戻すことが、まさに重要だ」と説明した。

<トランプ支持者が払う代償>

伝統的な共和党員の多くは、やがてトランプ氏の影響力が消滅すると期待しつつも、今はまだ同氏が党内で力があると認める。

カリフォルニア州のストラテジスト、スタッツマン氏は「トランプ氏が独自のメディアをつくり、次々に全米で遊説集会を開き、本当は選挙に勝っていたと言い張れば、恐らく共和党はさらに四分五裂してしまう」と危機感を抱く。

もっとも一部の共和党ストラテジストは、トランプ氏の側近グループや、根拠のない選挙不正説を熱心に広めて回る支持者たちについて、このままではいずれ、より大きな代償を支払うことになるとの見方を示した。

テキサス州西部を見ても、トランプ氏の主張を否定する共和党政治家に背を向けるトランプ支持者が確かに多い一方で、共和党の方向性にもう少し微妙な意見を持つ人もいる。

同州ラメサ市のジョシュ・スティーブンス市長もその1人。選挙不正疑惑自体については民主党が認識している以上に大きな問題だとしながらも、トランプ氏の敗北が必ずしも不正のためだとは考えていない。

スティーブンス氏は、トランプ氏の中核支持層は歩み寄りの方法を学ぶべき時期を迎えたと指摘。連邦議事堂乱入といった異様な振る舞いや、大規模な選挙不正を言い続けることは、逆にトランプ氏を損なうことになると語る。「やってはならないのが、自分たちの正しさを証明するとして防弾チョッキを着用、ライフルを持ち、(アクション映画の主人公)ランボーのようにこれを振りかざしながら歩き回ることだ。その種の過激主義は全く何も生み出さない」とした。

(Brad Brooks記者、Gabriella Borter記者)

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