アングル: 持ち直した米株、今後はソフトランディングの可否が左右か
ロイター / 2023年11月20日 9時10分
Lewis Krauskopf
[ニューヨーク 17日 ロイター] - 米国株はS&P総合500種が再び最高値を視界にとらえる地点まで持ち直してきた。そこで投資家の頭に浮かぶのは、このまま劇的な値上がりが続くのか、それとも上昇は一服するのかという疑問だ。
物価上昇鈍化の兆しで米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め期待が広がったため、S&P総合500種は10月下旬以降に9%余り上昇。今年初めからの上昇率は18%近くに達し、7月につけた年初来高値まではあと2%弱、昨年1月に記録した過去最高値には約6%の距離にある。
これらの節目に届くかどうかは、米経済のソフトランディング、つまりFRBが成長に打撃を与えずにインフレを落ち着かせられるという展開を、投資家がどの程度確信しているかに左右される面があるだろう。
今のところ金融引き締め政策の下でも経済は底堅さを発揮しているが、雇用や消費の一部指標は軟化し始めた。
またバリュエーションの高まりや、なお高水準にある米国債利回りなどが米株の上値を抑える要因とみられる。半面、季節性など一段の株高を後押ししてくれる材料もある。
米株は8月から10月の大半の期間まで下げ局面が続いた後、過去数週間は楽観ムードが勢いを増してきた。全米アクティブ投資マネジャーズ協会の指数を見ると、10月に1年ぶりの低さに沈んだアクティブ運用投資家の株式エクスポージャーは8月以降の最高に戻った。
またLSEGデータによると、今月15日までの週の米株ファンドへの資金流入は差し引き約93億3000万ドルで、週間ベースで9月13日以来の大幅な買い越しだった。
過去数カ月にわたって株価を圧迫していた米国債利回りも足元では低下。株式のオーバーウエートを推奨するネッド・デービス・リサーチのアナリストチームは、投資家が株式から債券への資金シフトをさらに進めるはずだと主張している。主因は10月の米消費者物価指数(CPI)が予想より小幅の伸びにとどまり、FRBの追加利上げ確率が乏しくなったことだ。
同社のチーフ米国ストラテジスト、エド・クリソルド氏は「CPIは利上げサイクルが終了し、(金利が)より長くより高くなるという局面は以前懸念されたほど続かないことを裏付けている」と指摘した。
ダコタ・ウエルスのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロバート・パブリク氏は、第3・四半期の企業業績が予想より堅調だったことなどから、幾つかの懸念要素は払しょくされたと説明。「個人投資家、機関投資家ともに今から年末までは株式が最適な投資先だと認識するだろう」と述べ、自身も全面的に株式投資に動いていると付け加えた。
季節性も株式にとって追い風だ。ストック・トレーダーズ・アルマナックのデータに基づくと、11月と12月の相場は1950年以降の月間別でそれぞれ第2位と第3位の好成績。上昇率の平均は1.5%と1.4%となっている。
一方目先には、試練も待ち受ける。21日には、今年の米株をけん引してきた超大型7銘柄マグニフィセント・セブンの最後としてエヌビディアが四半期決算を公表する。
さらに23日の感謝祭翌日の金曜日に当たるブラックフライデーからはいよいよ年末商戦が始まり、底堅い米経済を引っ張る個人消費の動向が注目されそうだ。
こうした中で気がかりの種とみなされているのが、再び高まってきた米株のバリュエーション。LSEGデータストリームでは、S&P総合500種銘柄の向こう12カ月業績見通しに基づく株価収益率(PER)は18.7倍で、長期平均の15.6倍を大きく上回っている。
グレンミードの投資戦略・調査責任者ジェーソン・プライド氏は、会社として株式をアンダーウエートにするとともに、現金と短期債への資金配分を通常より大きくしていると明かす。「(株式市場が)当面は問題含みになり、恐らくは高水準のバリュエーションを正当化できないほど、金利はまだ高いし、金融環境も引き締まっている」と強調した。
押し目での株買い増しを推奨するトゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー共同最高投資責任者は、最近の株価高騰で「ポジティブサプライズが起こるハードルが高くなった」と警告し、米株はここで一息つくのが全く正常な姿だろうとの見方を示した。
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