焦点:「身売り検討」で変わるツイッター、取締役会の裁量消滅
ロイター / 2022年4月20日 18時23分
4月19日、ツイッターの取締役会は今の状況なら、米電気自動車(EV)大手・テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が提案した買収を拒絶する理由として、マスク氏の傘下に入ったツイッターがどんな姿になるか懸念される点を挙げることができる。2013年9月撮影(2022年 ロイター/Kacper Pempel)
[19日 ロイター] - ツイッターの取締役会は今の状況なら、米電気自動車(EV)大手・テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が提案した買収を拒絶する理由として、マスク氏の傘下に入ったツイッターがどんな姿になるか懸念される点を挙げることができる。
しかし、ツイッター側がいったん身売りの検討を決めてしまえば、買収を受け入れるかどうかは価格が絶対的な基準となり、他のあらゆる要素は考慮されなくなる。企業統治の専門家からは、こうした見方が聞かれた。
ツイッターは先週、マスク氏から総額430億ドルの「最善かつ最終的」な買収提案を受け取り、現在も検討中。同氏はかねてより、ツイッターを「言論の自由を享受できる領域」にしたいと発言してきた。これはツイッターの検閲制度に不満を抱える人々から拍手喝采される一方、ヘイトスピーチやいじめを心配する向きの警戒感を誘っている。
事情に詳しい関係者の話では、ツイッターの取締役会は第1・四半期決算を発表する28日までにマスク氏の提案をはねつける見通し。
その根拠は金額の低さだ。もっともツイッターのアドバイザーを務める銀行が提示額は妥当と宣言したとしても、取締役会には幅広い裁量権があるので、現在のコンテンツ運用戦略の方がうまくゆくと考えれば、それを理由に提案を拒否することは可能だ、と企業統治専門の弁護士や大学教授らは指摘する。
ところが、ツイッターの取締役会が、より多くの買収提案を受けるか、積極的に提案を募るかして身売りを模索すると決めたとなれば、事情は一変してしまう。
ツイッターが登記上の本社としているデラウェア州の企業法は、いざ身売りの手続きに入った場合、企業が株主にとって一番妙味があるディールを取りまとめることを何より優先するよう命じている。
つまり取締役会は、既存株主が現金を手にできるのなら、自分の会社に何が起ころうが、それらを判断材料に加えることは許されない。
テュレーン大学法科大学院のアン・リプトン教授は「企業文化、情報開示、民主主義といった要素は全て消え去る。なぜなら、これらはもはや株主の利益にならないからだ」と述べた。
現時点では、ツイッターに対するマスク氏の提案が非友好的であることから、取締役会には大幅な対応余地が与えられている。
ボストン・カレッジ法科大学院のブライアン・クイン教授によると、現行のコンテンツ運営と企業文化の方が、株主にとって長期的な利益になると取締役会が判断すれば、マスク氏との協議を拒める。「マスク氏がツイッターを言論の自由とは名ばかりのおぞましい状態にしてしまうと考えるなら、それは(買収拒否の)十分な正当性を持つ」という。
実際にツイッターが身売りに動くかどうかは、近いうちに魅力的で信頼できる買収提案を受けられるかどうか次第になりそうだ。
複数の関係者は、プライベートエクイティ(PE)のトーマ・ブラボーが先週、マスク氏に対抗する買収提案の策定に意欲を示したが、具体的な話になるかは、まだ分からないと述べた。別のいくつかの投資会社も、ツイッターに接触して買収に関心があると伝えたとされる。
<株主の反発も>
同じソーシャルメディアのスナップや、フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズと違って、ツイッターは創業者が経営を支配しているわけではない。
こうした創業者の場合、たとえ魅力的な買収提案が出てきても、いわゆる「種類株」の保有を通じて、それを一存で拒否できるだけの議決権を確保している。
一方、ツイッターは先週、「ポイズンピル(毒薬条項)」を導入し、9%の株式を握るマスク氏が取締役会との協議なしで持ち分を15%以上に増やすのを阻止する制度を設けた。
ツイッターは、新しい所有者の下でも存続できるようなプラットフォームのコンテンツ監視作業を統括する仕組みも立ち上げていない。例えば、ユーザーがアカウントの凍結や停止に異議を申し立てることはできるが、ツイッター側の決定を第三者が審査して仲裁に入る手続きは存在しない。
対照的にメタは、コンテンツの削除や凍結について、ユーザーからの不服を受け付け、適切な対応をする独立的な「監督委員会」が存在し、同委員会の決定には拘束力がある。
ツイッターが今後も身売りを検討しなければ、マスク氏を含めた一部の株主から反発を受けてもおかしくない。マスク氏は、ツイッターの株主が取締役会の意向に関係なく発言できるようにしたいとの意見を表明しており、来年の株主総会で自身が指名した取締役候補を選出するよう迫る可能性がある。これが実現すれば、身売りを強制するだろう。
(Tom Hals記者、Jessica DiNapoli記者)
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