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アングル:日銀点検、焦点のETF柔軟化 打ち出し方に配慮か

ロイター / 2021年1月21日 18時45分

 日銀が3月に結果を公表する金融緩和策の点検は「効果」と「持続性」がキーワードで、市場では上場投資信託(ETF)買い入れの柔軟化を予想する向きが多い。写真は都内の日銀本店で2016年9月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 21日 ロイター] - 日銀が3月に結果を公表する金融緩和策の点検は「効果」と「持続性」がキーワードで、市場では上場投資信託(ETF)買い入れの柔軟化を予想する向きが多い。日銀からも「柔軟な調整の余地を探るべき」との声が出ており、その内容について憶測が出ている。公表のタイミングが多くの企業の年度末に当たることもあり、日銀内では市場へインパクトを与えないように、打ち出し方に神経を使う様子もうかがえる。

「ETF買い入れの柔軟化とは、日銀にとって買い入れを続けやすくすること。いたずらに残高を増やしたくはないが、市場の期待も裏切りたくはない。それが自縄自縛になっている」。日銀の置かれている状況を、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストはこう指摘する。

日銀の昨年末時点の通常ETF購入額は累計34兆0495億円(約定ベース)。ニッセイ基礎研究所が試算した11月末時点での時価は45兆円強で、同時期の東証1部時価総額661兆円に対し7%近くを日銀が実質的に保有する計算となる。

日銀の存在感の高まりが、市場の株価形成を歪め、企業のコーポレートガバナンスに悪影響をもたらすとの懸念や、株価に調整が入った場合は日銀の財務が悪化して最終的に国民負担となる可能性も指摘されてきた。さらに、直近の株高で日経平均が30年ぶりの高値となる中、この水準でも買い続けるのかといった指摘も増えている。

日銀内のボードメンバーからも資産買い入れの持続性について問題意識が示されている。点検実施を決めた昨年12月の決定会合で、ETFについて「金融緩和が長期化する中、財務の安定性にも配意し、市場の状況に応じた柔軟な調整の余地を探るべき」と指摘があったことが、公表された「主な意見」で明らかになっている。

黒田総裁は21日の決定会合後の会見で、点検のポイントについて、政策の副作用をできるだけ抑えながら費用対効果の面でより効果的に運営すること、持続性を高めるとともに状況変化に対して機動的に対応できるようにしておくことが必要だと指摘。「よりメリハリをつけた運用を行うことが考えられる」と述べた。

<ジェット機と日銀>

日銀はETFの年間買い入れ目標を原則約6兆円とし、コロナ下の時限措置として昨年3月から上限12兆円に拡大している。

日銀ウオッチャーからは「原則約6兆円を撤廃し、年間12兆円の上限を残すことで、株価が下落トレンドに入った際にのみ積極的に購入するのがより効果的」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)といった指摘や、「ETF買い入れを数字目標ではなく、単に潤沢に買い入れるとかそういった裁量の余地の大きいものに組み替えてくるのではないか」(住友生命の武藤弘明エコノミスト)といった見方が出ている。

こうした中、日銀からは、自ら株価調整のきっかけを作ってしまうことは避けたい、緩和の後退ではないという印象を与えたいという思いがにじむ。いったん緩和規模を縮小させると、さらに縮小が進むのではないかという思惑が市場で出てくる可能性があるためだ。

その思いを、日銀OBの熊野英生第一生命経済研究所首席エコノミストは、ジャンボ・ジェット機に例える。「空港の大型ジェット機は、トーイングカーと言われる牽引車によって前後に動かされている。エンジンを逆噴射しても後退できるが、それをすると後ろが危険。日銀も逆噴射(緩和縮小)が危険だと思われているので、容易に後ろに下がれない」という。

熊野氏は「前進しかできない部分を見直し、いったん後退することによって将来の緩和の余地を残すというような説明すれば、市場にも一定の理解を得られるのではないか」と話す。

<リスクプレミアム>

黒田総裁は21日の会見で「各種施策が所期の効果を上げているかというのが重要な点検項目となる」とも明らかにした。日銀は、資産買い入れについて、リスクプレミアムを抑制することで消費者心理や企業経営者のマインドに影響を与え、経済を活性化することで2%の物価目標を達成するためのツールだと位置付けている。

ある関係筋は、株価を支えるためにやっているのではないため、リスクプレミアムに働きかけるという説明は変えないのではないかとの見方を示す。

<数字目標に触れない可能性>

今月4日、株式市場参加者の注目を集める出来事があった。日銀はETF購入額を501億円とし、前回12月30日の701億円から減額。資産購入の柔軟化のシグナルかとの声が上がった。

日経平均は12月30日から1月6日にかけて4日続落したものの、7日に反発。14日にかけて続伸し一時2万9000円近くまで上昇した。

3月は多くの日本企業が年度末。新型コロナの感染拡大が長引いている可能性もある。「500億円に減額しても市場が動揺していない。となれば、点検の結果、下手に数字目標をいじらなくてもいけるのではないかという感覚になるかもしれない」(国内証券)との声も聞かれる。

一方で数字目標を減額もしくは撤廃した場合は「日銀が株価の下支えと思っている海外投資家にインパクトがあるのではないか」(ファンドマネジャー)といった声もある。

黒田総裁が指摘した「よりメリハリをつけた運用」について、日銀の事情をよく知る関係者は「それをどのように文章に落とし込むかが大変だ」と話している。

(杉山健太郎 取材協力、木原麗花 和田崇彦 編集:石田仁志)

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