アングル:中国の公衆衛生改革、専門家は効果を疑問視 「検閲中止が必要」
ロイター / 2020年6月22日 17時5分
6月22日、中国政府は5月下旬、将来のウイルス感染拡大に備えて、同国の疾病対策センター(CDC)の権限を強化する改革を打ち出したが、国内外の一部の専門家からは、効果は限定的ではないかとの声が出ている。写真は北京で21日撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)
[上海 19日 ロイター] - 中国政府は5月下旬、将来のウイルス感染拡大に備えて、同国の疾病対策センター(CDC)の権限を強化する改革を打ち出したが、国内外の一部の専門家からは、効果は限定的ではないかとの声が出ている。
新型コロナウイルスの流行を巡っては、情報隠蔽とソーシャルメディアの検閲が感染を広げる要因になったとの見方が多いが、今回の改革ではそうした問題に完全には対処できないという。
北京のCDCで副責任者を務めていたYangGonghuan氏は「(地方政府が)感染拡大に伴う社会不安を危惧することが中国の最大の問題だ」と指摘。「このため地方政府は、報道機関や(新型コロナにいち早く警鐘を鳴らし、その後感染により死亡した医師である)李文亮氏のような人物に情報を広めてほしくないと考える」と述べた。
新型コロナは1月初旬に初めて特定されたが、中国当局が湖北省武漢市を封鎖するまで16日かかった。国家衛生健康委員会の馬暁偉主任も今月、ウイルス対策で「一部の問題と欠点が露呈した」ことを認めたが、詳細には触れなかった。
中国政府は、こうした問題に対応するため全国で公衆衛生対策の調整を行うCDCの権限を強化し、CDCが迅速に感染症の発生を特定し、対処できる体制を整えると表明。CDCがこれまでよりも医療機関から情報を入手しやすくする体制を整備する方針も示した。
ただ、こうした一連の改革は、現時点では指針案にとどまっており、施行時期や予算などの詳細は不明。海外では改革に懐疑的な見方が浮上している。
米国のシンクタンク、外交問題評議会の公衆衛生専門家、YanzhongHuang氏は「重症急性呼吸器症候群(SARS)と新型コロナ感染症の感染拡大で非常にはっきりしたのは、政治的な問題と制度上の問題で政府の対応能力が低下したことだ」と述べた。
英国のサザンプトン大学は、武漢市があと2週間早く封鎖されていれば、最大で感染を95%減らせた可能性があると試算。医療専門家からはCDCの独立性をさらに高めるべきだとの声が出ている。
清華大学の法学教授で中国政府のコロナ対策諮問委員会のメンバーを務めたWangChenguang氏は「感染情報を入手したCDCが、独立した客観的な調査を実施できる体制を整える必要がある」と主張。
同氏によると、CDCは2002-03年のSARS流行後に強化されたが、時間の経過とともに地方政府が油断するようになり、CDCを軽視する風潮が強まった。
中国政府はSARS流行後に、感染情報を迅速に公開するため、オンラインのリアルタイム報告システムも整備。2007年までに国内の病院・診療所のほぼすべてをカバーする体制を整えたが、こうした改革の多くも長続きせず、武漢市では今回の新型コロナの流行で、迅速な行動よりも情報隠蔽を優先するという同じミスが繰りされた。
Huang氏は、情報公開の体制を改善し、地方政府による情報検閲を防ぐことが必要だと主張。内部告発者を処罰するのではなく保護する制度を確立し、ソーシャルメディアの検閲をやめるべきだと述べた。ソーシャルメディアでは、いち早く感染情報が流れることが多いという。
同氏は「技術の刷新やCDCの権限強化だけに専念するのではなく、こうした対策を講じれば、より大きな効果が期待できる」と述べた。
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