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焦点:核問題巡る米・イラン交渉、始まっても見えないゴール

ロイター / 2021年2月23日 8時3分

 2月21日、イランが核兵器を持たないようにするため、米国とイランの外交トップが2008年の夏に初めて会談し、その後に双方が15年のイラン核合意に調印するまで、7年の期間を要した。写真あ2015年7月、ウィーンで行われたイランの核を巡る交渉会場に置かれたイランと米国の国旗(2021年 ロイター/Carlos Barria)

[ワシントン 21日 ロイター] - イランが核兵器を持たないようにするため、米国とイランの外交トップが2008年の夏に初めて会談し、その後に双方が15年のイラン核合意に調印するまで、7年の期間を要した。

トランプ前米大統領が離脱を決めたイラン核合意に米国が復帰できる条件で、両国が合意できるかどうかがはっきりするまで、これほどに長い期間を要するとは誰も予想していない。だが、欧米の高官は、実際に交渉が始まっても道のりは長く、険しいと話している。

バイデン米政権は18日、イランの高官と会談して欧米など6カ国とイランが合意した包括的共同行動計画(JCPOA)へ復帰する道筋を探るため、イラン特使のロバート・マレー氏を派遣する用意があると表明した。

イラン政府の発するシグナルは当初、一貫していなかったが、ザリフ外相が21日に「米国が核合意に参加するなら、まず対イラン制裁を解除しなければならない」と述べ、強硬姿勢を示した。

核合意の最も重要な点は、欧米側が制裁を解除する見返りに、イランが核兵器開発につながるウラン濃縮を制限することにあった。イランは長い間、核兵器開発を否定してきた。

契約条件が110ページの本文と付属文書に明記された核合意をどのように復活させるか決めるのは、理論的には難しくない。

だが、実際には2つの理由で交渉は難航しそうだ。その1つはトランプ前大統領が18年5月に核合意から離脱後に科した多数の対イラン制裁。もう1つは、その1年余り後にイランが報復として合意に違反して取った措置にある。

これまでのところ両国とも公式には、再合意に向けてどちらが先に動くかという問題に重点を置いており、いずれも相手側が先だと主張している。

米高官はロイターに、順序の問題は巧妙な策により解決可能で「最も難しい問題ではない」と指摘。それよりも米国のどの制裁が解除されるか、イランが取った措置が撤回できるかが問題だ、との見方を示した。

<絡み合う課題>

英国、中国、フランス、ドイツ、ロシア、米国の6カ国とイランが合意したJCPOAは米国に対し、イランについて「核関連の」制裁のみを解除するよう求めている。

トランプ氏は核合意から離脱後、イランのテロ支援疑惑を含む他の分野にも多数の新たな制裁を科した。

バイデン氏がこれらの制裁を解除するよう求めるイランの要求に応じるのは、政治的に緊迫した状態を招き、不可能かもしれないと専門家は見ている。共和党から批判を受けるだけでなく、恐らく民主党の一部からも反対の声が出ると予想されるためだ。

ユーラシア・グループのヘンリー・ローム氏は「これら(の対イラン制裁)はテロ対策権限の下で極めて意図的に導入されており、米国にとって非常に政治的な問題だ」と指摘。「双方の交渉チームは、何を残して何を解除するかを決める、広範なプロセスを踏む必要がある」と述べた。

もう1つの難題は、米軍を攻撃したと疑われる勢力を含む中東の代理勢力にイランが支援を行っている点だ。イラク北部アルビルでは15日、米軍などが駐留する基地近くにロケット攻撃が行われ、米軍に出入りする民間業者1人が死亡、米軍兵士1人が負傷した。これにより米政府がイランに譲歩案を提示するのは一段と難しくなった。

イランによる米国人拘束も問題をさらに複雑にしている。米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は21日、イランで拘束されている複数の米国人の解放に向けて、イラン当局者と話し合いを始めたと明らかにした。

JCPOAに違反してイランが取った措置のうち、核合意で定められた濃縮度3.67%の上限を超えたウラン濃縮や、濃縮度の低いウランの備蓄などは撤回できるかもしれないが、元に戻せないものもありそうだ。例えば、イランがウランを核兵器級の濃縮度90%にまで濃縮するのに役立つ高性能遠心分離機の研究開発から集めた専門知識などがそうだ。

ブルッキングス研究所のロバート・アインホーン氏は「彼らがいったん獲得した知識をどのように失わせることができるだろうか」と述べた。

今年6月にイランの大統領選を控え、同国の当局者はバイデン政権から何らかの案が提示された場合に、どのように応じるかで微妙な選択を迫られる。大統領選の結果は、経済的苦境への不満が広がる中で、政権への信任投票になりそうだ。

イランは米国による制裁と新型コロナウイルスの大流行で経済が悪化しており、政権幹部には米国と交渉する以外の選択肢はほとんど残されていない。最終的な決定は、最高指導者ハメネイ師の判断に委ねられる。

しかし、両国が交渉のテーブルに戻れるかどうかさえ、依然として不透明だ。

イランは国際原子力機関(IAEA)の抜き打ち査察の受け入れを23日から停止するなど、核合意を順守しない姿勢をさらに強めている。

専門家は、こうしたイランの姿勢は必ずしも交渉の可能性をなくすものではないが、交渉を一段と難しくすると見ている。フランスの外交筋は「何もかも予断を許さない状況にあり、事態は向こう数日でさらに危うくなる恐れがある」と指摘。「外交関係を早急に復活させることが重要だ」と述べた。

(Arshad Mohammed記者、Humeyra Pamuk記者)

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