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シリア、アサド政権崩壊で流動化=戦況混迷、収拾めど立たず―存在感高めるトルコ

時事通信 / 2024年12月10日 15時2分

 【イスタンブール時事】シリアのアサド政権崩壊を受け、政権側優位でこう着していた戦況が再び動き始めている。政権を打倒した反体制派の攻勢をきっかけに、国内各地で勢力を競い合う武装組織や関係当事国が活動を活発化。それぞれの思惑が交錯して内戦の構図が流動化し、混乱収拾の見通しは立たない。

 「シャーム解放機構」(HTS)を主力とする反体制派は、政権に押しとどめられていた北西部イドリブ県の拠点から一気に進軍し、わずか12日で国土の中枢部を掌握した。HTSや連携する勢力が、今後の権力移譲プロセスを主導するとみられる。ただ、過激なイスラム主義から穏健路線への転換を強調するものの、全容が不透明な統治手法に警戒が強まる可能性もある。

 存在感が高まっているのは、反体制派と関係が深い隣国トルコだ。HTSをテロ組織に指定しているが、エルドアン大統領は進攻を非難せず容認した。エルドアン氏はかねて、シリア国境から約30キロの「安全地帯」を東西約450キロに及ぶ地域に設け、シリア難民を帰還させると主張。このため、国境地帯からシリア北東部までを実効支配するクルド人主体の「シリア民主軍」(SDF)と対立している。

 トルコと緊密な別の反体制派組織「シリア国民軍」(SNA)は、攻勢に乗じる形でシリア北部テルリファトやマンビジュなどクルド系が掌握していた都市を次々と制圧。さらに攻勢を強めるとみられる。

 SDFは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討の一環で、米国の支援を受けてきた。SDFもアサド政権に対抗して政権支配地の一部へ進攻したが、クルド系を敵視するトルコには劣勢だ。中東への関与を嫌うトランプ次期米政権下でSDFへの支援が細れば、苦境に陥りかねない。

 米国はシリア国内のIS討伐を重視。バイデン大統領は8日、約900人の米軍駐留を継続する意向を示した。しかし、反体制派については「今は正しいことを言っているが、言葉だけでなく行動で判断する」と述べ、関与の是非を見極める構えだ。

 一方、アサド大統領を支えたロシアやイランは今後、影響力の低下が避けられない。アサド氏亡命を受け入れたロシアにとっては、地中海沿岸のシリア北西部にあるロシア軍基地の維持が死活問題。イランも「国の将来を決めるのはシリア国民」(ペゼシュキアン大統領)として、連帯していたアサド氏と距離を置き始めた。両国とも反体制派との関係構築や足場の確保を模索しているもようだ。 

[時事通信社]

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