警察、大統領府を強制捜査＝検察は前国防相逮捕―韓国

　【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」の宣言を巡り、警察は１１日、大統領府など関係先の家宅捜索に着手した。聯合ニュースが伝えた。令状には尹氏が捜査対象と明記され、刑事責任追及が本格化した。

　警察は、警察庁やソウル警察庁なども家宅捜索。組織トップの趙志浩警察庁長官とソウル警察庁トップの金峰埴長官を内乱容疑で緊急逮捕した。警察は検察とは別に、戒厳を巡る捜査を進めている。政府高官らの不正を扱う「高位公職者犯罪捜査庁（公捜庁）」も、尹氏を捜査している。

　検察は１０日、尹氏の側近で戒厳令を出すよう助言したとされ、８日に令状なしで緊急逮捕された金龍顕前国防相について、内乱と職権乱用の容疑で逮捕した。事件を巡る逮捕は初めて。金前国防相は１０日夜に拘置所で自殺を試みたが、すぐに制止された。命に別条はないという。

　３日の戒厳令に関する一連の動きについて、検察は憲法秩序の破壊を目的とする暴動だった疑いがあると見なし、金前国防相の逮捕状には内乱容疑の「重要任務従事者」と明記された。内乱罪は処罰対象を首謀者と重要任務従事者、同調者の３段階で規定。検察は、尹氏を金前国防相と共謀した「首謀者」と位置付けた形だ。

　刑法は憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした場合に内乱罪を適用し、死刑または無期懲役などを科すと定める。内乱罪は大統領が在職中に訴追を免れる「不訴追特権」の例外に当たる。

　戒厳軍は金前国防相らの指示で国会に進入し、非常戒厳を解除する決議が成立するのを防ごうとしたとされる。特殊戦司令官は１０日の国会審議で、尹氏から電話で「扉を壊して議員を引きずり出せ」と直接指示されていたと証言した。　

［時事通信社］