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アングル:中国「開き直り」戦略か、コロナ起源や人権で猛反発

ロイター / 2021年8月24日 18時55分

 8月20日、 常にけんか腰な中国外務省の趙立堅報道副局長(写真)は昨年5月、新型コロナウイルスの震源地となった武漢市にウイルスを持ち込んだのは米軍の運動選手だとの見方を示唆し、米政府を激怒させた。北京で開かれた記者会見で2020年9月撮影(2021年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

[北京/ジュネーブ 20日 ロイター] - 常にけんか腰な中国外務省の趙立堅報道副局長は昨年5月、新型コロナウイルスの震源地となった武漢市にウイルスを持ち込んだのは米軍の運動選手だとの見方を示唆し、米政府を激怒させた。その際、中国政府内で趙氏を支持する発言をした当局者は誰もいなかった。

ところが14カ月たった今、趙氏がこの考えを再び持ち出すと、上司である外務省報道局長の華春瑩氏や共産党機関紙などが早速援護射撃を繰り出した。米政府に対し、この運動選手の「データ公表」や、メリーランド州フォート・デトリックにある米軍関連研究施設を調査のために公開するよう求めた。

新型コロナの起源について科学者の間で主流となっているのは、中国国内で発生した公算が大きく、恐らく野生動物の取引を介して広がったという見方だ。最近では武漢ウイルス研究所から流出したとの説も勢いを増している。

こうした中で、あえて中国が確たる証拠がない「米国起源説」を蒸し返したのは、コロナウイルスから人権まで中国に向けられるさまざまな批判の矛先をそらし、逆に西側諸国を人権問題などで猛攻撃する取り組みを急速に活発化させているという背景がある、と専門家や外交官は指摘する。中国国内で人気を得ているこの戦略は、もはや政府が西側諸国との関係改善をあきらめたと開き直っている可能性の表れではないかという。

米国ジャーマン・マーシャル・ファンドのアジア専門家、ボニー・グレーザー氏は「中国は世界に向けて、自国の利益を守ると触れ回っている。きっと国内の評判は良いはずだ」と述べた。

グレーザー氏は、中国がこのやり方で外交的にどんな成果を達成したいのかは分からないとしつつ、「多分米国に非常にはっきりしたシグナル、つまり『あなた方の手法は効いていませんよ。別の手を試しなさい』と発信したいのかもしれない」とみている。

華春瑩氏は20日、中国の戦略について問われると、互いに敬意を払うという条件ならば米国をはじめどの国とも友好関係を推進したいと発言。ただ米国が中国を「中傷」している問題に触れて、「われわれがにっこり笑ってそれに耐え、まるでおとなしい羊のように一切反撃してはならないと言うのか。そうは思わない」とくぎを刺した。

バイデン米大統領は1月の就任からこれまで、おおむねトランプ前政権の対中強硬路線を引き継ぎ、米中高官レベルの協議はほとんど進展がないどころか、双方の感情を害する場になっている。

3月にアラスカで行われた高官会談では、中国側が米国の外交政策とマイノリティの扱いを公然と非難。米国側が「これ見よがしの行動」だと評してあきれかえる場面があった。先月の天津における協議でも、両国は互いに相手の要求を聞くだけで話し合いに応じる気配は見えず、中国は米国が「想像上の敵」を生み出しているとかみついた。

<お前が言うな>

中国は、米議会の共和党議員だけでなく米情報機関の間でも支持されている新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から流出したとの説を、一笑に付している。その代わりに展開しているのが、2019年にフォート・デトリックの米軍関連研究施設からウイルスが流出したという主張だ。

また新疆ウイグル自治区におけるジェノサイド(民族大量虐殺)が行われているとの批判に対しては、米国で広がった人種差別に抗議する「黒人の命も大切だ」運動を引き合いに反撃している。

ロイターの分析によると、中国の外交官が公式の場で人権とフォート・デトリックの施設に言及する回数が増加しており、西側諸国に批判する資格などなく、自分たちが抱えている問題こそ調査すべきだというメッセージを拡散させている様子がうかがえる。

習近平国家主席が5月、中国は国際世論への働き掛けに「奮闘」しながら、より「愛される」国家を目指すと発言したことで、一部の専門家は融和姿勢が強まるのではないかと期待したが、同氏の外交はむしろ威圧感が増すばかりだ。

グレーザー氏は、最近の中国の外交は「お前が言うな」式の論法で、ほかにもっと有効な手だてがないのでそれで強行突破しているとの見方を示した。

この流れで中国国内では、世界保健機関(WHO)にフォート・デトリックの施設の調査を要望する書簡に2500万人余りが署名。コメントを求められたWHOは、新型コロナの起源に関して「あらゆる政府が状況を非政治化する」よう促す声明に改めて触れた。安全性を巡る懸念から19年8月に一時閉鎖されたフォート・デトリックの施設は今回の取材に回答しなかったが、これまで米メディアにウイルス流出はなかったと伝えている。

ジュネーブのある西側外交官は、国連人権理事会での中国の姿勢も180度変わったと話す。伝統的に「名指しで恥をかかす」やり方に反対を唱えてきたが、今年に入って積極的にそうした手法を駆使し始めたという。

この外交官は、多分に中国国内の世論を意識し、強気姿勢をアピールしているのだろうが、これまでと別の言い回しで国際的な支持を広げようとしている気配も見て取れるとしている。

一方、複数の西側外交官からは、中国の攻撃的な態度は逆効果であり、どこに向かってメッセージを送っているのかいまひとつ分からないと疑問の声が聞かれる。ジュネーブ駐在外交官の1人は「手当たり次第の攻撃だった。(逆に)非常に防衛的で、反射的だった」とロイターに語った。

(Gabriel Crossley and Stephanie Nebehay記者)

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