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アングル:新型ウイルスの経済的影響、ヘッジファンドは独自手法で分析

ロイター / 2020年2月25日 12時21分

 新型肺炎の拡大によって中国経済が受ける打撃をさまざまな投資家が試算しつつある中で、ヘッジファンドマネジャーのポラチェク氏は、山東省威海市の近海に停泊している貨物船の行方を、今後の情勢を占う重要な手掛かりとしている。写真は北京で16日撮影(2020年 ロイター)

[ニューヨーク 18日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染による肺炎の拡大によって中国経済が受ける打撃をさまざまな投資家が試算しつつある中で、ヘッジファンドマネジャーのナタニエル・ポラチェク氏は、中国山東省威海市の近海に停泊している貨物船の行方を、今後の情勢を占う重要な手掛かりとしている。

この船が積んでいるのは約750トンの鉛精鉱で、ポラチェク氏率いるニューヨークのコモディティ・アセット・マネジメントが、ギリシャで購入して中国本土に輸出しようとしていた品物。感染拡大に伴って中国国内の工場が操業を一時停止し、経済の幅広い分野で活動がほぼ止まったことから、貨物船は何週間も威海市の港に入れずにいる。

同港は中国の主要工業地帯へのアクセスポイントの1つで、幾つかの金属精錬施設が集まっている。そこでポラチェク氏は、もし貨物船の威海市への入港が許可されれば、経済活動がようやく上向いてきたというシグナルになるとみている。

ポラチェク氏は「エア・クオリティ・インデックス」というサイトで毎日、中国の主要工業地帯の大気汚染度もチェックしている。汚染度が上がってくれば企業活動の活発化を示すサインとして、やはり経済の先行きにとっては心強い材料と言える。

同氏は「最高の(先行)指標は実物の世界からもたらされる。各種素材が船から陸揚げされるまでに、また私がそれによって代金を得るまでに一体どれぐらい時間がかかるかを見定めたい」と話した。

<中国の公式発表を当てにせず>

新型ウイルスの感染状況やそれが経済に及ぼす影響を、投資家がこうした独自の手法で判断しようとする動きが出ている背景には、中国政府の公式発表は当てにならないとの不信感がある。使われるのは人工知能(AI)やコンピューターのモデル分析から、単純な口頭の情報まで多岐にわたる。

チャイナ・ベージュブック・インターナショナルのリランド・ミラー社長は、中国政府から聞いた話を投資家は信じていないと指摘する。同社は、中国の景況を把握するため定期的に国内数千社に聞き取り調査をしている。

中国政府は、新型ウイルスへの取り組みは妥当だとし、初期対応における情報開示が不十分だったとの見方を否定。公表した最新データでは、新たに感染した人が減少してきたことが示された。ただ世界保健機関(WHO)は17日、感染状況に関しては依然として「全てのシナリオが検討対象になっている」とくぎを刺した。

一方で経済的なコストは膨れ上がり始めている。米アップルが1-3月売上高見通しを達成できないと明らかにしたのが直近の具体例だ。

ヘッジファンドや年金基金など運用資産最大1000億ドルクラスの機関投資家が名を連ねるミラー氏の多くの顧客も、足元で過去最高値圏にある株価になお上昇余地があるとの見方を維持しながらも、新型ウイルスの感染拡大が世界経済成長に壊滅的な打撃を及ぼす事態が起きることへの不安を消せないでいる。

ミラー氏は「誰もが、大きなリスクを織り込んでいないとの認識を持っている」と打ち明けた。

チャイナ・ベージュブックは次の調査で、回答企業の従業員が自宅から仕事に復帰したか、在宅勤務を続けているかなど、「地域封鎖」の影響を質問項目に追加する意向だ。

中国経済に対して長年懐疑的だった、デンバーを拠点とするクレスキャット・キャピタル創業者のケビン・スミス氏は、中国国内の顧客からの情報を集めた結果、中国株への弱気姿勢を強めている。顧客らは、ウイルス感染源の武漢市における数々の惨状を報告してきたという。

2014年以降ずっと人民元売りに賭けてきたスミス氏は「中国にはもうこれ以上不可能なほど弱気になっている。だが新型コロナウイルスの問題が経済悪化のきっかけになるとますます確信している」と述べた。

感染が深刻な地域における火葬場の動きから、本当の死者数を探ろうとしているのはオレゴン州ポートランドのリーダー・キャピタルのジョン・レカス最高経営責任者(CEO)兼シニア・ポートフォリオマネジャーだ。同氏は、もう少し平凡な尺度として、ジョンズ・ホプキンス大のセンター・フォー・ヘルス・セキュリティーがまとめているデータも活用している。このデータで新規感染者数と回復者数が等しくなれば、感染拡大が峠を越えたというのが同氏の見立てで、自ら計算したところではそうした時期が3月初めに到来する。

もっともこれまでのところ同氏が運用する4億5000万ドル規模のファンドは、資金等逃避先として人気がある米国債の購入を続けている。

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