半導体不足が世界経済のリスクに、年内の解消難しい=中村日銀委員
ロイター / 2021年8月25日 15時55分
[東京 25日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は25日午後、宮崎県金融経済懇談会後の記者会見で、半導体不足が世界経済の回復にとってのリスク要因のひとつになってきたと指摘した。新型コロナウイルスワクチン接種の進展と医療体制の強化が進めば問題は解消すると見込みつつも、今年中に半導体不足が解消に至るのは難しいとの見方を示した。
日立製作所出身の中村委員は「東南アジアの工場が稼働停止となると半導体のチップができない。コロナの影響で操業が止まると(供給不足が)長引く可能性がある」と述べた。
<経済底割れは回避か>
足元の感染急拡大について、中村委員は「7月の決定会合時の想定を上回っている」と指摘。緊急事態宣言の延長・地域拡大で、経済の下押し圧力は当面続くとの見通しを示した。ただ、ワクチン接種が増え医療体制の強化ができれば経済は回復に向かうと予想し、「景気の下振れは注意しなければいけないが、底割れにはならないとみている」と述べた。
中村委員は午前のあいさつで、コロナ感染の再拡大でサービス消費のペントアップ需要が高まる時期が後ずれしたとの見方を示した。会見では、需要が高まるのは当初は夏休みと見込んでいたが、それが年末年始か春休みに後ずれすると予想した。医療体制が強化され、人々に安心感が出てくることが重要だとの見方を示した。
<気候変動対応とデジタル化>
中村委員は午前のあいさつで、2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて「巨額の民間投資が持続的に実行・回収されるエコシステムの構築が重要だ」と指摘し、気候変動オペを重要な一歩として各種施策について不断に検討を重ねていく必要があると述べていた。
記者会見では、気候変動対応と中銀のマンデート(使命)の関係について「(気候変動で)累積した問題が相当大きくなっている。物価の安定もマクロ経済の安定も影響を大きく受けるだろう」とし、中銀のマンデートとも密接に関係していると説明した。
グリーンボンドを金融政策で優遇して買い入れるべきかとの質問には「将来的にタクソノミ(分類法)ができてくれば可能ではないか」との見方を示した。
一方、企業のデジタル化は事業戦略によって企業ごとに異なると指摘。「企業の経営戦略の問題に金融政策で対応するというのはかなり違う」と話した。
(和田崇彦 編集:田中志保)
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