アングル:香港国家安全法、米企業は政権に慎重対応要請 流出リスクも
ロイター / 2020年5月28日 17時48分
香港の「国家安全法」を巡る米中の緊張が高まっているが、米国の経済団体からは、米政府が香港に対する優遇措置を撤回すれば、香港と香港の住民に悪影響が及ぶとして、トランプ大統領に慎重な対応を求める声が出ている。写真は香港で24日撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)
[ワシントン 27日 ロイター] - 香港の「国家安全法」を巡る米中の緊張が高まっているが、米国の経済団体からは、米政府が香港に対する優遇措置を撤回すれば、香港と香港の住民に悪影響が及ぶとして、トランプ大統領に慎重な対応を求める声が出ている。
ポンペオ米国務長官は27日、中国政府が香港への統制を強化する国家安全法を制定する方針であることを受け、香港に対し米国内法に基づく優遇措置を認められないと議会に報告したことを明らかにした。
関係筋によると、トランプ政権は香港からの輸入品に適用している優遇関税措置の停止を検討。香港国家安全法の執行に関与した中国の当局者や政府機関、企業などに制裁を科す可能性もあるという。
香港では米国企業1300社が事業を展開。8万5000人の米国人が生活している。
米中ビジネス協議会のクレイグ・アレン会長は「(国家安全法の)文面はまだ公表されていない。文言が重要だ」と指摘。「香港の一国二制度は長年にわたりすべての人に恩恵を与えてきた」とし、関係国・地域が「緊張を緩和し、一国二制度を維持する」ことを望むと述べた。
米商工会議所は26日、香港が魅力的な投資先かつ金融の中心地という役割を果たす上で不可欠である特別な地位を損なうことは「重大な過ち」と強調した。
戦略国際問題研究所(ワシントン)の上級顧問で中国専門家のスコット・ケネディ氏は、ポンペオ長官の議会への報告について、米政府には慎重に行動する余地が残されていると指摘。早急に動けば香港が打撃を受け、米政府の中国に対する影響力が低下するとの見方を示した。
同氏は「(長官の報告で)大きな変化を起こす道が開けたが、米国はまだ、この道を歩み始めてはいない」とし「市場が動揺し、企業が様々な代替策を検討する可能性はあるが、必ずしも米国が直ちに動くとは限らない」と述べた。
<少しずつ流出>
香港では、昨年の抗議デモを受けて、一部の金融機関が香港業務の拡大を中止し、他のアジアの金融センターに人員を移した。
リスク管理会社やコンサルティング会社は、香港の法的な位置づけが変われば、こうした傾向が加速する可能性があると指摘している。
ユーラシア・グループの米国部門ディレクター、トッド・マリアーノ氏は「すでに企業の流出プロセスが少しずつ始まっていると思う。国家安全法が公布されれば、そうした流れが一気に加速する」との見方を示した。
コントロール・リスクス・グループのアジア太平洋部門パートナー、デイン・チャモロ氏は、香港からの流出が拡大するかどうかは、国家安全法で香港のビジネス法の枠組みと自由な資本移動が維持されるかどうかに左右されると指摘する。
特に契約が守られるかどうか、労働法規制が一貫しているか、規制が予測可能かが重要なポイントになるという。
民間会社で調査員を務め、中国で2年近く拘束された経験があるハーバード大学フェアバンク中国研究センターの外部研究員ピーター・ハンフリー氏は、中国の治安部隊が権限を掌握する「突然の事態」に備えている企業はほとんどないと指摘。
「以前よりもはるかに介入を受けるリスクが高まっている」とし、香港の外資系企業は、迅速に業務を停止できるような計画を持つことが必要で、特に機密情報を扱う企業に求められるとの認識を示した。
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