情報BOX:中国が香港国家安全法制定へ、論点と今後の課題
ロイター / 2020年5月29日 15時39分
5月28日、中国全国人民代表大会(全人代)は、「香港国家安全法」の制定方針を採択した。香港国家安全法は、香港の分離や政権転覆、テロリズム、外国からの介入を阻止することを目的とする。北京で撮影(2020年 ロイター/Tingshu Wang)
[香港 29日 ロイター] - 中国全国人民代表大会(全人代)は28日、「香港国家安全法」の制定方針を採択した。香港国家安全法は、香港の分離や政権転覆、テロリズム、外国からの介入を阻止することを目的とする。
これにより香港は転機を迎える。中国共産党による統制が強まれば、高度な自治と独立した法制度を備えた金融ハブという評価が侵害されるとみられるためだ。
米国は敏感に反応した。ポンペオ米国務長官は27日、米議会に対し、香港にはもはや米国内法に基づく優遇措置は認められないと報告。国際金融センターとしての地位が揺らぐ可能性が出てきた。
◎中国の狙い
統制および治安維持の強化。ここ数年間、香港の治安体制は軟弱だとして、中国当局は不満や不快感を表明してきた。
特に昨年、「逃亡犯条例」を巡り大規模かつ時に暴力行為も伴う抗議運動が起きたことは、こうした中国のいら立ちを増大させ、中国が自ら乗り出してテロリズムの脅威や分離独立運動、外国勢力による干渉と定義する行動を抑止しようとする動きにつながった。
◎次のステップ
香港立法会の審議を迂回して香港基本法(憲法に相当)に組み込まれることになる。詳細な立法作業は今後数週間内に行われ、9月までに成立する見通し。
基本法は、香港政府が自ら国家分裂などを禁じる法律を制定する必要があると定めているが、中国は、香港政府がそれを実現できなかったとしている。
◎不明瞭な点
香港の法律家は、その規定が実際にどのように施行されるかについて困惑している。
既に香港基本法にある保護規定は全て適用されるのか、香港で設立された本土当局の出先機関は強制執行力を持つのか、などが疑問視されている。
もう1つの疑問点は、全人代の常任委員会が、国家安全保障を巡る事案について、香港司法の判断を最終的に超越する力を持つかどうか。
中国は「国家安全保護のため」、情報機関が中国に出先機関を設立する権限を持つとの見解を表明している。ただ、最も重要な懸念である、それが実際に強制執行力を伴った活動を行うかどうかはまだ不明だ。
◎なぜ今なのか?
この問題は、2047年まで香港に高度な自治などを保障する「一国二制度」の根幹をなしている。
香港の自由は、中央政府と香港特別行政区の関係を定めた香港基本法によって保護されている。
ただしその23条は、香港政府が「自ら」国家分裂や政権転覆などを禁じる法律を制定しなければならないとしている。香港政府は2003年に立法を試みたが、参加者が50万人超となる大規模デモを招き、頓挫した経緯がある。
香港基本法はまた、その例外規定で、一部に中国政府に本土の法律を直接適用することを可能にしている。それには香港立法会が関連の条例案を通す手続きなどが必要となる。
香港の法律家や政治家は、これを「最終兵器」と呼ぶ。ただ複数の学識経験者は、これが23条に適用されるか疑問視している。
◎同様の法律は存在するか
存在する。英国は、国家から正式に離脱する動きである政権転覆と分離に関する部分を除き、23条の要素をおおむねカバーする多くの古い法律を残した。
ただ、ほとんどは数十年前の法律で、法律の専門家は香港の権利章典と基本法で自由な言論や集会が保護されていることを踏まえ、適用するのは難しいと指摘している。
◎物議を醸すか
可能性は高い。香港の抗議デモや分極化する政局を踏まえると、香港での立法手続きでさえ新たな取り組みは困難を伴うだろう。
国家安全法が制定されれば、政治的な議論が幅広く抑制されるとともに、強い主張を展開するメディアや豊かな芸術的伝統が抑圧されると多くの人が懸念している。
中国が法律制定を通じて独自の措置を講じようとすれば、パニックと混乱が生じ、人や資本の流出につながり、香港の国際金融ハブとしての役割が低下する恐れがあると専門家らは指摘する。
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