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インタビュー:東芝の例は特殊、日本企業全体の統治を示しておらず=遠藤・前金融庁長官

ロイター / 2021年6月29日 12時51分

 6月29日、遠藤俊英・前金融庁長官(写真)は、ロイターとのインタビューで、海外株主への圧力問題で揺れる東芝について、安全保障上重要な技術を持つ企業として外為法の指定を受けた「特殊性」があるとし、東芝問題を受けて日本企業全体のガバナンスがなっていないとみるのは妥当ではないとの認識を示した。都内で2020年7月撮影(2021年 時事通信)

和田崇彦、木原麗花

[東京 29日 ロイター] - 遠藤俊英・前金融庁長官は、ロイターとのインタビューで、海外株主への圧力問題で揺れる東芝について、安全保障上重要な技術を持つ企業として外為法の指定を受けた「特殊性」があるとし、東芝問題を受けて日本企業全体のガバナンスがなっていないとみるのは妥当ではないとの認識を示した。

一方、中央銀行デジタル通貨(CBDC)については、中国が発行に踏み切れば日本を含めた先進国も発行に動かざるを得ないとの見通しを示した。

<東芝に国がどう関わるかが問題>

原発事業を手掛ける東芝は、外為法で政府の重点審査の対象となる「コア業種」に指定されている。遠藤氏は、個別企業としての東芝のガバナンスに問題点はあるにせよ「(それを)日本の企業のガバナンス問題と敷衍(ふえん)できる話なのかは疑問」と指摘する。

「東芝が安全保障上重要な技術を持っているからこそ、外為法のようなもので指定して(アクティビストを)けん制している」とし、日本企業のガバナンスが問われているというよりも「安全保障上、重要な企業である東芝に対して、国がどのように関わり合うのかという問題ではないか」と述べた。

金融庁はコーポレートガバナンス・コードを策定するなど、上場企業の統治改革の旗振り役を担っている。遠藤氏は「経営の執行側と取締役会とのコミュニケーションが非常に重要だ。執行側が取締役会にすべて開示し、十分議論してもらおうという信頼関係がないと、取締役会ガバナンスは機能しない」と指摘した。

<デジタル分野の規制は必要最低限で>

デジタル分野の金融規制については「どこまでやるのが必要最低限の規制なのか、よくよく考えながらやらないといけない」と話した。巨額のハッキング被害発生で規制を強化するのは「簡単」だが、イノベーションを促す観点が不可欠との見方を示した。

投資対象として人気が急速に高まっているデジタル資産「NFT(非代替性トークン)」については、「ブロックチェーンの中でワン・アンド・オンリー(唯一無二)のものができてきた」と指摘。「NFTの中でさらに面白いものができるかもしれないし、他のところに実装されて社会的に面白いものができてくる可能性がある」と述べた。今後、新たな価値が生まれればデジタル通貨に換金されるとして、デジタル通貨の重要性を指摘した。

日銀は中銀デジタル通貨の実証実験を進めているが、現時点で発行計画はない。遠藤氏は「良くも悪しくも中国は無視できない」とし、中国がデジタル人民元を正式に発行した場合は「日本も含めて先進国はCBDCをどうするのかということについて、何らかの判断をせざるを得ない局面にいつかぶち当たるのではないか」と述べた。

<地銀向けの特別付利、当初は19年に発表予定>

遠藤氏は2018年から20年にかけて金融庁長官を務め、日銀と連携を深めた。

遠藤氏によると、日銀が今年3月から受付を始めた地域金融機関の経営効率化に向けた特別当座預金制度は、当初は19年に金融庁の政策パッケージに合わせて打ち出す予定だったという。日銀の事情で発表が遅れたが、金融庁が日銀とコミュニケーションを密にした結果、「マクロ経済政策を行ってきた日銀が、地域金融機関への付利というミクロの政策に踏み込もうと言ってくれた」と明らかにした。

日銀は7月の金融政策決定会合で、民間金融機関による気候変動に向けた取り組みを支援する新たな資金供給制度の骨子を決める予定。日銀は「グリーン」な経済活動の定義づけが国際的に定まっていないことなどを踏まえ、具体的な融資は民間金融機関の判断に委ねる方針だ。遠藤氏は「当局がすぐ横串を刺して尺度を作ろうとすると間違う。あまり当局が最初から規定しない方がいい」と述べ、日銀の方針に理解を示した。

インタビューは28日に実施しました。

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