インタビュー:コロナで需要減、環境やデジタル化対応を加速化=ENEOS社長
ロイター / 2020年8月31日 7時12分
ENEOSホールディングスの大田勝幸社長はロイターのインタビューに応じ、国内石油需要の回復には時間がかかるとし、製油所の再構築を含め、デジタル化や環境など、長期ビジョンで掲げた対応を加速化させる必要があるとの認識を示した。写真は20日、都内の同社本社で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
[東京 31日 ロイター] - ENEOSホールディングス<5020.t>の大田勝幸社長はロイターのインタビューに応じ、国内石油需要の回復には時間がかかるとし、製油所の再構築を含め、デジタル化や環境など、長期ビジョンで掲げた対応を加速化させる必要があるとの認識を示した。将来に向け、次世代型エネルギーに積極投資し、異業種との連携なども視野に入れていくという。
<ガソリン需要減少、想定よりも早く>
大田社長は、新型コロナの感染状況次第だとしながらも、国内の石油需要が年率2%減というコロナ前に想定していた水準に戻らない可能性があると指摘。国内需要減や環境問題への対応など、長期ビジョンで掲げた方向性は「全く変える必要はない」としたうえで「それをもっと加速しなければならないと、コロナで気付いた」と述べた。
4―5月で23%減だった国内ガソリン需要は、緊急事態宣言が解除され、6月は10%減、7月は8%減まで戻ったものの、8月はお盆での移動自粛などで10%程度落ちているという。
同グループは昨年、2040年には石油需要が半減するとの厳しい前提に立ち、長期ビジョンを策定した。製油所の再編については、既に、過去1年半で一部製油所の精製機能停止を決めるなど対策を講じてきたが、需要減がもっと早まるかもしれないことも想定し「打ち手のスピードを速めないといけない可能性が出てきている」と、危機感を示した。
4―6月期の製油所の稼働率は68%で2010年の統合後で最低水準に落ち込んだ。将来の製油所の体制については「少なくとも今の数はいらない」との認識にあるものの、閉鎖だけではなく「付加価値を付けてケミカル(石油化学製品)の比率を高めるやり方にシフトするとか、新しいエネルギーのプラットフォーム化すること」など、幅広く検討を行っていく。
海外に比べて規模が小さい日本の製油所が競争力を持つには各種化学工場などが隣接する「コンビナートをもっとうまく生かすことが絶対必要」とし、コンビナートに立地する鹿島、川崎、水島、大分の製油所は「いろいろな可能性がある」とした。
また、大田社長は同社製品が「付加価値が高く、非常に安定性があり、輸出マーケットで評判がいい。輸出で生き残っていくという考え方もある」とし、長期の国内需要半減に合わせるかたちで原油処理能力を半減させるわけではないとも述べた。
<新規事業、今はオプションをたくさん持つ時期>
今年4月には、2022年度までの3カ年の第2次中計がスタート。3年間で1兆5000億円の設備投資を計画し、このうち、8300億円を再エネ・水素など次世代型エネルギー供給を含む成長分野への戦略投資に振り向ける。大田社長は「将来に向けて、オプションをたくさん持つ」ことが今の課題との認識を示した。
ただ、そうした中でも、長期ビジョンに掲げた「アジアを代表するエネルギー・素材企業」になるため、「環境とデジタル」がキーワードになると述べた。
電力自由化や低炭素化などの流れを受け、さまざまな業種の企業が再エネ、分散電源、水素などへの投資を加速している。大田社長は「最終的にはそれほど多くのエネルギー会社は日本でいらない」と述べ、サービスステーションなどのインフラを全国に持っていることや、石油、ガス、電気、水素など幅広いエネルギーを扱えるのが同社の強みになると指摘。足りない部分は異業種も含めて、連携、または合従連衡していく方針だ。
同社は6月に、JXTGホールディングスから現社名に変更し、大田氏が社長に就任した。
インタビューは20日に実施した。
(大林優香 清水律子)
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