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アングル:混迷の米大統領選、「不服申し立て」でどうなるか

ロイター / 2020年10月30日 16時30分

10月23日、米大統領選で過去にないほど大規模に郵便投票が実施されている状況を巡り、トランプ大統領は具体的な根拠を示さずに、民主党による幅広い不正につながると主張している。写真は21日、ノースカロライナ州がストニアで選挙集会に出るトランプ米大統領(2020年 ロイター/Tom Brenner)

[23日 ロイター] - 米大統領選で過去にないほど大規模に郵便投票が実施されている状況を巡り、トランプ大統領は具体的な根拠を示さずに、民主党による幅広い不正につながると主張している。またトランプ氏は、得票数で民主党候補のバイデン前副大統領に及ばなかったとしても、政権を平和裏に引き渡すと約束するのを繰り返し拒んでいる。

こうしたトランプ氏の言いぶりを受け、民主党側はトランプ陣営が11月3日に行われる選挙の結果に異議を唱えるのではないかと懸念。そうなれば多くの訴訟と政治的な騒動のとば口が開かれ、誰が大統領になるかが裁判所や州知事、州議会、連邦議会などが介在する形で決まる可能性も出てくる。

選挙後の混乱として想定される幾つかのシナリオを提示した。

<訴訟>

期日前投票データを見ると、郵便投票者数は民主党員の方が共和党員よりも圧倒的に多い。ペンシルベニアやウィスコンシンなどの州では投票日まで郵便投票を開票しないため、開票当初はトランプ氏が優勢と出てもおかしくないと専門家は話す。ただ郵便投票の集計が進んでくれば、次第にバイデン氏の分が良くなる可能性が見込まれる。そこでトランプ氏が投票日の夜に早々と勝利を宣言し、その後の郵便投票の集計結果については不正を言い立てる、という展開を民主党は懸念している。

得票数の差がわずかなら、激戦州で投票および集計手続きに関する訴訟が提起され、そうした各州の訴訟は最終的に連邦最高裁で判断される可能性がある。2000年の共和党ジョージ・W・ブッシュ氏(子)と民主党アル・ゴア氏のフロリダ州での対立でも、最高裁が再集計停止を命じたことで、結局たった537票差でブッシュ氏勝利が決まった。

トランプ氏は、新たな最高裁判事に保守派のエイミー・コニー・バレット氏を指名し、現在共和党が過半数を握る上院で承認獲得を目指している。バレット氏が判事に就任すれば、最高裁の勢力図は保守派6人、リベラル派3人となり、大統領選結果が紛糾してもトランプ氏に有利な判断を下す可能性があるからだ。

<選挙人団>

米大統領は一般国民の過半数の票によって直接に選出されるわけではない。合衆国憲法の規定では、選挙人団538人の投票の過半数を獲得した候補が、次期大統領となる。2016年には、トランプ氏は民主党候補だったヒラリー・クリントン氏に全国の総得票数で及ばなかったが、獲得選挙人は304人とクリントン氏の227人を上回った。

わずかな例外の州を除き、各州の得票数で勝利した候補が、その州の選挙人を総取りできる。今年は12月14日に選挙人が集まり、州ごとの一般投票の結果で決められた候補に投票することになる。来年1月6日に上下両院が票数を形式的に集計し、勝者を認定する。

通例なら各州知事がそれぞれの州の一般投票結果を承認し、連邦議会と情報を共有する。しかし今年に限っては、一部の学識者は、一般得票数が非常に接近している州では知事と州議会が異なる投票結果を提出しようとするシナリオを予想している。ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、ノースカロライナといった激戦州はいずれも知事が民主党、議会は共和党が握る。法律専門家によると、判定に食い違いが出た場合に州議会が知事承認の一般投票結果を受け入れるべきか、その州の投票結果自体を無効にすべきかはっきりしていない。

こうしたシナリオが実現する可能性は乏しいというのが大方の専門家の意見だが、過去には発生したケースもあった。2000年には共和党優勢のフロリダ州議会が、連邦最高裁の再集計停止命令前に、知事と異なる投票結果を連邦議会に提出することを検討した。1876年には3つの州が2通りの選挙人を指名した。そのため、連邦議会は1887年にそうした事態を防ぐ「選挙人集計法(ECA)」を成立させた。

ECAでは、州が2通りの選挙人を提出してきた場合、翌年の1月3日に新たな構成で始まる連邦上下両院がそれぞれ、どちらにするかを採決する。ただ、両院の意見が一致しない場合に最終的にどういう決着になるかは不透明だ。ECAは、2通りになった場合は州の「行政官」の承認案が優先されると定めている。多くの学識者はこの「行政官」を州知事と考える一方、否定論もある。過去にECAが裁判所の争点になったり裁判所が解釈するところになったことはない。

専門家がもう1つ指摘するのは、可能性は極めて小さいが、上下両院の足並みがそろわない場合にペンス副大統領が上院議長としての立場を行使しようとすることだ。つまり、論争のもとになった州の票自体を無効にしようとするかもしれないというのだ。

そうなった場合に、大統領確定になお全体総数の過半数である270人の選挙人が必要か、あるいは無効票を除いた残りの選挙人の過半数で足りるとするべきか、ECAの解釈ははっきりしていない。仮にペンシルベニアの票が無効になって同州の選挙人が抜ければ、残りの選挙人は518人、過半数は260人となる。

2000年の選挙でブッシュ陣営の弁護団に属したベンジャミン・ギンズバーグ氏は、今月20日の電話会議で、こうした法令のどの部分も、緊急事態での有効性を試されたことはいまだかつてないと話した。

連邦議会が決められなければ連邦最高裁に持ち込まれるだろうが、最高裁も連邦議会が選挙人をどう数えるかについての法解釈に積極的に乗り出すかどうか定かではない。

<緊急選挙>

どちらの候補も過半数の選挙人を確保できないと、合衆国憲法修正第12条に基づく「緊急選挙」が実施される。つまり下院が次期大統領を、上院が次期副大統領をそれぞれ選出する。

下院では議席数に基づいた州の代表が1票ずつ投じる仕組み。現時点では共和党が50州のうち26州の代表を、民主党が22州の代表を確保している。

この得票数が伯仲すれば、選挙人獲得数が269人対269人と引き分けになる事態も起きる。つまり今年の大統領選が結局袋小路に至る道は、幾つも存在する。

合衆国憲法が定める現職大統領の任期満了日である1月20日までに連邦議会が次期大統領ないし副大統領を宣言しない場合、大統領継承法によると、下院議長が大統領職を代行する。現在ならば民主党のナンシー・ペロシ氏が該当する。

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