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情報BOX:「バイデン政権」で米エネルギー政策はどう変わる

ロイター / 2020年10月30日 16時37分

10月27日、11月の米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝った場合、エネルギー政策に多くの変化が生じる可能性がある。写真は、ジョージア州アトランタで選挙集会に参加するバイデン氏(2020年 ロイター/Brian Snyder)

[27日 ロイター] - 11月の米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝った場合、エネルギー政策に多くの変化が生じる可能性がある。この問題に関する注目点をまとめた。

<世界の石油供給>

トランプ大統領が石油輸出国機構(OPEC)加盟国のイランとベネズエラに一方的な制裁を科したことで、世界の原油供給量の3%強に相当する日量300万バレル前後が消えている。

これは米国のエネルギー生産を最大化して地政学上の敵対国の供給を抑えることにより、経済、政治の両面で優位に立とうとするトランプ大統領の「エネルギー支配」政策に適合する方法だった。トランプ政権はここ数週間でも両国への制裁を強化し続けており、同氏が再選された場合、政策路線が変化する兆しは見えない。

一方で、バイデン氏は過去の民主党政権に似た多国間外交に関心を示している。この結果、イラン、そしてもしかするとベネズエラも、条件が整えば最終的に米国からの制裁が解除され、その分の生産が再開される可能性がある。イランに関しては、バイデン氏はオバマ前政権時のような欧州と連携したアプローチを採用するかもしれない。

ベネズエラに関しては、バイデン氏は制裁によりマドゥロ大統領の体制に圧力をかけ続ける方法を好みそうだが、ベネズエラでの新たな選挙、もしくは同国野党勢力との政権共同運営の実現に向けて交渉するなど、外交努力を強め、同国の行き詰まった状況の打開を図る可能性もある。バイデン氏陣営はこうした問題への対応については詳細を示していない。

<OPECとのパイプ>

トランプ氏はほとんどのこれまでの米大統領よりもOPECに強く関与してきた。時にはツイッターや電話を通じてOPECの政策に働き掛け、消費者にとっては安く、かつ生産者にとって十分に高い石油価格の実現を求めてきた。

トランプ氏の制裁により、OPEC内で強硬派のベネズエラとイランの影響力は弱まり、米政権寄りのOPEC政策を実現する上でこれまで障害となってきた2大要因を取り除いた形になった。この結果、主要生産国のサウジアラビアと、OPEC加盟国ではないが「OPECプラス」に属するロシアに支配力が集中した。トランプ氏はOPEC盟主サウジの事実上の最高権力者ムハンマド皇太子と親しい関係を築いた。

バイデン氏は同皇太子とそうした交友関係を持たないため、OPECの生産政策にさほど緊密に関与しないかもしれない。また、頻繁にツイッターを通じるトランプ氏の方法よりも、水面下の外交ルートを通じてOPECに影響を及ぼす可能性が高い。

バイデン氏陣営はこの問題への対応について詳細を示していない。ただ、OPECに働き掛けるとすれば、程良い石油価格の実現という、トランプ氏とも共通した目的に資するものになるだろう。米消費者に手の届く燃料価格を望まない米大統領はいない。

また、壮大な気候変動対策を掲げるバイデン氏にとって、石油価格は、代替エネルギーが価格競争力を保つのに十分な程度に高い必要がある。

<クリーンエネルギーへの移行>

バイデン政権になれば地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を目指すだろう。トランプ政権は、協定が米経済に悪影響を及ぼすとして離脱した。

バイデン氏は気候変動が地球の存続を脅かすと見なしており、米国が素早くクリーンエネルギー技術の先導役になれれば、化石燃料からの移行は米国にとって経済的なチャンスにもなると考えている。

トランプ政権は事あるごとに温室効果ガスの排出基準を緩和、あるいは撤廃する措置を打ち出してきた。対照的に、バイデン氏は2050年までに同ガスの排出量を実質ゼロにすると約束し、発電企業による排出量については35年までの実質ゼロ化を掲げている。これに対し、米発電業界は既に目標の実現可能性に懐疑的な見方を表明。多くの企業は、もっと低い自主設定の目標でさえ、どうすれば達成できるのか途方に暮れるとしている。

BP やロイヤル・ダッチ・シェル など欧州の石油メジャーは既に、世界的な代替エネルギーへの移行について戦略を打ち出し始めている。しかし政治的にトランプ政権に守られたエクソンモービル やシェブロン など米石油メジャーは、未だに伝統的なエネルギー事業に集中している。

バイデン政権になれば米石油メジャーはクリーンエネルギーへの移行を迅速化するよう大きな圧力を受け始めるだろう。バイデン氏は気候変動問題に関する石油産業への訴訟を支持することに関心を示している。副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員は、自身がカリフォルニア州司法長官だった時、石油企業を訴追した経歴に言及している。

<連邦政府所有地での掘削>

トランプ氏は国内の石油・天然ガス生産の最大化を目指したが、バイデン氏は気候変動対策として、連邦政府所有の土地・海域における新規掘削許可証の発行を禁じると約束している。

内務省のデータによると、米連邦政府所有の土地・海域における2019年の原油生産量は日量300万バレル近く、天然ガス生産は日量132億立方フィート。これは米国内の原油生産全体の約4分の1、天然ガス生産の8分の1以上を占める。新規掘削許可が禁じられれば、何年かたつうちに、これらの生産がゼロに向かうことになるだろう。

連邦政府所有の土地・海域でのエネルギー生産による連邦政府の収入は19年に約120億ドルとなっており、こちらにも影響が及びそうだ。収入は財務省、州、郡、居住する先住民、環境汚染緩和のための基金に配分される。

例えばニューメキシコ州には昨年24億ドルが支払われ、その大半が歴史的に資金不足にある教育制度に充てられた。同州のグリシャム知事(民主党)はこの春ロイターに対し、バイデン政権になれば、掘削を継続できるよう禁止適用免除を求めると述べた。

バイデン氏陣営は、そうした適用免除プログラムの採用には言及していない。

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