アーケゴス問題で世界の銀行損失100億ドルも、規制強化が焦点
ロイター / 2021年3月31日 9時59分
3月30日、レバレッジを効かせた取引で損失を出した投資会社アーケゴス・キャピタルを巡る問題で、当局による規制強化が焦点になっていることが分かった。写真はアーケゴスのオフィスが入居しているとみられるニューヨークのマンハッタンのオフィスビル(2021年 ロイター/Carlo Allegri)
[チューリヒ/ニューヨーク 30日 ロイター] - レバレッジを効かせた取引で損失を出した投資会社アーケゴス・キャピタルを巡る問題で、金融機関は影響の見極めを進めている。また、当局による規制強化が焦点になっている。
アーケゴスの資産は約100億ドルとされるにもかかわらず、ヘッジファンド元幹部の「ファミリーオフィス」として運営されているため、規制当局から直接の監視をほとんど受けていなかった。ファミリーオフィスは裕福な家族が資産を管理運用するために設立するという。
JPモルガンのアナリストらは30日、アーケゴス問題で世界の銀行の損失が100億ドルに達する恐れがあるとした上で「業界の通常の巻き戻しシナリオをはるかに超えている」と指摘した。「第1・四半期の業績に大きな影響を与える可能性がある」と表明したクレディ・スイスについては、週内に完全な情報開示が行われると予想した。
アーケゴスは取材に対し「あらゆる計画が議論されている」とする29日の声明を繰り返した。
<規制強化に焦点>
OANDAのシニア市場ストラテジスト、エドワード・モヤ氏は「アーケゴスのマージンコール(証拠金請求)の影響は収まっているもようだが、規制当局の監視を巡る話は当面なくならないだろう」とした上で、「全てのプライムブローカレッジが各自の帳簿をチェックしており、ファミリーオフィスやヘッジファンドに対してレバレッジを下げるよう圧力をかけ始める可能性がある」と述べた。
米、英、日、スイスの金融当局はいずれも状況を注視する姿勢を示している。
関係筋によると、アーケゴスの株式スワップポジションのデフォルトによる影響の大きさを見極めるため、米英の規制当局はブローカー・ディーラーなど市場関係者と協議を行っている。
米証券取引委員会(SEC)と米金融取引業規制機構(FINRA)が金融機関や顧客への影響を把握し、信用リスクを見極めるため業界関係者と会合し、追加のエクスポージャーがないか点検するよう求めたという。
英金融行為監督機構(FCA)も、市場関係者と電話協議したもようだ。
関係筋によると、アーケゴスのブローカーらは25日、アーケゴスのポジション解消による影響をどのように抑えるか話し合った。だが、合意はまとまらず、ゴールドマン・サックスはアーケゴスの同意を得て26日の市場開始前に30億─40億ドル相当の株式を相対で売却するブロックトレードを実行したという。
JPモルガンのアナリストは「規制当局は今回のイベントを注意深く調査するだろう。とりわけ新政権の下で何らかの変更があっても不思議ではない」と述べた。
ウォール街に批判的な民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、ツイッターへの投稿で規制当局の対応について、次のヘッジファンド問題が「経済を道連れにしないよう、透明性と強い監視が求められる」と訴えた。
<金融機関の損失>
クレディ・スイスと野村ホールディングスは29日、多額の損失に直面する可能性を警告しており、アーケゴスが関連しているとみられている。
三菱UFJフィナンシャル・グループも30日、欧州子会社と米顧客との取引で約3億ドルの損害が生じる恐れがあると発表した。当該顧客がアーケゴスかどうかは明らかにしていない。
一方、ウェルズ・ファーゴは、アーケゴスにブローカレッジサービスを提供していたのは事実だが、エクスポージャーの解消に関する損失は出ていないと表明した。
この他の大手銀行は、アーケゴスに関連した多額の損失は見込んでいないとしている。関係筋によると、ゴールドマンとモルガン・スタンレーは26日に素早く株式を売却し、多額の損失を回避したという。
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