実は「人間国宝」はいない? 今年は漆芸の大谷さんが選ばれる

47NEWS / 2020年7月18日 7時0分

作品を手にする大谷早人さん=12日、高松市

 文部科学相の諮問機関である文化審議会は17日、重要無形文化財保持者(人間国宝)に漆芸技法の一つである蒟醤(きんま)作家の大谷早人さん(65)を認定するよう萩生田光一文科相に答申した。秋にも答申通り告示され、人間国宝は芸能と工芸技術の各58人計116人となる。(共同通信=榎並秀嗣)

 Q 人間国宝とは。

 A 1950年に施行された文化財保護法に基づいて重要無形文化財と指定された工芸技術や伝統芸能を受け継ぐ人の中で、特に高度な技術の持ち主として国が認定した個人のことを言う。年1回、有識者による文化審議会の答申に基づき文部科学相が認定する。

 文化財保護法には「人間国宝」という言葉はないので通称となる。存命の人が対象なので、死亡すると解除される。

 また、技術向上と後継者育成の費用として、国が1人当たり年200万円の特別助成金を交付している。

 ちなみに、有形の重要文化財については文化史的・学術的価値が著しく高いものを「国民の宝たるもの」として「国宝」に指定している。代表例は奈良市の「東大寺金堂(大仏殿)」や岩手県平泉町の「中尊寺金色堂」、兵庫県姫路市の「姫路城の大天守」などだ。

 Q 工芸技術や伝統芸能とは。

 A 文化庁のホームページによると、工芸技術は「陶芸」「染織」「漆芸」「金工」「木竹工」「人形」「手漉和紙」の7分野に分かれている。現在は染織家の志村ふくみさんや陶芸家の十四代今泉今右衛門さんらがいる。

 伝統芸能には次の8分野がある。「雅楽」「能楽」「文」「歌舞伎」「組踊」「音楽」「舞踏」「演芸」だ。こちらは歌舞伎の中村吉右衛門さんや坂東玉三郎さん、落語家の柳家小三治さんらがいる。

 Q 初めて認定された人は誰。

 A 1955年に初めての認定が行われた。歌舞伎の七代目坂東三津五郎や陶芸家の浜田庄司など30人が認定された。

 Q 大谷さんはどんな人なの。

 A 大谷さんは54年、高松市に生まれた。竹ひごを編んで成形した籃胎(らんたい)と呼ばれる器物に蒟醤を施す「籃胎蒟醤」を得意としている。竹の編み目を生かした美しい作風で知られ、98年には日本伝統工芸展高松宮記念賞、2009年には紫綬褒章を授章するなど高く評価されている。

 Q 蒟醤はどんな技法なのか。

 A 香川県漆芸研究所によると、同県で製作されている香川漆芸に特徴的に見られる装飾技法だという。元々は中国で生まれた技法で、タイやミャンマーを経由して室町時代末期の16世紀後半に日本へ伝わった。読みの「きんま」はタイの言葉に由来しているそうだ。香川県では江戸時代から盛んになった。

 製作方法は次の通り。

 まず、器物に漆を何回も塗り重ねる。塗った表面に、「剣(けん)」と呼ばれる特殊な彫刻刀を使って模様を彫る。染料で漆を色づけした「色漆」で、掘ったくぼみを埋めて磨き上げる。朱、黄など使う色漆ごとに彫っては埋め、磨くという作業を繰り返す。その工程は多いもので60近くにもなる。

 漆の表面を彫るという点では「沈金(ちんきん)」という技法と共通しているが、沈金は金箔(きんぱく)や金粉を使う。

 蒟醤で人間国宝に認定されるのは大谷さんで5人目。2019年に死去した人間国宝の太田儔(ひとし)さんは大谷さんの師匠になる。

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