六ケ所再処理工場 審査に合格したけれど… 日本は既にプルトニウムを大量保有、これ以上必要?

47NEWS / 2020年8月20日 7時0分

日本原燃の使用済み核燃料再処理工場。その上は尾駮沼。気体の放射性物質は画面中央の排気筒から放出し、液体の放射性物質は画面奥の海に排出する=5月14日、青森県六ケ所村

 原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する国策「核燃料サイクル」の中核施設となる日本原燃の使用済み燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が7月29日、原子力規制委員会の新規制基準に基づく審査に合格した。操業に向けた大きなハードルを越えたが、安全対策工事の審査は今後も続き、本格稼働の時期はまだ見通せない。工場はフル稼働時に核兵器の原料にもなるプルトニウムを最大で年間約8トン抽出する能力がある。日本は既にプルトニウムを大量に保有しており、工場が完成すれば国際社会の懸念がさらに強まる可能性がある。東京電力福島第1原発事故後に低迷する原発利用の現実を見つめ、工場の必要性を再検討するべきではないだろうか。(共同通信=広江滋規)

 ▽化学工場

 下北半島の付け根に位置する青森県六ケ所村。約390万平方メートルの広大な敷地に多くの建屋が立ち並ぶ。原燃は合格に先立つ7月16日、安全対策工事の進み具合を報道陣に公開した。

 再処理の主要工程を担う複数の建屋は地下の配管でつながり、中を高濃度の放射性物質を含む溶液や廃液が流れる。配管の長さは東京―青森間の往復距離を超える約1300キロに達する。

 ひときわ大きな建屋は「使用済み燃料受け入れ・貯蔵建屋」。内部に大きなプールが三つあり、1998年に燃料の受け入れを始め、容量の99%に相当する2968トンが既に入っている。

 操業すると、この建屋から燃料を「前処理建屋」に運び、機械で細かく切断し硝酸で溶かす。「分離建屋」で溶液からプルトニウムとウランを取り出し、「精製建屋」で純度を高める。硝酸を取り除く「脱硝」を経て、ウラン粉末やプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)粉末が完成する。各工程で化学薬品を用いる「巨大な化学工場」(原燃担当者)だ。


再処理工場では安全対策工事が急ピッチで進められていた=7月16日

 ▽大量放出

 長さ約4メートルの燃料集合体を切断する際、閉じ込められていたさまざまな放射性物質が施設内に解き放たれる。そのうち、処理装置で除去できず海洋に放出するのが、福島第1原発の処理水にも含まれ、処分方法が課題となっているトリチウムだ。

 トリチウムは運転中の通常の原発からも放出されているが、再処理工場での放出量は桁違いだ。原燃が設定している年間放出量の上限1京8千兆ベクレルは、福島第1原発事故前に全国の原発から出た放出量の合計約380兆ベクレルの約47倍に匹敵する。

 トリチウムは工場の沖合3キロの海底から排出し、クリプトンなどの気体の放射性物質は高さ約150メートルの排気筒から放出する。「燃料を切る日はどうしても空間放射線量が上がってしまう。でも大気や海水で十分に拡散、希釈している」と原燃担当者。フル稼働した場合の周辺住民への影響は最大でも年間0・022ミリシーベルトで、法令で定める線量限度(年間1ミリシーベルト)を大きく下回るという。


高さ150メートルの排気筒。根元に竜巻対策の防護板を設置するための足場が組まれた=7月16日

 ▽漁業者の不安

 だが周辺の漁業者は不安の声を上げている。工場から南へ約150キロ離れた岩手県宮古市でウニ漁やアワビ漁を営む横田有平(よこた・ゆうへい)さん(80)は「希釈されると言っても大量放出すると不安だな。潮に乗ってこっちに来るのではないか。孫子(まごこ)の代まで豊かな海を残したい」と話した。

 追加被ばく線量について、国際医療福祉大の鈴木元(すずき・げん)教授(放射線疫学)は「心配するレベルではない」と話す。先行する英仏などの再処理工場周辺で住民への健康影響は確認されていないとした上で「安全性が担保されているかを住民に情報公開することが重要だ」と指摘した。

 ▽46トン

 日本が国内外に保有するプルトニウムは2018年末時点で約46トン。核燃料サイクル政策は、使った以上のプルトニウムを生み出すとされる高速増殖炉を本命としていた。だが研究段階の原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)がトラブル続きで廃炉となった。

 経済産業省はフランスの高速炉実証炉「ASTRID(アストリッド)」との共同研究を、もんじゅ廃炉後の高速炉開発の柱にしたが、フランス側は「実用化の緊急性は低い」とトーンダウン。日本政府は開発の工程表で、高速炉の実用化の時期を「今世紀後半」とした。

 国と電力会社は、通常の原発でMOX燃料を燃やす「プルサーマル発電」を全国の原発16~18基で実施する計画だが、事故後に再稼働した9基のうちプルサーマル発電ができるのは4基のみ。

 使い道のないプルトニウムがたまり続けることへの懸念に対し、国の原子力委員会は、プルトニウム利用の透明性を高める目的で「プルサーマルの実施に必要な量だけ再処理する」との抑制策を示した。だがそれでは明確な消費策を打ち出したとは言えない。


審査合格を示す許可書を受け取った後、取材に応じる日本原燃の増田尚宏社長=7月29日、東京都港区

 7月29日に原子力規制庁で審査合格を示す許可書を受け取った原燃の増田尚宏(ますだ・なおひろ)社長は、記者団に操業時のプルトニウム消費見通しを問われたが「まず工場を完成させるのが最大のミッション。国などの計画に沿って設備をしっかり動かす」と明言を避けた。

 ▽難問

 さらなる難問は、使用済み燃料を化学処理する工程で発生する高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」だ。燃料からプルトニウムとウランを回収した後の廃液には極めて高濃度の放射性物質が含まれており、蒸発濃縮して容量を減らした後にガラスと混ぜてステンレス容器に入れて固める。こうした「ガラス固化体」はフル稼働で年間千本程度発生すると見込まる。最終処分場に搬出するまで30~50年間、工場内で保管するとしているが、処分場の候補地選定は進んでいない。


再処理工場の合格について議論した原子力規制委員会の定例会合=7月29日、東京都港区

 工場の建設費は1989年に事業申請した際の7600億円から増え続けており現時点で約3兆円に。操業費や廃止措置費用を加えた総事業費は13兆9400億円に上る。「再処理費用は元が電気料金で、国民が負担している。無駄なお金をこれ以上つぎ込むべきではない」。規制委の意見公募にはこうした反対意見が多く寄せられていた。

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