「女性活躍」どこへ? 入閣わずか2人 これまでの発言から考える政権の本音

47NEWS / 2020年9月17日 10時30分

初閣議を終え記念撮影に臨む。女性2人の姿は埋没して見えない=16日午後10時18分、首相官邸 

 安倍首相が辞任表明をするより前の7月30日、自民党の議員連盟「女性議員飛躍の会」(稲田朋美共同代表)の会合に、二階俊博幹事長が出席した。「これからの自民党の伸張は女性の数にかかっている。国会で男性と対等の数を占めれば、日本の政治は良くなる」、党も努力すると語ったという。

 下村博文選対委員長(当時)も、党所属の国会議員と地方議員に占める女性の割合に関し、期限を切って数値目標を定める方針を示したという。へええと、半信半疑で読んだ。

 まもなく総裁選が始まったので、女性候補を期待したが、60歳以上の男性ばかり3人。これまで自民党の総裁選に出馬した女性は小池百合子氏だけで、それ以前も以後も、女性はスタートラインにさえ立てないのだ。

 記者会見やインタビューをテレビでじっくり見たが、すっかりしらけてしまった。出来レースで結果がわかっているにしても、3候補が語る政策や将来展望からすっぽり女性政策が抜けている。質問する記者やキャスターも男性が多く、安倍政権の看板だったはずの「女性の活躍」にほとんど関心を示さない。

 菅政権が安倍政治を継承するというなら、女性活躍政策の経過と結果について、しっかり検証し、今後に向けたビジョンを示さなければならない。

 2015年には女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)ができた(19年改正)。仕事で活躍したいと希望する全ての女性が、個性や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指したというが、それを実感している女性がどれだけいるだろうか。

 就労する女性は、たしかに増えた。就労を支援するために、待機児童を減らす施策を進め、保育の無償化も実現した。その結果、女性の労働力率が結婚や出産で離職によって低下する「M字カーブ」は緩くなったというけれど、内実は安い労働力としてのパートやアルバイト、非正規雇用が増加したにすぎない。

 労働力不足を補うためにともかく女性に働いてもらい、それによって個人消費も伸ばそうという経済戦略でしかなく、女性の個性や能力を発揮させる政策ではなかった。不安定雇用であったから、新型コロナウイルスの感染拡大で多くの女性が職を失った。

 閣僚や自民党議員が出産・育児に関して「女性活躍」と矛盾する発言を頻発したのも第二次安倍政権だ。思い出してみよう(役職はいずれも当時)。

 13年、安倍首相が「3年間抱っこし放題」の育休延長を企業に要請したが、女性の育児負担を重くしかねないこと、また長期育休後の職場復帰は難しいことら反発を買った。

 菅官房長官(福山雅治氏の結婚を機に)「ママさんたちが一緒に子どもを産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれればいいなと思う」(15年)▽山東昭子議員「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」(17年)▽加藤寛治議員(結婚する男女に呼び掛けていることとして)「必ず3人以上の子どもを育てていただきたい」(18年)▽萩生田光一幹事長代行「赤ちゃんに『パパとママ、どっちが好きか』と聞けば、ママがいいに決まっている。『男女共同参画社会だ』『男も育児だ』とか言っても、子どもにとっては迷惑な話かもしれない」(18年)▽二階幹事長「子どもを産まないほうが幸せじゃないかと、勝手なことを考えている人がいる」「皆が幸せになるために子どもをたくさん産み、国も発展していこうじゃないか」(18年)▽平沢勝栄議員(性的少数者LGBTについて)「この人たちばっかりになったら国はつぶれちゃう」(19年)▽麻生太郎財務相(日本人の平均寿命が延びたのは)「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかった方が問題なんだから」(19年)▽桜田義孝議員「お子さんやお孫さんにぜひ、子どもを3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」(19年)

 まだあるけれど、この辺でやめておく。いずれも前時代的な家族観に根ざす発言だ。子どもを産む、産まないは個人の選択であって、他人に指図されるものではない。その根本がわかっていない。「国家のために産め」と言うに至っては、戦時中の「産めよ殖せよ」政策と同じだ。

 19年に生まれた子どもの数は初めて90万人を下まわった。こんな社会では子育てをしたくない。そんな選択が集積した結果だろう。

 20年までに女性の管理職比率を30%にまであげようという長期目標もあっさり諦めてしまった。結局、安倍政権の「女性が輝く」政策の下で、いい意味でも悪い意味でも、誰よりも活躍したのは、安倍昭恵氏だったかもしれない。

 しばしば指摘されるように、世界における日本のジェンダー・ギャップ指数の順位は下がり続けて、20年は153か国中121位、日本のメディアが「人権がない」と盛んに批判する中国の106位より下である。G7では日本だけが100位以下に沈んだ。日本の次に悪いのはイタリアだが、それでも76位だ。

 この調査による閣僚の女性比率は139位、国会議員は135位。菅新政権がすぐにでも実行できるのは女性閣僚を増やすことだったが、蓋を開けてみれば女性閣僚はたったの2人。安倍政権の最後の3人から、増えるどころか減らしてしまった。問題意識すら欠如しているのではないか。

 さて冒頭に発言を紹介した二階氏と下村氏。自民党の新役員人事でも幹事長と政調会長という重要ポストに就任した。政治家の言葉は重い。次の解散総選挙では是非、女性候補者をおおぜい擁立して、発言がリップサービスではなかったと証明していただきたい。(女性史研究者・江刺昭子)

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