在宅で触れる災害の記憶 ウェブ地図に3D…各地の伝承碑、国土地理院など公開

47NEWS / 2020年10月24日 7時0分

海洋研究開発機構と防災科学技術研究所などがまとめている「災害記念碑デジタルアーカイブマップ」。画像では1707年宝永地震に関する高知県内の碑を表示している(「災害記念碑デジタルアーカイブマップ」から)

 記録的な被害をもたらした昨年の台風19号の上陸から今月で1年。来年3月には東日本大震災から10年を迎える。これらの自然災害の発生当時、被災地で注目を集めたものの一つに、過去の被害や教訓を伝える石碑が挙げられる。全国に点在するこうした碑について、国土地理院が昨年から地図記号にして地図への掲載を始めたほか、海洋研究開発機構などの研究チームが3D画像を併用した地図を作成。これらはウェブ上で公開され、遠く離れた土地だけでなく身近な街の知られざる災害史の一端に、家にいながら触れることができる。 (共同通信=松森好巨)

 「此処(ここ)より下に家を建てるな」。明治三陸津波(1896年)やチリ地震津波(1960年)で被災した岩手、宮城両県には、教訓を伝える津波碑が多く残り、西日本豪雨(2018年)で土砂災害に襲われた広島県内の被災地にも、100年以上前の災害の様子を記した碑が残されていた。


1907年の水害を伝える碑=広島県坂町(国土地理院提供)

 国土地理院の地図ではこうした碑や供養塔は従来、人物の功績をたたえる立像などと同じ「記念碑」の記号で表され、地図上で特定しにくかった。そこで「自然災害伝承碑」という新たな地図記号を昨年3月に追加。地図への掲載を開始して以降も自治体などから情報を集め、10月16日時点で全国の622基が公開されている。

 公開された伝承碑の所在地は国土地理院のウェブ地図「地理院地図」で確認できる。手順は簡単。地図の種類から「災害伝承・避難場所」、「自然災害伝承碑」を選択すると、地震や津波、洪水など災害の種類別に絞った上で表示可能だ。地図記号を選択すると、碑の写真に加え、設置された年代や被害状況といった伝承内容も確認できる。

 実際に使ってみる。「高潮」を選択し、来夏の五輪・パラリンピックの会場が数多くある東京・江東区をながめると、東京メトロ東西線の木場駅近くに二つ並んでいるのに気付く。説明によると、それらは同時代に建てられた「波除碑」。この地域では1791年9月、満潮時に襲った暴風雨による高潮で多数の死者・行方不明者が出たことから一帯を空き地にし、二つの碑を建て後の水害に備えたという。


江東区に点在する「高潮」にまつわる自然災害伝承碑。表示されている画像は木場にある「波除碑」(国土地理院のウェブ地図「地理院地図」から)

 この「波除碑」と同じ江東区の南砂と北砂にも「高潮」に関する碑が確認できる。ともに1917年10月に来襲した台風による高潮被害の犠牲者供養のため建てられたものだった。いずれも約100~200年前の事例ではあるが、この地に暮らした先人たちが地震や洪水にとどまらない自然の脅威にさらされていたことが分かる。

 ▽防災教育にも

 災害の記録を伝える碑については、防災や災害史の研究チームがまとめているウェブ地図も存在し、国土地理院のそれとはひと味違った特徴がある。

 「災害記念碑デジタルアーカイブマップ」と名付けられ、海洋研究開発機構と防災科学技術研究所などが昨年8月に公開。今年8月末時点で約320基が登録されている。碑の位置が地図上に記され、記号をクリックすると写真や説明が表示される仕組みは地理院地図と同じだが、「1707年宝永地震」や「1896年明治三陸地震津波」など災害の名称ごとに碑を分類してあり、近代以前の「歴史地震」の探究に役立ちそうだ。

 さらに「アーカイブマップ」に掲載された碑の一部は3D化されており、刻まれた文字や正面以外の詳細な形がウェブ上で確認できる。写真だけでなく3Dにした理由について、高知県や徳島県の碑を実際に調査、記録してきた海洋研究開発機構高知コア研究所の谷川亘主任研究員は次のように説明する。

 「野ざらしになっている碑のなかには風化が進み、コケが生え文字が読みづらくなっているものがあります。それに、今後の災害などで損傷、消失してしまう恐れもある。3D化によって、記された情報を判読するサポートになるでしょうし、もし実物が失われたとしても、3Dプリンターで復元することも可能です」


1707年の宝永地震にまつわる「夜須観音山碑」(高知県香南市)の3Dモデル。画面の操作で裏側(下)も確認できる(提供:海洋研究開発機構)

 3D化にあたっては、様々な角度から撮影した画像データを重ね合わせて作成する手法を用いた。普通のデジタルカメラで撮影した画像で作れることから、谷川さんは「アーカイブマップ」を地域の人たちの協力によって更新していければと考えている。

 「地元に根ざした人たちの方が碑の情報を持っています。ゆくゆくは、その人たちに写真を撮っていただいて、私たち研究者が分類して地図に掲載したり3Dモデルを作ったりしていければと考えています。また、子どもたちにも加わってもらえれば地元を知るだけではなく、防災教育の一環にもなるでしょう」

 ◇   ◇

 谷川さんが所属する海洋研究開発機構は11月15日、高知県土佐清水市で小中学生を対象に「3Dデジタル技術で地震津波災害の記録を未来へ残そう!」と題した体験プログラムを実施する予定。詳細は同機構高知コア研究所のHPまで。

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