災害ボランティア、いつまで善意頼み? 異常気象が「普通」になった日本が今すぐやるべきこと

47NEWS / 2020年10月26日 16時0分

台風19号の被害を受けた福島県いわき市の住宅で、片付けを行う地元の高校生=2019年11月2日

 秋の台風シーズンもようやく終盤を迎えようとしている。この時期には、全国に大きな被害をもたらした昨年の台風19号の被災地、福島県いわき市での災害ボランティア体験を思い出す。そこで感じたのは個人の「余力」に頼る制度だ。これからは「点」で参加していた個人や団体をつなげ「面」としてチームで広げていくコミュニティー防災が鍵になり、それでないと立ちいかない。(リスク管理・コミュニケーションコンサルタント=西澤真理子)

 まずは初めて参加した筆者の災害復旧ボランティアの経験を読者と共有したい。2019年11月下旬のいわき。朝は肌寒い。ボランティアセンターでのオリエンテーションではヘッドランプが付いたヘルメットをかぶっているプロ的な男性が多く不安だったが、参加した民間非営利団体(NPO)のグループには、平日だが休みを取って来たという東京の看護師の女性やSEの男性らがいて安心した。西日本災害チームの倉敷市は車両と職員を送っていた。「困ったときはお互いさま」精神を感じる。

 作業現場は1カ月前に決壊し4人の死者を出した夏井川沿いの一軒家。作業するお宅の外壁はきれいで「どこが被災したの」と周りにも言われてしまうらしいくらい、外見は普通だ。が、中に入ると玄関の壁に1・3メートルの浸水の痕。「ここまで水が来た」。70代ぐらいの住民が教えてくれた。1階は畳も床もなく、コンクリートの土台が露出し、家族は二階で暮らしているようだ。1階の棚には泥がこびりついていて、カビも臭う。「仏壇をきれいにしたい。ご先祖様に申し訳ない」。持参した雑巾とつや出しスプレーでピカピカに磨き上げようとがんばった。

 「リフォームから1年もたたないのに。本当に悔しい」「独りで作業していると涙が出る」。被災した女性はそう繰り返した。初期に必要な力作業が終わった後は、被災した方の心に寄り添う力にシフトしていく。筆者とペアになった看護師さんは傾聴が実にうまい。手を休めず、食べ物の話で盛り上がっていた。作業は午後3時で終了。同行した男性陣は泥や大型のごみを集積所に運ぶ一方で、筆者は雑巾がけという軽作業だったが、これを一人で黙々とやるとなると、誰でもつらいだろう。


決壊した夏井川沿いの一軒家での作業

 気になったことがある。大型台風が来たら、また復旧作業を一からやり直さないとならないのか。この先、減りはしない大型化する台風と、どう向き合っていけばよいのか。

 昨年のスーパー台風を受け、ハザードマップの再確認と、宅地開発の規制の議論が始まっている。が、すでに家が建ってしまっている場合の災害復旧活動では、人海戦術の災害ボランティアが現実的で大切になる。日本の現状はどうか。政府や自治体が活動を始める前に率先してNPOがしている作業は、個人と企業からの寄付などが財源で、いわば、善意頼みだ。

 実際、筆者が驚いたのは、費用負担の現実だった。通常、NPOに寄付した場合は、費用が税金から控除される。しかし、今回のような災害時の参加はたとえNPOの呼びかけでも活動費用は控除にならない。国税局でも、いわき市ボランティアセンターでも「申し訳ないのですが」と電話口で言われた。センターからはボランティア活動証明書をもらったので、てっきり、税金控除があるのかと思ったのが、早合点だった。実際の費用は、安い交通手段であるJRバスで往復6千円(電車だと往復で1万円超)。ボランティア保険加入(600円)、自腹での食事代など、最低でも1万円はかかる。防寒着や作業の小物購入を合わせれば数万円が必要だった。なのに、税金控除がないとなると、あたかも、いわきに遊びに行ったのと同じということになってしまう。

 いわきから東京に戻り、冷静になって考えると、一番人手が欲しい、災害から間もない復興時の制度が不十分なことに疑問をふつふつと感じた。なぜ控除にならないのだろう?

 その原点には1947年に作られた「災害救助法」がある。被災地支援は国が自治体に協力を仰ぎ実行する、となっている。行政機関のみが関わるかのような法律だ。現実の災害復興現場と大きくかい離している。法律の立て付けが大きな弊害になっているのだ。災害現場に駆け付け、行政の代わりに住民を支えるNPOやボランティアの活動を認知していない。

 災害ボランティア制度の問題について、最近放映されたNHK『明日へつなげよう 岐路に立つ災害ボランティア~市民の善意からの脱却』という番組でも、災害復興の専門家が善意に頼る今のありかたに疑問を呈していた。「今はNPOを信頼し任せる時代になった」「諸外国では復興活動の30~50%の費用が公的資金」「欧州では自腹ではなく、交通費、保険を公費で賄い、有給休暇が充実していて、例えばイタリアでは平時のボランティア講習も公費が負担」といった現状を紹介していた。


台風19号の大雨で川が氾濫し、破壊された住宅=宮城県丸森町

 大阪府枚方市を拠点に、熊本や千葉など、日本各地で災害の現場に真っ先に駆けつけて現場を指揮する「プロボランティア」で、NPO災害救援レスキューアシスト代表の中島武志氏も、時に自分の貯金を切り崩しているボランティアの難しさを番組の中で語っていた。

 確かに彼の言う通りだ。自治体の職員は自分の一生でそこまで多くの災害現場に居合わせないだろうから、現場の指揮を取らせるのは無理がある。このNPOでは自治体職員や自衛隊向けにブルーシートの貼り方の講演をしているとのことだった。

 NPOの活動を個人の善意に大きく頼る、70年前に出来た現行の法制度は、災害多発国で人口減少が進む今の日本の現状に即していない。日本が豊かであった昭和時代に出来た制度に固執せず、現状に即した改訂をすぐにはじめなければ、持続性のある災害ボランティアの確保はさらに難しくなるだろう。

 一人一人が被災地のために何かしたいと思っても、費用が個人の持ち出し、活動に対して公的な認知がない、となるとそう頻繁には協力できない。とりわけ災害復興の現場では気力と体力が求められる。軽作業だった筆者ですらへとへとで東京に戻った。だから多くの人が二の足を踏む。

 ただ、法改正には時間がかかる。であれば現実的な解決策は、自治体とNPOなど市民団体との提携や、企業との防災協定などによる連携だ。日本では長野県が災害対策本部に正式にNPOを招き入れ、「ONE  NAGANO」として団体間の連携を始め、公費を復興活動に充てることができる制度を始めたそうだ。千葉県鴨川市とNPO災害救援レスキューアシストも災害協定を結び、宿泊施設や資材の提供、情報の共有を図っていくことが決まった。

 IT企業のサイボウズはライセンス提供により同社のクラウドサービスを使える災害支援プログラムを始めている。防災協定を締結した自治体や社会福祉協議会に対し、状況に応じて、半年~1年程度無償でライセンスを提供。その間、IT化支援のための定期的なオンライン会議、地域のSNSコミュニティーとの連携、IT人材の紹介など、定着するまでのアドバイスを同社の災害支援チームが行っているという。ライセンスを継続する場合、翌年度からは有償で提供するという。最近では東京都調布市と提携を行ったそうだ。

 防災支援で難しいのがマッチングだ。人材、支援物資が手軽にマッチングする仕組みがない上、マニュアル作業が多いため、余裕がないNPOの手を奪ってしまっている。ITを使って解決できることは多くある。点をつないで面にし、さまざまな団体が一緒に活動する、現実的で実効性のある制度作りが他の自治体でも広がっていくことが急務だ。

 筆者はいわきでの活動に参加することで、善意、助け合いの心を再確認した。参加した学生も社会人も、多くが他者への共感(empathy)を体験することだろう。ボランティア活動はそれが学べる絶好の機会だ。困ったときはお互いさま。ただ、現実に必要なものは「助け合おう」と繰り返す精神論ではなく、それを可能にするための、災害現場に多くの人が足を運べるような持続可能な仕組みづくりである。

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